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トップメッセージ

変化を飛躍のチャンスにあくなき挑戦で希望あふれる未来を拓く

2022年度の業績について

売上収益と当期利益で3年連続の増収増益 
成長分野を突破口にさらなる高みを目指す

2022年度は、円安を追い風に、原材料やエネルギー費の上昇分を価格改定で補完できたことなどもあり、過去最高の売上収益を確保することができました。事業利益は、スマートフォンなどの民生機器需要の停滞や、ウクライナ情勢、半導体不足による自動車の減産などの影響で、半導体関連材料や高機能プラスチックの販売数量が落ち込み、前年度を下回る結果に終わりました。当期利益は、受取利息や受取配当金の増加などで過去最高となり、結果的に売上収益と当期利益において3年連続で増収増益となりました。

2023年度は、前期を上回る業績を目指しています。主力の半導体関連材料は、民生関連の動きは鈍いものの回復の兆しが見えています。市場が全般的に回復傾向にある自動車関連製品を糸口に、半導体関連材料と高機能プラスチックの業績アップを図りたいと考えています。クオリティオブライフ関連製品のフィルム・シートとヘルスケアは、今期も堅調に推移する見通しです。産業機能性材料事業や防水関連事業にも期待がかかります。先行き不透明な国際情勢が続く中、コスト抑制などをはじめとする不測の事態に備えた施策を緻密に練り上げ、確実に遂行していきます。「新製品」「新用途」「新顧客」の開発を着実に進めながら、さらなる成長を期してまいります。

藤原一彦

代表取締役社長
藤原 一彦

●業績ハイライト

  2021年度実績 2022年度実績 増減
売上収益 2,631億円 2,849億円 8.3%
事業利益 265億円 254億円 -3.9%
営業利益 249億円 248億円 -0.3%
親会社の所有者に帰属する当期利益 183億円 203億円 10.9%
ROE 8.5% 8.4%

Q1. 中期経営計画の最終年度となる2023年度への意気込みと次期中期経営計画への展望を視野に入れた目標達成に向けての取り組みをお聞かせください。

A.新しいビジネスモデルの創出で、社会の発展を支え続ける

ワールドワイドな総合力で目標達成に挑む

中期経営計画の最終年度となる2023年度は、盤石な未来への布石を打つ1年にしたいと考えています。2023年5月に発表した2023年度の業績予想は、売上収益2,950億円、事業利益285億円ですが、中期経営計画の最終年度の数値目標として掲げた売上収益3,000億円、事業利益300億円の達成を目指し全社一丸となって臨んでまいります。

目標達成には、新しいビジネスモデルの創出が欠かせません。組織横断型での事業展開の活性化を促す「One Sumibe活動」を軸に、需要拡大に力を注いでいきたいと考えています。

「One Sumibe活動」の推進により、事業セグメントの垣根を越え、社会が抱える課題やお客さまのご要望にきめ細かく寄り添った製品開発が可能になりました。すでに、樹脂化e-Axle、放熱材、光導波路、電子調光といった新規プロジェクトを立ち上げています。このうち、事業化の目途が立った放熱材は、2023年4月に事業開発部を発足しました。各プロジェクトリーダーには、事業化への強い意欲を持つ若い人材を登用することで、従来の縦割り組織では難しかった人材育成の流れも出てきています。

オープンな企業風土の醸成といった視点でも、「One Sumibe活動」は大きな効果を発揮しています。自発的なコミュニケーションの場がボトムアップで創出されるようになりました。社内ネットワークが強化されたことでグループ内の情報共有が進み、お客さまへの提案力アップが図れるようになるなど、社内の随所で活動の成果が実を結びはじめています。

「One Sumibe活動」の浸透をさらに図り、当社グループのワールドワイドな総合力強化につなげていきます。

事業進展に不可欠なDXの推進を加速

DXの推進については、当社グループの重要な成長戦略として位置付け、「研究開発」「モノづくり」「業務全般」という3つの分野を中心に改革を進めてきました。

「研究開発」では、データ基盤を整備し、MI※1の活用を各研究所で進めています。新しい分野に挑戦するデータサイエンティストの育成にも力を入れています。技能の習得を志す人材を支援し褒賞を与える制度も設けました。高度な知識を身に付けたデータサイエンティストの活躍により、データを生かした新製品の誕生や開発スピードの短縮などが実現しています。

