環境マネジメント
住友ベークライトグループの環境ビジョン2050(ネットゼロ)
当社グループが事業を行うためには、地球環境から得られる資源やエネルギーが欠かせません。一方、事業活動を通じて廃棄物や大気への排出、排水等が必ず発生します。このため、環境関連法規を順守し、地球環境に与える負荷を極小化しながら事業活動を行うとともに、製品・サービスを通じて社会全体の環境負荷を低減する取り組みが重要であると考えています。 |
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気候変動プログラムへの取り組み・TCFDへの賛同表明
CDP(本部:ロンドン)※1は、2000年に世界の機関投資家が連携して設立した国際 NGOです。世界の主要企業や自治体に対して「気候変動」「水セキュリティ」「フォレスト」等の質問票を 送付し、気候変動への戦略や具体的な温室効果ガスの排出量に関する公表を求めるプロジェクトを行っています。
CDP2020の調査では、運用資産総額106兆米ドルに達する515の機関投資家を代表して、調査が行われ、世界の時価総額の50%以上を占める9,600社以上の企業が、CDPを通じて環境データを開示しています。
当社は、CDP気候変動および水セキュリティ2021の回答要請に対応し、2020年12月にそれぞれ「A–」、「B–」評価を受けました。
2021年度も、気候変動および水セキュリティへの回答要請を受けており、回答を行いました。
また、2021年2月にTCFDへの賛同を表明しました。
当社グループは今後、気候変動にかかわるリスクおよび機会に関する積極的な情報開示を行い、ステークホルダーの皆さまへの説明責任を果たしていきます。
環境負荷低減、省資源・省エネルギー化、化学物質管理、環境に貢献する製品の開発を行い気候変動への対応に貢献しつつ、今後も環境情報の開示を進めます。
※1 以前の「The Carbon Disclosure Project」。現在は「CDP」が正式名称となっています。
環境マネジメント体制
当社グループは、レスポンシブル・ケア活動方針に基づきグループ全体で環境の保全に取り組み、社会の持続可能な発展に貢献することを目指しています。 カーボンニュートラル、生物多様性保全、土壌・地下水汚染対策などを積極的に推進するため、レスポンシブル・ケア委員会とカーボンニュートラル推進委員会が中心となり、環境関連法規の順守状況の確認をするとともに、研究開発段階から原料調達、製造、販売、廃棄に至る全ライフサイクルにおいて、環境評価を実施、および、カーボンニュートラルに貢献する活動の推進と貢献する技術の調査・検討を進め、それぞれの現場で適切な取り組みを行っています。 |
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カーボンニュートラル推進委員会の活動
カーボンニュートラル(以下:CN)の取り組みを今後一層強化・推進することを目的に2021年7月、「環境負荷低減委員会」が「カーボンニュートラル推進委員会」へ改組されました。それに伴い、下部組織の「省エネルギー部会」が「CN技術検討部会」へ改組となりました。
環境負荷低減委員会では、毎年度末に環境中長期目標に対する活動進捗を総括した上で、次年度目標を決定し上位組織であるサステナブル推進委員会の承認のもとで活動してきました。 今後はカーボンニュートラル推進委員会として、下部組織の「ライフサイクル部会」と「CN技術検討部会」とともにカーボンニュートラル達成に向けて活動していきます。
ライフサイクル部会では、レスポンシブル・ケア活動方針のもと、研究段階から科学的、定量的、客観的に評価をする活動を通じ、環境負荷を最小化する生産方式の確立を目指しています。全研究開発部門でのLCA(ライフサイクルアセスメント)の取り組み、およびLCA・省エネルギーができる研究開発者育成の継続により「2022年度に研究者の25%を『自らできる研究者』とする」という目標を立てて活動を推進しています。2020年度はコロナ禍の中、すべてのLCAにかかわる教育をオンライン形式で行いました。
2021年度は、「教育機会の充実」「基準製品のLCA評価の横展開拡大」「SDGs貢献製品のLCA評価済み品目を拡大」に取り組みます。今後、全製品についてLCAに関する情報をスピーディに提供できるように、準備を進めていきます。
省エネルギー部会の取り組みとして、国内では各所の自主推進等により省エネアイデアを継続的に抽出・実現する仕組みを根付かせる活動を行ってきました。2020年度は2019年度比で主に都市ガスと電力使用量の削減により、トータルで原油換1,535kL(59,487GJ)、CO2換算で2,962t-CO2の削減を達成しました。また、夏季・冬季の節電においては当社独自の活動を行っており、設定した目標値を超える実績をあげ、目標達成しました。海外では国内の活動を準用するとともに、活動手法・事例の横展開推進を継続しています。 |
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マテリアルフローと環境対策投資
原料、エネルギー等のインプットおよび製品、環境排出物等のアウトプットを示しています。
当社グループでは、環境負荷低減のため、排出物の削減を図るとともに、省資源の見地から投入する原料、エネルギーおよび用水の節減を推進しています。また、カーボンニュートラルへの取り組みにより、CO2排出量削減を推進しています。
