トップメッセージ

挑戦と共創で
ポートフォリオ変革を達成し、
2030年のその先も持続的な成長を実現

代表取締役社長 社長執行役員 鍜治屋 伸一
代表取締役社長 社長執行役員 鍜治屋 伸一 代表取締役社長 社長執行役員 鍜治屋 伸一

対話を重ね、全社一丸となって
2030年ありたい姿を実現

2025年6月の社長就任以来、この1年間で国内の全事業所と海外の主要拠点を訪れ、多くの従業員の皆さんと直接対話を重ねてきました。各事業所では社長懇談会を開催し、会社の経営方針を共有するとともに、質疑応答で一人ひとりの考えや思いに触れ、住友ベークライトグループが同じ方向を向いて前進している手応えを感じました。また、主要顧客のトップや、株主、投資家の皆さまとも積極的に交流の機会を持ちました。そこで改めて感じたのは、当社に対する期待の大きさです。私たちが培ってきた技術力や品質、提案力に対する信頼の声を伺うたびに大きな励みになり、新たな価値を提供し続けることで、さらなる成長を実現できると確信しています。今後も経営の透明性を高め、何を目指し、どこに経営資源を集中しているのかを丁寧にご説明することで、将来に向けた成長ストーリーへの理解を深めていただきたいと考えています。
当社グループは2030年ありたい姿の財務目標として、事業利益550億円を掲げています。この目標に向けて、ICT、モビリティ、ヘルスケア、ライフイノベーションの4領域を中心に、どのように投資を行うことが有益か、バックキャストで成長戦略を描いています。社長直下のプロジェクトの立ち上げはその一つであり、各部門の主要メンバーと日々議論を重ねています。今後は事業ポートフォリオ変革も含め、2030年ありたい姿を具体的な形にすることが重要なテーマであり、成長への鍵だと考えています。
事業環境に目を向けると、原材料価格の変動や地政学リスクなど、不確実性が高まっています。当社は売上収益の6割以上を海外が占めており、こうした変化への対応力はますます重要になるでしょう。だからこそ、今改めて重視しているのがグローバル化の推進です。各地域で地産地消を進めながら本社機能を強化し、世界で50を超える拠点を支える体制を構築します。技術や品質、ブランド価値は全世界で共有しつつ、各地域のお客さまのニーズにきめ細かく応えることで、真のグローバル企業として成長してまいります。

過去最高業績を達成し、次の成長ステージへ
~2025年度の振り返り~

中期経営計画2024-2026の最終年度を目前にした2025年度を振り返ると、外部環境の変化が続く中でも、各事業がそれぞれの強みを発揮し、収益基盤を着実に固めることができた一年でした。売上収益、事業利益、当期利益のいずれも過去最高を更新し、中期経営計画で掲げていた事業利益340億円を上回る345億円を達成できました。藤原会長のもとで築かれた持続的成長の流れを、右肩上がりに継続できたことは、経営を託された者の最低限の責任を果たせたと安堵する思いです。同時に従業員の皆さんには、変化と困難の中でも全員一丸でやるべきことを着実に進めていただき、感謝を申し上げます。
3事業セグメントの状況については次のとおりです。

代表取締役社長 社長執行役員 鍜治屋 伸一

半導体関連材料

中国における半導体国産化の進展やAI関連需要の急速な拡大を背景に、事業が大きく成長しました。これまで進めてきたグローバル供給体制の強化に加え、蘇州新工場も順調に立ち上がり、期初計画を大きく上回る実績を残しています。AIやパワー半導体といった成長市場への対応力が高まり、当社の強みである材料技術や顧客との信頼関係が着実に成果へと結びついています。

高機能プラスチック

航空機需要の回復に加え、半導体関連用途も堅調に推移しました。課題であった北米のフェノール関連事業については、生産体制の見直しや製品構成の最適化などの構造改革を進めており、その成果も徐々に表れ始めています。一方で、中期経営計画で掲げた利益目標には届かず、さらなる収益改善が必要だと認識しています。市場環境の変化を見極めながら、スピード感を持って対策を実行し、高付加価値製品へのシフトを加速していきます。

