2022/3 【CARTALK】第14回 国際カーエレクトロニクス技術展 会場レポート | 住友ベークライト株式会社

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第14回 国際カーエレクトロニクス技術展 会場レポート

第14回 国際カーエレクトロニクス技術展 会場レポート

ご紹介

第14回 [国際]カーエレクトロニクス技術展 - カーエレJAPAN -

2022年1月19日(水)~21日(金)、東京ビックサイトにて実施された「第14回 [国際]カーエレクトロニクス技術展 - カーエレJAPAN -」。自動運転、クルマの電子化・電動化、コネクティッド・カー、軽量化などの最新技術や製品・サービスが出展されました。参加企業は1050社、公表来場者数は約3万2千人。住友ベークライトの展示ブースにも、多くの方がご来場くださいました。


人とくるまの安全・快適・高機能化に「樹脂」という選択肢を!をテーマに

―― 電動化ソリューション、樹脂化e-Axleのご提案

当社ブースは会場中央、通路が交差する角地。多くの方の目に触れやすい場所になります。メイン展示は、インバーター、モーター、ギアボックスを統合化した「e-Axle」。樹脂材料メーカーとして金属から樹脂化の提案をしているものです。本プロジェクトが発足したのは一昨年で、昨年はNEDOにも採択されたプロジェクトとなります。現在、電動化領域に対してマーケティング、営業ともに注力するプロジェクトとなります。

来場者の反響も大きく、会場を案内する岩崎と岸も「樹脂化したe-Axleというのは私たちの調べでは世界初のこと。これだけ大型のものを樹脂で成形できるということに関して、まずご興味と関心をいただいています。そもそも樹脂化の狙いは軽量小型化、およびノイズやバイブレーションの低減。さらにコイルの熱をいかに効率よく抜熱するかなども、お客様も非常に興味を持たれているポイントになります」。

カーエレ展当社ブース
岩崎/岸

―― めっき専用材フェノール樹脂成形材料「SUMIKON® PM-Plamec」シリーズ

さて、新技術『めっき専用材フェノール樹脂成形材料「SUMIKON®PM-Plamec」シリーズは、ブース中央、来場者の目のつきやすい場所に展示。来場のお客様も関心を寄せていました。

「インバーターケースに向けた、めっき複合化技術。熱硬化性樹脂にめっき加工を施し、かつ製品に適用できるのは、他に類を見ない技術といえます」。

お客様の声、要望事項に電磁波シールド性やガスバリア性がありました。それらを実現するための素材を探索・研究したところ、めっきが耐久性や密着性が優れ適していることがわかりました。そのため、形状の自由度が高いプラスチックの特長をそのままに、めっき加工を施しやすい樹脂を開発したという経緯です。

またここ5年ほどで、自動車関係のお客様から「電動化に舵(かじ)を切る」というお話を耳にすることが多くなりました。自動車業界では、今までに無い部品を作る際、まずは金属で作るのが一般的です。しかし完成した部品を軽量化するニーズが出たときに、軽量化に耐えられるだけの素材がないという声もお客様から寄せられました。今回の開発に取り組んだのは、そうしたお客様のニーズに応えるためでもあります。

めっき処理前後
めっき専用材フェノール樹脂成形材料「SUMIKON® PM-Plamec」シリーズ
めっき専用材フェノール樹脂成形材料「SUMIKON® PM-Plamec」シリーズ拡大
樹脂パーツ

今回の展示物は、あくまで樹脂で作製したパーツであり、e-Axleとして組み立てていない状態のものです。2022年5月までには実際にモーターに組み上げ、運転テストを実施する予定となっています。

「昨年から実際にお客様へのご提案を開始して、コンセプトや狙いなどを説明した上で、お客様からご意見やフィードバックをいただきながらブラッシュアップしています。お客様からの期待も高く、テスト結果を見せてほしいというお声も多くいただいているので、次の展示会では実際にモーターが回ることを目指します」

  • movie e-Axle材料ソリューション
    当社のe-Axleへの取り組みを分かりやすく動画で説明しています。熱マネジメントに優れ、小型・軽量、低振動・低騒音等より高効率で省エネ効果の高いe-Axleを提案します。


