トップメッセージ

利益基準への転換と
ポートフォリオ改革で、
新たな価値創造に一歩踏み出す

代表取締役社長 藤原 一彦代表取締役社長 藤原 一彦

TOP MESSAGE

「2030年ありたい姿」からバックキャストで中期目標を設定

新中期経営計画 は財務と非財務の両面で組織一丸となって取り組む目標を2030年からバックキャストで設定しました。当社グループ は、持続的な成長を遂げるために、財務基盤の一層の強化と収益性向上に向けて「利益基準に転換」する体制を構築します。つまり、これは事業規模を追うよりもニッチな市場で付加価値の高い製品を開発し、しっかりと利益を確保することです。新中期経営計画では、これを社内外に示したいと考えました。たとえば、100トンのプラスチックを生産して、炭素税を払ったら利益が出ないということでは、CO₂を排出しているだけになります。こうしたビジネスに陥らないように、小規模でも利益を意識したマネジメントを志していきます。付加価値の高い製品群へリソースを集中し、「2030年ありたい姿」の実現に向けて、ぶれずに取り組んでいきます。
また、非財務目標ではサステナビリティの観点で将来の財務に影響を及ぼす「経営の重要課題」を新たに掲げました。社会や当社グループのあり方は刻々と変化しています。これまでの経営の重要課題(マテリアリティ)は2015年に設定したものでしたので、新中期経営計画を機に改めて経営の重要課題を見直すことは必然でした。ここに至るまでにサステナビリティ推進委員会をはじめ、社外取締役、各部門の関係者と多くの議論を重ねました。その上で、「環境・社会価値の創造」と「価値創造のアクセル」、「事業を継続する基盤」に代表される12の経営の重要課題を定めています。
財務目標と非財務目標の両方を意識しながら、良質な製品とサービスを通じて、サステナブルな社会の実現に貢献することが「未来に夢を提供する会社」への近道だと信じています。

代表取締役社長 藤原 一彦

厳しい事業環境にも手応え 〜前中期経営計画の振り返り〜

前中期経営計画はコロナ禍の2021年度からスタートし、地政学のリスクなど先の見通せない事業環境が続きました。そのような中でも、初年度である2021年度に、コロナ禍の巣ごもり需要の影響もあり、当初計画した2023年度目標の売上収益2,500億円、事業利益250億円を達成したため、2023年度目標を売上収益3,000億円、事業利益300億円と上方修正しました。2023年度はインフレや円安が進行した影響が大きく、特に欧州や北米のインフレは人件費の上昇を招くとともに、コロナ禍からの自動車や建築関係の需要回復を鈍らせる要因となりました。一方、円安は当社グループが海外で稼いだ利益の上積みにつながりましたが、国内のエネルギーコストは上昇しました。このほか、2021年度から続いていた原料費の高騰がやや落ち着いたことは、利益の増加要因となりました。
各事業セグメントに目を向けると、半導体関連材料は民生の回復が遅れるも、モビリティ戦略3製品が好調を持続し、中国ではスマートフォンなどの内需が回復しました。高機能プラスチックは、想定よりも苦戦を強いられました。民生の在庫調整の影響を受け第2四半期が落ち込みましたが、その後、在庫調整が一巡し需要が回復しました。また、航空機内装部品の事業はコロナ禍からの航空機需要の回復により黒字化を達成しています。クオリティオブライフ関連製品では、フィルム・シートの医薬品包装が堅調に推移しました。産業機能性材料では、サングラスやヘッドアップディスプレイ用途の光学製品、インバーターなどに使用する絶縁フィルムやシート防水ではソーラーパネルの需要増加に伴うソーラーアンカーの販売増など高付加価値品の販売が増加しました。ヘルスケア関連では血液バッグや採血キットの輸出販売が好調に推移し今後に期待が持てます。

前中期経営計画(2021-23)の振り返り

2023年度、過去最高の売上収益、事業利益、当期利益を達成

さまざまな外部要因はあったものの、モビリティ材料の拡販、航空機需要が徐々に回復し黒字化を達成、ヘルスケアではSBカワスミの発足により医療機器事業が拡大するなど、全体として見れば好調で、前中期経営計画の最終年度となる2023年度は過去最高の売上収益、事業利益、当期利益で終えることができました。上方修正した事業利益目標の300億円には届きませんでしたが、275億円は過去最高益です。従業員をはじめ関係各位が「横串」のマーケティング活動で、お客さまに一丸となって対応できた結果と受け止めています。人件費に関しては、2022年度に引き続き2023年度もベアを行い、「少しでも従業員に還元したい」という思いで賃上げを実施しています。今期はより収益力を高め、従業員を含むさまざまなステークホルダーの皆さまに対して、事業を通じて獲得した利益を還元することが、社長としての使命であると考えています。