クオリティオブライフ関連製品

フィルム・シート事業を中心に、ヘルスケア、産業機能性材料、シート防水の各事業が堅調に推移しました。特にヘルスケア分野では、北米拠点の統合やタイ子会社の事業再編、不採算製品からの撤退、低侵襲治療用医療機器のラインナップ拡充など、収益構造の改革を進めた結果、利益成長を実現できました。

2026年3月期連結業績(前年との比較)

(金額単位:億円)
項目 2025年3月期
実績①
2026年3月期
実績②
前年同期比較
金額(②-①) 増減率
売上収益 3,048 3,199 151 5.0%
事業利益※1 308 345 37 11.8%
営業利益 248 355 107 43.1%
当期利益※2 193 280 87 45.3%
ROE 6.5% 8.8% - -

為替レート: USD(円/$) 2025年3月期:152.48円/2026年3月期:150.97円

EUR(円/€) 2025年3月期:163.62円/2026年3月期:174.54円

※1 「事業利益」は「売上収益」から「売上原価」、「販売費及び一般管理費」を控除したベース

※2 「当期利益」は親会社の所有者に帰属する当期利益

財務・非財務両面から着実に企業価値向上を図る

また、中期経営計画では、「“ニッチ&トップシェア”を目指し、価値創造につながるポートフォリオ改革に挑戦する」を方針に掲げていますが、それを支える3つの戦略も着実に進捗しました。第一の柱「製品構成を最適化し、既存事業の収益力を強化」では、事業利益率が2025年3月期の約10.1%から、2026年3月期には10.8%へ改善しました。これは当社独自の経営指標であるSB-ROICを活用しながら、資本効率を意識した経営を推進した結果です。加えて、製品構成の最適化や高付加価値領域へのシフト、生産拠点の合理化などを進めることで、収益性の向上を図っています。事業セグメント別に見れば、半導体関連材料ではAIやパワー半導体向け需要の拡大に対応し、高機能プラスチックでは半導体、モビリティ、環境対応分野を強化領域と定め、高付加価値製品の拡販を推進しています。また、クオリティオブライフ関連製品では、医療機器や医薬品包装、半導体・電子部品向けフィルム製品の拡大に取り組んでいます。産業機能性材料では光学特性や絶縁特性を付与した高付加価値製品の販売が伸長しており、シート防水事業においてもソーラーパネル敷設用の軽量アンカーなど、新たな価値提供による収益力向上を進めています。
第二の柱「SDGsに則した環境・社会価値を有する新商品/新ソリューションを創出」についても、将来の成長ドライバーを育てるしくみづくりを強化しています。研究開発本部や経営戦略企画室を中心に、新たな事業の種を探索する一方で、BMI (Brain Machine Interface) 事業化プロジェクトや水素製造機能膜量産準備プロジェクト、東北大学との次世代半導体向け共創研究所、ベンチャー企業との連携など、多面的なアプローチを続けています。BMIについては医療分野での事業化に向け、量産設備への投資を決定しました。また東北大学との研究では、次世代半導体向けの新構造を学会で発表するなど、具体的な成果も表れ始めています。このほか電子調光デバイスをはじめとする新規テーマでも、着実に事業化に向けた歩みが進んでいます。
そして、第三の柱「個人の自律性と組織の一体感を高め、全社力を最大化」では、人材育成と組織力強化に注力しています。SBスクールでの体系的な教育に加え、前期にはサクセッションプランを整備しました。有望人材に向けて部門横断の経験や経営陣との対話といった、タフアサインメントの機会を提供することで、将来の経営を担う人材を計画的に育成するプログラムです。また、One Sumibe活動を通じて部門や地域を超えた連携も活発化しており、組織全体で価値創造を生み出す力が着実に高まっています。
非財務面でも、12の重要課題に対する取り組みは順調です。「環境・社会価値の創造」では、SDGs貢献製品売上収益比率が68.3%まで拡大し、2030年度目標である70%の達成が目前に迫っています。また、GHG排出量削減については、2030年度目標としていた2021年度比48%削減を前倒しで達成したことから、新たに58%削減へと目標を引き上げました。すでに2030年以降を見据えた新たな目標設定についても、議論を始めています。
資本政策については、事業利益だけでなく投下資本も踏まえたSB-ROIC経営を推進し、資本効率の向上を図っています。中期経営計画で定めたキャッシュアロケーションも計画どおり進捗しており、成長投資を積極的に行いながら、配当性向40%程度を目安とした安定的かつ継続的な利益還元を実施してまいります。財務・非財務の両面から企業価値向上を図りながら、2030年ありたい姿の実現に向けて、次の成長ステージへの歩みをさらに加速させていきます。