2020年度は、昨年に引き続き、COVID-19の感染拡大による経済活動の停滞が続き、原材料の投入量、製品の販売量等、多くの項目がさらに減少しました。
しかし、年度後半は回復への動きが見られ、2021年度は経済活動回復による増加が見込まれています。当社グループでは前述の活動により、インプットの増加に対して、環境に影響を与えるアウトプットを削減するように取り組み、温暖化等の気候変動対策へ貢献していきます。

- ※1 使用原材料に占める再生可能原材料比率は現時点では約2.7%ですが、さらに再生可能原料の使用比率を高めるべく開発段階から取り組みを進めています。
- ※2、3、4、6 SOx、NOx、ばいじんは排ガスの測定結果および燃料使用量等から自社で定めた計算方法により算定しています。ばいじんに関しては、海外での測定基準が異なるため、現在のところ国内データのみの集計です。CODは測定濃度と排水量から算定しています。海外のCODに関しては、排水中のCOD測定を実施している事業所を対象としました。また、測定に用いる酸化剤の種類(主に重クロム酸カリウム)が異なるため別表記としました。
- ※5 排水量の把握は、下水への排水は使用量の明細より算出しています。公共水域の排水は、流量計を設置している事業所はその測定値より、設置していない事業所は水使用量より、算出しています。
- ※7 廃棄物量中の危険廃棄物の数量は5,714tです(各国定義による)。なお危険廃棄物の数量は、保証対象ではありません。
- ※ 製品出荷量および製品販売額は、保証対象ではありません。
環境対策投資
当社グループでは2000年度より国内グループ会社の環境保全にかかわる投資額を集計しています。2020年度は合計では2.4億円の投資を実施しました。 |
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環境中長期目標と実績
環境中長期目標
当社は2018年度に2030年度を最終年とする環境中長期計画を策定し活動しており、この中でCO2排出量は、COP21の政府約束草案による温室効果ガスの削減目標に対応していました。
しかし、政府の2050年カーボンニュートラル宣言、および2030年目標の提示により見直しを行い、2030年目標の方針を「CO2排出量46%削減(2013年度比)」と再設定しました。現在、この方針を踏まえた新たな中長期計画を策定すべく検討中です。(下記のグラフおよびP104の詳細データには、従来の中長期計画を表示しています。)
目標検討においては、上記のほか、以下を念頭に置いています。
- SDGsにおける、2030年を目標年とした国際社会共通の持続可能な開発への対応。
- 省エネ法、温対法への対応。
また、経団連の「カーボンニュートラル行動計画」にも、日本化学工業協会を通じて継続して取り組んでまいります。 さらに妥当性を再検討した上で他の目標の見直しも実施し、マテリアルロス(廃棄物と有価物)発生量を抑制することにより資源利用率を向上し、有効な原材料利用を進め、化学物質排出量の削減も推進し、計画的に環境負荷低減への取り組みを進めてまいります。
国内事業所の取り組みCO2排出量は2020年度前半まで、COVID-19感染拡大による影響を受けましたが、2020年度後半からは生産活動の回復と電力事業者の排出係数悪化により、わずかに増加しました。2021年度はさらに回復が予想されますが、カーボンニュートラル対策の導入と効率化により2020年度からの削減を目指します。
海外事業所の取り組み海外事業所のCO2排出量は、引き続きCOVID-19の感染拡大の影響を受け大きく減少しました。しかし、各事業所の省エネ活動も成果を挙げており、2021年度は生産回復とともに、さらにCO2排出量の削減を目指します。 |
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環境パフォーマンス
省エネルギーとCO2排出量削減
国内事業所では生産減がありましたが、省エネ活動の成果でエネルギー使用量・原単位ともに削減されました。CO2排出量は生産活動の回復と電力事業者の排出係数悪化により排出量・原単位ともにわずかに増加しました。
海外事業所は、エネルギー使用量、CO2排出量ともに前年より減少しました。生産減の影響を受けていますが、エネルギー使用の効率化に努め原単位は減少しました。2021年は生産の回復を見込んでいますが、より効率的なエネルギー使用を進め、削減傾向を維持していきます。


- ※1 エネルギー使用量の原単位は次式より求めた生産評価高原単位です。原単位=エネルギー使用量/(生産量×販売単価)また、エネルギー使用量は原油換算値です。
- ※2 CO2排出量の原単位は、次式より求めた生産評価高原単位です。原単位=CO2排出量/(生産量×販売単価)また、CO2排出量はScope1、Scope2排出量の合計です。
- ※ 集計対象については、統合報告書2021(Webフルレポート版)P.3記載の対象組織をご参照ください。
スコープ3※3データの開示
当社グループでは、サプライチェーン全体でのCO2排出量の把握が重要度を増してきていることから、2015年から当社グループ国内事業所のサプライチェーンにおけるスコープ3の算定と開示を開始し、2018年度からは、対象を海外事業所にも拡大しました。開示範囲は、カテゴリ1「購入した製品・サービス」ほか8つのカテゴリで、カテゴリ8「リース資産(上流)」ほか3つのカテゴリについて対象外であることを確認しました。