12の経営の重要課題を定め、環境と社会への使命を果たす

新中期経営計画では、2030年のビジョン、『お客様との価値創造を通じて「未来に夢を提供する会社」』を見据えた経営を進めていきます。それを実現するべく、新たに掲げたものが12の経営の重要課題です。
最初に掲げているのが「環境・社会価値の創造」です。環境価値の点では、温室効果ガス(GHG)排出量の削減が継続して課題と認識しています。前中期経営計画期間中には、国内各工場・事業所はすべて再生可能エネルギー由来の電力に変えたことやソーラーパネルを導入したことなどにより、当初の計画より大幅に前倒しでCO₂削減目標(2013年度比46%削減)を達成しました。新中期経営計画では、パリ協定の1.5℃目標に基づいて、2030年度には、2021年度比で48%以上削減とさらに高い目標に切り替えて継続して取り組んでいきます。
社会価値の点では、SDGs貢献製品の拡大を経営の重要課題に挙げています。当社グループでは、基盤技術や事業領域から特に貢献できるSDGs目標を「6+1」として定めており、石油ではなく非可食の植物からつくり出すリグニン変性フェノール樹脂、患者や医師の負担を軽減する胆管ステントなどの低侵襲医療機器など多くの貢献製品を生み出しています。前中期経営計画期間中には、SDGs貢献製品の売上収益比率の目標を前倒して達成しており、今後は2030年度に売上収益比率70%以上の目標に向かって積極的に取り組んでいきます。新製品や新用途を展開するには、関係者がどのような社会価値を提供できるかをよく認識して取り組むことが大切です。お客さまに製品を買っていただけるのは、なんらかの価値があるから。従業員には「皆さんのやっている仕事の中に価値を見いだして、前向きに取り組もう」と日々伝えています。
「価値創造のアクセル」では、顧客との共創、イノベーション、人的資本(人材の活躍)経営、DXを重要課題として設定しました。生産性を上げるためには、やはりDXの推進が必須です。AI、IoT、ロボティクスを活用したモノづくりや、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を用いた研究開発の促進、RPAなどのツールを用いた業務変革などの取り組みを引き続き進めます。「事業を継続する基盤」では、安全衛生、サイバーセキュリティ、製品責任、人権尊重、コンプライアンス、サステナブル調達、コーポレート・ガバナンスを重視していきます。今日では当たり前のように感じる要素ですが、これらの目標を当然のように達成できることが何より大切です。

12の経営の重要課題

「ニッチ&トップシェア」 で市場開発を進め、将来への地歩を固める

中期方針で大切にしたい要素は、従来お伝えしている「ニッチ&トップシェア」です。その上で価値創造につながるポートフォリオ改革にも挑戦します。しかし、これは一足飛びに叶うものではないため、新中期経営計画の期間中にポートフォリオ改革に必要な基盤をしっかりとつくり、次の3年間で目に見える形で変革を進めていく考えです。そして、この方針を力強く前進させるべく定めたものが、以下の3つの中期戦略です。

①製品構成を最適化し、既存事業の収益力を強化

今後拡大する市場と事業の適合性を踏まえて、ICT、モビリティ、ヘルスケアを重点領域としてリソースを集中します。一方で、どのセグメントにも収益性の低い製品があります。これらの製品の価値を見直し、継続判断も含めてどのように収益力を高めていくのか検討します。特に高機能プラスチックは、次の中期経営計画で利益率10%を達成できるよう、生産性を高める投資を重点的に行うなどテコ入れを図ります。また、ROICの指標をカスタマイズした社内指標のSB-ROICをこれまで以上に活用し、資本効率性も重視します。

②SDGsに則した環境・社会価値を有する新商品/新ソリューションを創造

ここは利益率を上げ、成長につながる大きなポイントです。利益を上げるには既存製品に対する合理化や拡販に加えて、新商品や新ソリューションを生み出していくことが必要です。中でも環境・社会価値が高く、当社グループにとっても価値あるものにリソースを投入したいです。意欲的な従業員のもと期間限定のプロジェクトチームを立ち上げ、その挑戦を全社で支援していく取り組みも進めます。放熱材料や光回路材料などは、プロジェクトでの検討を終え、事業開発部に格上げし、現在も付加価値の高い新製品を鋭意開発中です。環境・社会の課題を解決するソリューションを短期間で創出する活動を加速します。