2030年のその先を見据え、2026年度は新たな成長の道筋を描く

2026年度は、中期経営計画の総仕上げの年であると同時に、2030年ありたい姿を実現するため、次の道筋を描く重要な一年です。気が付けば2030年は決して遠い未来ではなくなり、その先には住友ベークライトが創立100周年を迎える2055年が見えています。2030年はあくまで通過点として、当社が100周年を迎える際にどのような価値を提供し、どのような存在として社会から必要とされたいかを、グループ全体で議論しながら次期中期経営計画をつくり上げていきます。

その中で2026年度の大きなテーマとなるのが、事業の統合とグローバルでの連携強化です。2025年にはAGCグループのポリカーボネート事業、さらに2026年には京セラ株式会社のケミカル事業の一部を新たな仲間として迎え入れました。特に半導体関連材料を中心とする京セラ株式会社のケミカル事業については、計画どおり新会社を立ち上げ、順調なスタートを切れる見通しです。メモリー分野では、京セラ株式会社が強みを持つ顧客と、当社が強みを持つ顧客が補完関係にあります。さらに、高熱伝導材料など両社が持つ技術資産を融合することで、新たな価値を創出していきたいと考えています。
同時に、グローバルでの連携も一段と強化しなければなりません。技術、品質、ブランド価値を全グループで統一しながら、地域ごとのニーズに最適な製品やサービスを提供することで、世界の需要を取り込みます。また、国内拠点の自社開発システムからの移行を起点として、データドリブン経営の基盤整備を加速させます。多様なデータを迅速な判断へとつなげ、全社最適の視点で持続的な成長と変化への対応力を追求します。

2030年ありたい姿へのロードマップ
2030年ありたい姿へのロードマップ

今挙げたように成長のエンジンはいくつもありますが、私自身はすべての基本は「人」であると考えています。従業員一人ひとりの成長こそが、企業の競争力向上の源です。そのため、安全の最優先、多様性の推進やエンゲージメント向上、働きやすい環境づくりなど人的資本への投資は、今後も継続、拡大していきます。変化の激しい時代だからこそ、一人ひとりが成長を実感しながら、全員で未来を切り拓いていきたいと考えています。