―― バッテリーの安全性、設計自由度と機能向上に貢献するバッテリーソリューション

さらに今回は初めて、バッテリーのソリューションを展示しました。電動化アイテムの高信頼性・高効率化に寄与する製品です。

「本製品のアピールポイントは、絶縁性と耐熱性燃焼防止、断熱性の3点。車のバッテリーは座席の下などに置いてありますが、これらのユニットが万が一発火してしまったときに、その熱が車内に伝わったり、燃え広がったりします。それを防止するために私たちは樹脂材料視点でご提案。バッテリーユニットの軽量化と安心・安全の両立を図ります」

例えば、金属の筐体では、電池との隙間は制約もあり狭めることが難しい場合がありますが、それに対して、絶縁性をもつ薄いポリカを1枚組み入れることによって、電池設置のスペースを小さくすることができます。また、筐体やカバーにおいても、絶縁材料であるため部品間のスペースを狭めること、さらに樹脂成型による形状自由度向上や肉薄化も可能。

バッテリーの安全性、設計自由度と機能向上に貢献するバッテリーソリューション
難燃絶縁ポリカシート
発熱ユニット

「バッテリーのソリューションと電池のソリューションは、昨年後半から社内の情報を集めて資料を作り始めました。今はお客様を回りながら、“本当にこのニーズが正しいのか”を確認している段階です」
熱可塑性樹脂とは違い、熱硬化性樹脂には耐熱性があるため、例えば、バッテリーとは違いますがパワーモジュールのように発熱ユニットでも使用可能です。
「私たちのパワーモジュール向け材料としては、固形材料のタイプと液状材料タイプの両方を準備。どちらの製造方法が良いか、お客様のご要望に応じて提案しています」。

やはり電動化が進んでいるので、多くのお客様が耐熱や絶縁のソリューションとして熱硬化性樹脂の可能性に注目し、バッテリーまわりの樹脂の活用にも興味を持っていただくことも増えている印象です。

  • バッテリーソリューション
    各用途で実績のある材料を組み合わせ、バッテリーに対するソリューションを提案し、バッテリーの安全性、設計自由度と機能向上に貢献します。

―― 運転支援材料ソリューション

■ 柔軟伸縮電極・配線材料 DuraQ®

安全・快適な自動運転に向けて運転支援の材料や熱硬化樹脂の開発品も展示しています。その中でもメインとなるのは柔軟伸縮電極・配線材料 DuraQ®(デュラック®)です。シリコーンゴム本来の特長に高強度をプラスした高引裂きシリコーン導電性付与により柔軟で伸縮可能な電極・配線材料もラインナップしています。伸縮性と耐熱性を兼ね備えた回路材料として、伸長時にも優れた電気特性を維持します。
展示サンプルは、服に付けて動作情報を送信しその動きを計測することが可能となる製品です。
「この導電するシリコーンゴムの構造体をウェアラブル素材として提供。縫製・選択も可能でお客様のほうで衣服やリストバンドにとして加工し、ユーザーが装着していただくことでアプリと連動して心電や筋電などのデータをモニタリングできます」

  • 柔軟伸縮電極・配線材料DuraQ®
    優れた機械特性や電気特性、柔軟性を併せ持ち、伸縮性のある電極、配線材料として、ドライバーの生体情報センシングに貢献します。
柔軟伸縮電極・配線材料 DuraQ®(デュラック®)

■ 特定波長吸収シート技術

各種センシング機能の安定性・信頼性向上に貢献する特定波形の制御技術についても展示。従来のサングラスに使われている技術を活かし、ノイズをカットしながらセンシングに必要な波長だけを通すことを可能としています。「これによりセンシングカメラやライダーの前にある受け側の部分に設置することによって精度を上げることができます。

  • 特定波長吸収シート
    ADASで需要の高まる赤外線を用いたセンサ用のカバー材料です。選択波長機能を有する材料でセンシング性能を向上します。
特定波長吸収シート技術

■ 3D回路部品(LDS-MID)用 熱硬化性成形材料

センシング機器は小型化が求められるため、樹脂成形品の表面に回路を書き込むことができる3D回路部品(LDS-MID)用 熱硬化性成形材料も用意しています。
通信速度は電気よりも光の方が早いため、5Gや6G、コネクテッドの時代になると、安全性の面から考えても、通信速度はもちろん、生後反応の高速化が求められるようになります。3D回路部品(LDS-MID)用 熱硬化性成形材料は微細な3次元回路形成が可能で装置の設計自由度を高めることに寄与します。ガラス転移温度(Tg)が高く、高温環境での使用が可能。高温高湿環境での絶縁性を保持します。そして、高耐熱性があり熱膨張率が低く(低CTE)より高い信頼性を有する製品です。