「モノづくり」では、AI、IoTを駆使した、人の手を介さないオートパイロット制御による生産ラインの構築を着々と進めています。すでに導入が進んでいる国内に加え、海外にもすそ野を広げ、適用製品を徐々に拡大しています。歩留まりなどの格段の向上で、人生産性の大幅な改善を目指しています。

「業務全般」では、業務変革ワーキンググループを立ち上げ、業務プロセスを見直すとともに、RPA※2の積極的な導入で営業・事務の効率化を図っています。従業員のエンゲージメント向上を常に念頭に置きながら、さらにやりがいが感じられる業務への移行や、心身にわたる健康をもたらすゆとりを生みだすことに努め、弾力性に富んだ働き方改革にもつなげていきたいと考えています。

  • ※1 MI (マテリアルズ・インフォマティクス):機械学習などの情報処理技術を用いて、材料開発を進めること。
  • ※2 RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション):ロボットにより業務の自動化を図ること。

スペックでは表せない満足度を追求

CS(顧客満足)を根幹とする事業姿勢は、当社グループが長い歴史の中で育んできた企業文化の一つとも言えるものです。付加価値の高い製品を納期どおりに納めるのは当然のこととして、お客さまに喜びや感動といった価値も提供することが、当社グループにおけるビジネスの在り方だと考えています。お客さまの声に耳を傾け、悩みを共有し、ともに課題解決を目指していくことの重要性を、お客さまと接する機会の多い営業やマーケティング、研究に携わる従業員を中心に繰り返し伝えています。毎年開催しているCS討論会では、現場の最前線で活躍する従業員の代表が活動の成果を報告し合い、活発な議論を展開しています。最も優れた顧客体験は共創から生まれることを銘記し、お客さまとの信頼の絆を深めていきます。

中期経営計画の主要施策

Q2.ありたい姿を「社会課題の解決に貢献し、持続的に成長・進化する会社」と定めています。サステナビリティ活動についての現状と今後のビジョンをお聞かせください。

A.SDGsをすべての指標に、先見の技術力で心を動かす価値をつくる

事業活動の判断基準は「社会貢献」

SDGsの理念は、当社グループの「基本方針(経営理念)」とも軌を一にするものです。SDGsをあらゆる活動の起点とし、社会貢献の指標としながら製品開発をはじめとする事業を展開しています。特に人類共通の喫緊の課題である環境への取り組みでは、2035年までの環境対応材料の開発ロードマップを作成しました。資源、創・省エネルギー、長寿命、3R※1などといったキーワードを切り口に環境配慮型製品の技術開発をスピードアップしています。現在、食料と競合することのない非可食性バイオマスから得られるリグニンを活用した樹脂や、低温硬化材などの環境対応製品の開発を精力的に行っています。

当社グループでは独自にSDGs貢献製品の認定を進めていますが、2022年度における該当製品は、売上収益比で54.5%になりました。認定には、SDGs推進委員会の審査を経て承認されることが必要ですが、順調に推移しており、2023年度の目標に掲げていた売上収益比率50%以上を前倒しで達成しています。2030年度の目標は、売上収益比率70%以上です。開発中の製品の早期市場投入による販売拡大に注力していきます。

また、環境保全や温暖化対策などの環境価値、人的資本や人権などの社会価値の向上に向けた取り組みを強化するためにサステナビリティ推進部を設置しました。効果的に全社の取り組みを進め、外部への発信も強化します。

人的資本にかかわる取り組みでは、さらにDE & I※2推進室を設置し、相互の理解と尊重のもと、一人ひとりの状況に応じた公正な機会が提供される職場づくりを進めています。さらに、従業員が生き生きと活躍できる企業を目指し、人事制度の一部を刷新し、チャレンジに重きを置いた評価制度へと変更しました。失敗を恐れずに、誰もがのびのびと個性を発揮し、持てる能力を最大に高め合える多様な人材群の構築で、変化をしなやかに吸収できる持続可能な企業へと成長を続けてまいります。

