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リサイクル炭素繊維を用いた抄造複合材の開発について

2023年4月20日


住友ベークライト株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:藤原一彦)は 、リサイクル炭素繊維を、紙漉き(抄造)技術により再シート化し、サーキュラーエコノミーに貢献する抄造複合材料を開発致しました。また当社独自の熱硬化性樹脂製品(パネル、熱硬化成形材料など)と複合成形することで、ハニカムサンドイッチパネルの強度向上や熱硬化樹脂成形材料の衝撃吸収向上など、新たな価値を提案します。


開発背景

自動車や航空機分野を始めとする輸送分野で使用される素材は、燃費向上のために軽量化かつ高強度の特性が要求されることから、その1つの手段として炭素繊維を用いたプリプレグ(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)が、数十年前程度から多く採用されて、その実績も各用途で多数見られます。

一方、昨今温室効果ガス削減によるカーボンニュートラル(CN)が要求されており、CFRPは使用する炭素繊維が製造時に多くのエネルギーを使用することから、CN観点からは課題もあり、その再利用に関する技術が必須となりつつあります。CFRPからリサイクル炭素を取り出す技術は構築されてきていますが、それを活用する技術・手段は不足しています。
今回、当社の独自の抄造技術と処方技術ならびに複合化技術により、リサイクル炭素繊維を用いた抄造シートを開発し、これを複合化することで、プリプレグの層間剥離強度や衝撃吸収の向上などを発現など見出しました。これにより、リサイクル炭素の新たな活用の可能性を示し、環境負荷低減に貢献します。

当社は将来的にこの抄造シートを販売することで1億円の売り上げを見込んでいます。


紙すき(抄造)技術の応用により炭素繊維資源のリサイクルに貢献

  • 短繊維ランダム配向抄造シートを積層することでプリプレグシート間結合を補強し、破壊進展を抑制
短繊維ランダム配向抄造シートを積層することでプリプレグシート間結合を補強し、破壊進展を抑制

昨今、より深刻化する環境課題を踏まえ化石資源への依存低減を実現するために、より環境にやさしい製品の製造・開発が多く求められてきています。住友ベークライトグループでは長期的な視点をもって活動することが必要と考え、最終年を2050年とする「「環境ビジョン2050(ネットゼロ)」を公開し、グループ全体で推進してまいります。


【技術の特徴1】 紙すき(抄造)技術の応用による繊維樹脂複合技術の創成

当社が培ってきた樹脂合成・成形技術と紙すきの技法を応用した抄造技術を融合し、リサイクル炭素繊維を用いた抄造シートを製造する技術を創成しました。

 紙すき技術の応用による繊維樹脂複合技術の創成

【技術の特徴2】フェノール樹脂複合材料 ~抄造技術と成形材料の融合~

  • 抄造材料と熱硬化成形材料を同時一体成形することで熱硬化成形材料の剛直性に抄造材の耐衝撃性を付与
フェノール樹脂複合材料~抄造技術と成形材料の融合~

【技術の特徴3】炭素繊維複合材料(CFRP)層間補強材 ~リサイクル炭素繊維の活用~

  • 短繊維ランダム配向抄造シートを積層することでCFRPシート間結合を補強し、破壊進展を抑制
炭素繊維複合材料層間補強材~リサイクル炭素繊維の活用~


【想定用途例1:PM複合材】

PM複合材

【想定用途例その2:CFRP層間補強材】

  • 航空機内装用 ハニカムサンドイッチパネル
CFRP層間補強材

ギャレー、ラバトリー、頭上荷物棚、クルーレスト、クラスデバイダー、各種パーティション、各種モニュメント、カーゴパネルなど




関連情報

本件に関するお問い合わせ

住友ベークライト株式会社 
HPP事業本部 マテリアルズソリューション営業本部 複合材料・成形品営業部

TEL: 03-5462-4101