松田取締役にお聞きします。
今年6月に鍜治屋新社長が就任されました。新たな経営体制に対する期待や要望について、お聞かせください。
今中期経営計画では、製品構成の最適化と既存事業の収益力強化実現のために、資本効率を重視した各事業へのキャッシュアロケーションの設定と、それを踏まえた製品ポートフォリオ改革をさらに押し進める必要があります。これは創業以来70年にわたって受け継ぐ経営理念を次代につなげていくものだと感じています。新社長を中心とした経営陣の皆さんには、まずこのテーマに迅速かつひたむきに取り組んでいただきたいと思っています。外部環境の変化は起こり得るものですが、その変化に柔軟に対応し、果敢に挑戦していくことも経営の課題です。私たち社外取締役も各々が持つ知見を集め、環境変化に対する適切なアドバイスを通して、住友ベークライトの進むべき道筋を照らす存在でありたいと思っています。
2024年度の取締役会の運営や議論などを通じて、実効性の変化で感じられたことをお聞かせください。
2015年にコーポレートガバナンス・コードが策定されてから10年が経過し、この間に住友ベークライトの取締役会は大きく変化しました。特にこの間に設置された社外役員会が、今では執行部隊と社内取締役・監査役との重要なコミュニュケーションの場になっています。監査役と社外取締役の間での情報の鮮度や量の差をどのように埋めるかは悩ましい問題ですが、住友ベークライトでは社外役員会がこの課題を解決してくれていると感じています。ここ最近では社内役員で構成される経営会議における議論内容も、社外役員会で説明されて、いわゆる“経営の見える化”が進んでいることも評価できます。今後も執行部隊とのコミュニュケーションを通じ、ともに中期経営計画の実現に向け、歩みを進められればと思います。
今中期経営計画では、「戦略①:製品構成を最適化し、既存事業の収益力を強化」と定め、新たにキャッシュアロケーションを設定した上で施策を進めています。これらの取り組みの評価と今後の課題について助言をお願いいたします。
2025年度より始動した中期経営計画では、財務・非財務の両面で明確な目標が設定され、達成度が取締役の賞与評価にも連動しています。また、ステークホルダーを意識したキャッシュアロケーションも計画の方針に沿って実行され、初年度には大型の自己株式取得も実施済みです。この中期経営計画における重要な戦略の一つが、「製品構成を最適化し、既存事業の収益力を強化」であり、資本効率を重視した製品ポートフォリオ改革が進められています。住友ベークライトではこの資本効率を測る独自指標のSB-ROICを、2025年度より事業部単位の管理指標として新たに設定しました。これは着実な製品ポートフォリオ改革に向けた一歩であり、全社的な指標を事業部単位へと落とし込む過程で、いかに各事業部がこの指標を「自分ごと」として捉えるかが、今後ますます重要になります。私は社外取締役の立場から、SB-ROICが各事業部で自律的に機能するプロセスをしっかりモニターしていきたいと考えています。