  • ※1 3R:Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)。
  • ※2 DE & I:Diversity(多様性)、Equity(公正性)、Inclusion(包括性)。

社会を豊かにするための機能を磨く

当社グループでは、「プラスチックの可能性を広げることで、持続可能な社会を実現する」をパーパスに制定しています。製品が持つ高強度や耐久性などの性能の進化を図りながら、環境へのダメージを最小化した製品開発を実現することで、産業を支え社会の進展に貢献してきました。

また、中期経営計画の基本方針として、「SDGsに即し、機能性化学分野で『ニッチ&トップシェア』を実現」を掲げています。当社グループは多様な製品ジャンルにおいて、シェアを確保することで地歩を固め、たゆまぬ技術革新で業界をリードしてきました。ほかのものでは代替がきかない無二の機能を備えたプラスチックを開発することこそが、当社グループに課せられた真の存在意義であると考えています。

たとえば「P-プラス®」は、野菜や果物といった青果物の鮮度を長持ちさせる包装材として国内トップシェアを誇るブランドであり、フードロスの削減に貢献しています。さらに、鮮度を保持しながら牛肉などのうま味を熟成させることでおいしさまで長持ちさせる包装材として注目を集めているのがスキンパックです。消費期限の延長、プラスチック使用量の削減、包装効率の向上など、多岐にわたる効果を発揮しています。

自動車関連では、金属部品の樹脂化を進めてきました。金属をプラスチックに置き換えることで軽量化を実現し、燃費の向上、CO2削減を可能にしています。非可食植物からプラスチックをつくる研究も進んでおり多くの成果をあげています。

化石燃料を使うプラスチックに対するネガティブなイメージを払拭することは容易ではありませんが、安全や安心、快適性を追求しながら、当社グループのプラスチックでなければ実現できない機能という揺るぎない価値で、社会課題を解決していく使命はますます大きくなっていると感じています。

脈打つモノづくりの力を結集した新製品・新技術の開発を通し、社会を豊かに潤す価値を提供し続けてまいります。

Q3.ステークホルダーの皆さまへのメッセージをお願いします。

A.求められる価値を実装したプラスチックの開発で次代を切り拓いていく

「新製品」「新用途」「新顧客」と「シェアアップ」、そして「人生産性の向上」。従業員に伝えているキーワードはどれもシンプルなものですが、いつの時代の企業経営にも通じる大切な基本であると考えています。時代は常に新しい価値を求めています。自らが変化し続けなければ、持続的な成長は望めません。

2022年度は、売上収益、当期利益において3年連続で増収増益を達成することができました。ステークホルダーの皆さまに支えられ、従業員をはじめとする関係各位が団結して難局に立ち向かった結果であると心より感謝申し上げます。

2023年度は中期経営計画の最終年度です。数値目標にこだわり、過去最高を更新する結果を持って、次の中期経営計画のスタートダッシュが切れるよう、重点施策に取り組んでまいります。

投資については、人生産性を高めるためのDXの推進や、カーボンニュートラルにつながる太陽光発電設備などを優先に進めていく方針です。また、M&Aによる事業拡大のチャンスは見逃すことなく果敢に挑戦していきたいと考えています。サステナブルな社会の実現に貢献し続けていくために必要な投資を確実に行いながら企業価値の向上に努めてまいります。

当社グループのビジョンは、「未来に夢を提供する会社」です。長年にわたる製品開発などで培ってきた「らしさ」を研ぎ澄ませ、社会から共感され選ばれる価値を創出することで、たくさんの夢をステークホルダーの皆さまにも提供していける会社を目指してまいります。数十年後の未来は、今の延長線上ではない新しい夢を、従業員とともに実現している会社でありたいと願っています。引き続きご支援のほどよろしくお願いいたします。

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