2025年7月7日
住友ベークライト株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:鍜治屋 伸一)は、高摺動性と高耐熱性を備えたフェノール樹脂成形材料「スミコン®
PM-5700シリーズ」の製品ラインナップを拡充します。
「スミコン®
PM-5700シリーズ」は、自動車の電動化に伴い電動ポンプ類の軸受用途などで採用が進んでいます。これら電動ポンプ類は機能向上に伴い、摺動部材に対して高温・高負荷での耐久性向上とCO2排出量削減のニーズがあり、これらに対して効果的な材料として、さらなる市場開拓を進めています。
開発の背景
自動車の電動化が進む中で、車載用電動ポンプ(電動ウォーターポンプ (EWP)※1や電動オイルポンプ、電動バキュームポンプ)の機能向上やコスト最適化、および素材のCO2排出量削減が求められています。例えば、バッテリーや発熱する電子部品の冷却で重要となるEWPの構成部品である軸受には、焼結カーボンやPFASの一つであるPTFEを含有するPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの高価な材料が用いられています。これらの素材は製造時のCO2排出量が多く、また、焼結カーボンは部品製造時の加工工数が多く部品コストが高くなる傾向にあり、PEEKは摺動面での摩擦熱で溶融するという課題が想定されます。ポンプメーカーは、ポンプの高出力化のために軸受に高い耐久性を求めており、部品設計の見直しや新素材の活用を積極的に進めています。
※1 電動ウォーターポンプ (EWP):電気モーターの力で冷却水を循環させるポンプ
フェノール樹脂成形材料スミコン® PM-5700シリーズについて
フェノール樹脂成形材料スミコン®
PM-5700シリーズは、高耐熱のフェノール樹脂と高い摺動性を実現する黒鉛を充填させた高摺動・高耐熱フェノール樹脂成形材料です。独自の配合により、「滑る・融けない高耐熱プラスチック」を実現しています。また、本製品シリーズは、インジェクション成形に対応しており、熱硬化性樹脂の溶融時に低粘度である特徴を活かした薄肉成形や偏肉成形が可能であり、設計の自由度が向上するというメリットもあります。 |
![]() |
今後の計画
高摺動・高耐熱フェノール樹脂成形材料の販売を通じて、お客様のニーズを掴み、当社の強みである樹脂開発力を活かし、さらに高温・高負荷の用途に対してより摺動性の高い新製品の開発を積極的に進めてまいります。当社では摺動成形材料の分野で、2030年度までに年間20億円の販売を目指しております。
本製品の特長
本製品は、耐摩耗性が高い特長があり、ポンプ部品を始めとした機械用の摺動部品への適用が期待できます。また、熱硬化性樹脂であるため、摩擦熱で樹脂が溶融して凝着することもありません。さらに、高温環境、冷却水中での寸法変化が小さいという特長があります。
表:摺動フェノール樹脂成形材料の特長

表:PTFE配合PEEK材料と高摺動性成形材料の比較

項目 | フェノール樹脂成形材料 | 焼結カーボン | PEEK 熱可塑性樹脂 |
|||
---|---|---|---|---|---|---|
PM-5750 | PM-5740 | PM-5780 | PM-5640 | |||
高摺動 耐摩耗性 |
高摺動 | 高摺動 低反り |
摺動 高強度 |
|||
比重 | 1.67 | 1.65 | 1.61 | 1.78 | 1.77 | 1.45 |
線膨張係数 (ppm/K) |
20 | 22 | 25 | 21 | 23 | 45 |
曲げ強度 (MPa) |
90 | 90 | 90 | 180 | 75 | 230 |
曲げ弾性率 (GPa) |
13.5 | 13 | 12 | 15 | 15 | 11.5 |
圧縮強度 (MPa) |
160 | 160 | 150 | 300 | 175 | 170 |
摩擦係数 (0.6MPa, 5m/s) |
0.1 | 0.12 | 0.12 | 0.2 | 0.14 | 0.23 |
比摩耗量 mm/(MPa・m/s・hr) |
2×10-3 | 3.5×10-3 | 5×10-3 | - | - | - |
ガラス転移温度 (℃) | 200< | 200< | 200< | 200< | - | <150 |
注記
- 上記のデータは参考値です。 フェノール樹脂については、試験片は射出成形で作製し、アニール後にISO規格に準じて測定しています。
- 摩耗試験はS45Cに対して実施しています。
環境負荷軽減の実現
近年、カーボンニュートラルをはじめとする環境への配慮がますます求められています。その中で、スミコン® PM-5700シリーズは、焼結カーボンに比べて生産時のエネルギー消費量を大幅に削減し、環境負荷の低減に貢献します。当社の試算※2によると製品の炭素排出量(CFP)を焼結カーボンの10分の1以下に抑えることが見込め、カーボンニュートラルへの取り組みに大きく寄与します。
※2 同一形状の部品を想定し、産業連関表による環境負荷原単位データブック(3EID)の「炭素・黒鉛製品」の数値を利用
関連情報
本件に関するお問い合わせ
住友ベークライト株式会社 マテリアルズソリューション営業本部
TEL: 03-5462-4101