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マテリアルロス低減の推進
当社グループは、環境負荷低減は収益向上の機会と捉え資源の有効活用率の向上に取り組んできました。MFCA※1への取り組みを通じて、廃棄物のみならず、有価物も含めたマテリアルロスの削減による、使用原料の有効利用向上を推進しています。
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大気への放出
国内事業所では、2004年度から継続してボイラーの燃料転換(重油から都市ガスへ)を進めてきました。2019年途中に完了した静岡工場の重油からの燃料転換の効果で、グループ全体のSOx※2排出量は、さらに減少しました。また、NOx※3の排出量についても都市ガスの窒素含有率低下や燃焼状態の安定化により、大きく削減することができました。都市ガス供給のない一部の地域の事業所で重油の使用が残っていますが、燃焼条件の最適化に努めることで、SOx、ばいじん※4ともに排出量を低いレベルに抑えています。
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水域への排出
工場から排出される排水のうち、汚水系(生産工程からの排水、生活排水など)については、高精度フェノール回収装置、活性汚泥処理装置などの処理施設の設置と、監視装置による常時監視により、国の排水基準、条例および地域協定の順守に努めています。また、冷却水を含む雨水系への漏洩についても、リスクアセスメントを実施し、突発的な負荷の上昇を予防しています。
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水資源の保全
当社グループの拠点で使用する水は、国内は地下水の使用比率が大きく、海外では上水道の使用比率が大きくなっています。また、国内の使用比率が全体の84%を占めています。 |
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2020年度水リスク評価
2015年度より当社グループの主要な拠点(国内11か所、海外
24か所)の立地流域の水リスクについて継続して把握しています。2020年度もWRI Aqueduct※ の調査結果に加え、各事業所ごとの独自調査結果を踏まえてリスクレベルの修正を実施しています。その結果を当社グループが展開する地域別のリスク表にまとめました。
今年度の評価に大きな違いはありませんが、昨年の更新から、中国地区は経済成長に伴う水資源リスクの顕著化により、ランクが悪化しています。
この結果を参考に、今後もより効果の高い水資源の保全に取り組んでいきます。
- ※ WRI(World Resources Institute:世界資源研究所)が開発し公開している水リスクの情報提供ツール。

土壌・地下水汚染対策
土壌・地下水汚染への対応
当社グループは、化学物質の漏洩リスクアセスメントを全事業所で行い、予防的な仕組みづくりとその実践を進めています。 一方、過去の漏洩事故が原因で汚染が確認された場合は、環境影響・健康被害の拡大を防止するため、自主的な調査と対策を積極的に行っています。 |
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資源循環への取り組み
海洋プラスチック
海洋プラスチック問題については、政府のプラスチック資源循環戦略に基づき、使用する原材料や製造するプラスチック製品についての日常管理や、それらのリサイクルを進め、さらに製品開発の段階からLCAの検討を実施することで、プラスチック海洋ごみの削減に貢献すべく努めています。
現在、化学産業の主要企業・業界団体が設立した海洋プラスチック問題対応協議会(JaIME)および、化学業界をはじめ流通・小売業界も含め、広くプラスチック製品のサプライチェーンにかかわる事業者が業種を超えた連携を目指して設立したクリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)への参画を通じて、サプライチェーン全体でのプラスチック廃棄物の抑制、プラスチック製品の3Rによる資源循環の推進を目指し、さまざまな課題に取り組んでいます。
リサイクル
資源の有効活用のため、リサイクルを推進しています。製品の製造工程でのフェノール樹脂反応廃液からのフェノール回収再利用や、フェノール樹脂積層板・メラミン樹脂化粧板の端材微粉砕によるフェノール樹脂成形材料用充填材としての使用、成形品副生物(スプルーランナー)を成形材料用原料に戻しての再利用などのほか、活性汚泥排水処理装置の余剰汚泥のコンポスト(有機肥料)としての再利用も行っています。
再生可能原料
当社は、従来より主にフェノール樹脂や成形材料の原材料として、非可食の植物由来原料(カシュー・ナット・シェル・オイル、ロジン(松脂)、木粉等)を再生可能原料として使用しており、その比率は全使用原料の約2.7%におよびます。
今後さらに再生可能原料の使用比率を高めるべく、植物由来のリグニンを使用したフェノール樹脂の開発やバイオプラスチックの活用に取り組んでいます。
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