ポートフォリオ変革を達成し、挑戦できる企業風土を育てる

住友ベークライトは次期中計では、事業ポートフォリオ変革を実施する構想を描いています。そのため、現在当社は3つのポイントに絞って、製品ポートフォリオ変革の総仕上げに臨んでいます。まず一つ目のポイントは、各事業における収益構造改革です。収益性や将来性を見極めながら、製品構成の見直しや生産拠点の合理化、高付加価値製品へのシフトを進めています。改善が難しい事業については価格転嫁も含めて顧客との対話を重ね、収益性向上に取り組んでいます。高機能プラスチック事業における北米フェノール関連事業や、産業機能性材料事業での高付加価値化など、その成果も着実に表れています。二つ目は、M&Aを通じた成長領域の強化です。前年来、当社のプレゼンスを高めるM&Aに取り組んできました。このほかにもフィルム・シートなど、当社事業をさらに強靭にできるM&Aも行っており、今後も技術や市場との親和性を重視しながら、成長につながる投資を積極的に検討していきます。最後に三つ目は、新規事業や新技術の早期事業化です。市場性や競争優位性を見極めながら、将来の成長ドライバーとなるテーマを着実に育てていきます。こうしたポイントを踏まえ、次のステージではいよいよ、ICT、モビリティ、ヘルスケア、ライフイノベーションという4つの領域で、事業ポートフォリオを最適化します。その上で、経済性、市場性、ビジョン適合性などの観点から、競争優位を持てる領域へ積極的に経営資源を投入し、さらなる成長につなげていく考えです。
一方で、事業ポートフォリオ変革はゴールではありません。世の中は常に変化しており、これまでの延長線上のビジネスでは成長は望めません。そこで大切なのは、市場や顧客の声をしっかり聞いて成長分野に注力すること、競争優位性を確保しビジネスを拡大すること、そして失敗を恐れず挑戦し続けることです。特に「挑戦」は、私が2026年度のキーワードとして定めた言葉です。その原動力になると期待するのが、私自身もこれまでかかわってきたOne Sumibe活動です。営業から始まった本活動は、現在では研究開発、生産、コーポレート部門を巻き込みながら全社へ広がっています。実際、2025年度には部門を超えた連携が定着し、One Sumibe活動の一つとして取り組んでいたパワーモジュールチームを「パワーエレクトロニクスソリューション開発部」として組織化しました。これにより、全社でパワーエレクトロニクスの分野にリソースを集中し、部門間の連携も深まるなど、成果を上げています。
また、組織風土という点では、One Sumibe活動の中から立ち上がった「インフルエンサーチーム」が全社のネットワークを強化するさまざまな施策を実施してくれており、グループ全体の一体感は着実に高まっています。この機運を逃すことなく、従業員一人ひとりが住友ベークライトグループに誇りを持ち、挑戦できる企業風土をさらに育てていきたいと考えています。

基盤技術を活かし4領域で新たな価値を創出
基盤技術を活かし4領域で新たな価値を創出

皆さまの共創パートナーとなり、 「未来に夢を提供する会社」へ

2030年のありたい姿の実現に向けて、当社は着実に歩みを進めています。既存事業の強化に加え、One Sumibe活動によるシナジー創出も成果を上げており、BMIや電子調光デバイスなど、材料メーカーの枠を超えた新たな事業領域への挑戦も本格化しています。一方で、今後はセンサーやソフトウェア解析など、当社にとって新たな領域にも踏み込んでいくことになります。そのためには、社外との共創や外部知見を積極的に取り入れながら、スピード感を持って価値創造を実現していくことが重要です。また、近年の生成AIやデジタル技術の進歩は、当社に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。研究開発におけるマテリアルズ・インフォマティクス(MI)、工場での自動化、管理部門の業務効率化など、さまざまな分野でDXを進化させれば、これまで以上に迅速かつ的確な意思決定が可能になるでしょう。この恩恵を最大化するためにも、IT推進本部やコーポレートエンジニアリングセンターを中心とした人材育成を進めながら、データドリブン経営をさらに高度化させていく考えです。

代表取締役社長 社長執行役員 鍜治屋 伸一

こうした変革を進め、住友ベークライトグループが掲げる「未来に夢を提供する会社」というビジョンを実現するには、従業員一人ひとりが自律的に考え、互いに協力し合いながら挑戦を続ける組織風土が欠かせません。だからこそ、私自身が目指す組織や風土について、従業員の皆さんに繰り返し伝え続け、全社力向上に努めていきたいと思います。
最後に、今日まで当社が持続的な成長を続けてこられたのは、株主・投資家の皆さま、お取引先、そして従業員をはじめとする多くのステークホルダーの皆さまのご支援の賜物です。私たちはこれからも、プラスチック関連技術をさらに磨き上げるとともに、ICT、モビリティ、ヘルスケア、ライフイノベーションの4領域で新たな価値を創出し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。そして、お客さまから「住友ベークライトと付き合ってよかった」と言っていただける真のパートナーとなり、「未来に夢を提供する会社」として、成長に挑戦し続けていきます。グループ一丸となって企業価値の向上に努めてまいりますので、これからも変わらぬご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

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