③個人の自律性と組織の一体感を高め、全社力を最大化

従業員には人間力 向上の大切さを5年間繰り返し伝えてきましたので、十分に浸透したと感じています。これからは一体感を高めて全社力 向上を目指します。当社グループにおける組織の一体感を醸成しているのは、「横串」の活動です。組織横断型で人的交流の活性化を促す「OneSumibe活動」をさらに推進して、お客さまへ新しい価値提供をしていきます。「One Sumibe活動」は、事業セグメントの垣根を越えて、お客さまにソリューションを提供していくための活動です。毎年いくつかの重要顧客を決めて、集中的に取り組んでいます。大企業になるほど、すでに取引のある分野以外にも、隠れたニーズがあるものです。そこに、各事業ラインが団結してチームをつくり自律的に活動することで、お客さまニーズの把握と新しい価値提供につながっていきます。

新中期経営計画の重点ポイント

挑戦から新製品を生み出し、ポートフォリオの変革へ

多数の目標がある中期戦略ですが、持続的な成長には、「ポートフォリオの変革」が欠かせません。「新製品・新用途・新顧客」の3つがそろわなければ企業は成長していきません。新中期経営計画期間は、製品ポートフォリオ改革に向けて、高付加価値製品へと舵を切る3年間です。極めて重要なのは、新製品とそれに資する研究開発の促進です。
新製品は、何よりもまず「挑戦者を讃える風土」の醸成が肝要だと考えます。私たちはプラスチックの材料技術に強みを持つ会社ですが、画期的な新製品を継続して生み出すことは簡単ではありません。イノベーションの創出にはたゆまぬ挑戦ができる環境と人材育成が必要です。さまざまな施策を講じて、ボトムアップで多くのアイデアが創出される環境づくりを進めます。そこに失敗を恐れないリーダーがかかわることで、世の中に驚きと感動を与えるような新製品が生み出されることを期待しています。
また、近年は企業単独での新製品開発が難しくなっているため、社外との協業関係も強化しています。特に半導体や医療機器といった分野では、国内外を問わず大学、研究所などのアカデミアや材料メーカー、装置メーカーのようなパートナーとともにスピード感を持った開発体制を構築しています。当社グループは、お客さまにお越しいただき一緒にプロセス検討を行えるオープンラボを、日本をはじめアジア地域と欧米の拠点に構えており、現場での共創が新しい製品づくりへの架け橋にもなっています。
当社グループは基盤技術を強みとしており、私自身も研究畑の出身ですので、新製品開発を重要視しています。いかに成長性があり、かつ環境対応できるか、長期的な視点で研究テーマを探索し、根気強く研究開発に取り組んでまいります。

さらなる成長を遂げ利益を還元 〜ステークホルダーの皆さまへ〜

前中期経営計画期間は、おかげさまで株価も上昇しました。これまで取り組んできたサステナビリティの取り組みや事業活動がステークホルダーの皆さまからご評価いただいた結果であると感じています。新中期経営計画は、当社グループの取り組みをステークホルダーの皆さまに、これまで以上にご理解いただくことを念頭に、社内の関係者との議論に加えて、社外取締役や有識者、株主、投資家といった社外の皆さまの声にも耳を傾けながら、目標と方針・戦略を決めました。着実に事業活動を進めることで、多くのステークホルダーの皆さまから信頼され、結果として、企業価値の向上にもつながると考えています。
前中期経営計画期間中は大きなM&Aがありませんでした。会社を一層成長させようとすれば、社内事業の育成と同様にM&Aも必要です。新中期経営計画では、戦略的投資枠として500億円を計画しており、企業価値の拡大を狙います。
財務目標としては、2030年度の目標を事業利益率13%、ROEを10%と定めています。従業員の皆さんとは、経営の重要課題に挙げた項目に取り組むことで、働きがいのある夢のある会社を目指します。どんどん新しいアイデアを提案し、挑戦できる会社を一緒につくっていきましょう。顧客や取引先の皆さまとは、当社グループとより深くコミュニケーションを取りながら、アンメットなニーズや課題を見つけ出し、ともに解決を図ってまいりたいと思います。最後に、株主、投資家の皆さまには確実に業績目標を達成し、株主還元をすることで期待に応えていきます。収益性を高め、すべてのステークホルダーに還元していきたいと考えています。
プラスチックの可能性を広げることで、持続可能な社会の実現に貢献する住友ベークライトグループに、どうぞご期待ください。

代表取締役社長 藤原 一彦

サステナビリティに関するお問い合わせ、資料請求はこちら。

お問い合わせ・資料請求