3D回路部品(LDS-MID)用 熱硬化性成形材料

■ ポリマー光導波路

光導波路という技術は、次世代ハーネス(光ハーネス)構築の簡素化に貢献します。コストダウンと部品点数の削減による省スペース化を図ることができます。光配線により、より軽く、ノイズなく、沢山の情報を確実に内へいきわたらせることが可能です。スイッチングをより簡素化し、コストダウンと部品点数の削減による省スペース化を図ろうと考えています。フレキシブルなデザインやノイズレスという特徴を生かして開発品を車用途に転換し、お客様に対してPR活動を続けており、大変興味を持っていただいています。今回展示したモックは私たちと住友電工様とタイアップして作っています。

  • ポリマー光導波路
    光ハーネス(光導波路)によりカメラ・LiDAR等から得られる大容量データをECUへ高速に送り届けます。
ポリマー光導波路

―― +αのソリューション

■ 受託 分析・評価

当社グループの住べリサーチ株式会社の業務内容について紹介しています。同社は樹脂材料を中心とした機能性材料や電子材料および関連部品の各種試験・分析を受託しています。
お客様の研究開発・品質管理・トラブル対応に至るまで、評価技術を通じて、お客様の問題解決をサポートします。住友ベークライトの幅広い技術分野と知財の知識を併せ持つスタッフが、市場・特許・文献・新聞情報等を総合的に収集・解析し、お客様と共に考え、お客様の開発ストーリーに沿って深層にある課題を解決します。
当社グループが、モノづくりだけではなく、データ測定や解析も含めたトータルサポートが可能であることをア紹介しています。私たちの技術により、幅広い提案が可能になることを、これらのコーナーでは表現しています。

受託・分析・評価

―― 環境への取り組みについて

当社の環境に対する取り組みを知っていただくためのコーナーも用意しました。カーボンニュートラルやライフサイクルアセスメントがハイライトされる中、住友ベークライトとしても、自らCO2排出の削減をするとともに、お客様に対して環境負荷0、カーボンニュートラルに向けた材料を提供するという姿勢を伝えます。「来場者の興味を集めていたのが、リサイクルです。一般的には、熱可塑性樹脂はリサイクルしやすいと考えられますが、実は私たちの扱うフェノール樹脂でもリサイクル技術は確立できています」

熱硬化性樹脂に圧力と熱を加え、フェノールのポリマーの部分をリサイクルで取り出すという、ケミカルベースの手法です。静岡工場ですでにプラントを確立していますが、実証に関しては社内でも協議中です。世界初の技術となるので、実用化までいくつかの壁がありますが、材料メーカーの使命として、技術確立に取り組んでいる段階です。

「実際にお客様に提案させていただくときも、より少ないエネルギーでより長い距離を走る、つまり高機能化・高効率化による最終的なCO2リダクションをお伝えしています。この点は私たちの新しいカタログにも組み込まれている内容なので、これからよりマーケティングとヒアリングを強化していきたいと思います」

環境への取り組み
樹脂リサイクル

展示会で感じたお客様の反応

展示会で感じたお客様の反応

製品やパネル展示に加え、『ZOOM相談コーナー』を用意しました。そこにはコロナ禍にあっても、お客様とのコミュニケーションを深めたいという思いがあります。
「お客様が考えたことを実現するために何かお役に立てないか?という思いから、“お客様が想像したことを作り上げるサポート”を掲げています。その考えのもと、国内外でオープンラボという仕組みを用意。お客様と一緒にモノづくりを進めています。静岡工場には製品を展示するギャラリーがあるので、そこでお客様とともに“樹脂材料はこんなことができる”というディスカッションさせていただいています」

まずは、知っていただくきっかけづくりが重要ですし、そこからお客様とともにアイデアを出して実現していきたいと考えています。「私たちは素材メーカーなので、私たちだけですべてを実現できる訳ではありません。お客様の声を聞きながら、お役に立てるところに対してサポートをさせていただきたいと考えています」
自動車業界をターゲットとした住友ベークライトの取り組みの現在の状況を、多くの来場者様に知っていただく機会となった今回のカーエレクトロニクス技術展。引き続き、様々なミッションの成果を発信しながら、お客様と共に新しい価値を作っていければと思います。

CARTALK

インタビュー:伊藤秋廣(エーアイプロダクション)



本件に関するお問い合わせ

住友ベークライト株式会社 スマートコミュニティ市場開発本部