研究開発分野の注力領域とイノベーション創出への取り組みとは
大西:
全社的には、製品・事業のポートフォリオを見直し、経営方針としてICT、モビリティ、ヘルスケアの三領域に注力する方向性を打ち出しています。私の役割はこうした分野においてイノベーションを起こし、新たな製品や事業を創出することです。一方で5年後、10年後の新事業創出を見据えた、新技術の探索も忘れていません。R&D企画推進部では、マッチング機能の強化や外部連携のほか、ベンチャーキャピタルへの投資も進めています。これは世界中の有望な新素材を自社の技術基盤に取り込み、独自の商品開発につなげることが狙いです。
高本:
先端材料研究所では、事業部や応用研究所からのテーマに基づいた開発と、研究所発の独自研究という二本立てで進めています。当社グループの中期目標やその先の2030年を見据えた際には、基礎研究所発のより大きなインパクトを持つ新製品やコア技術の創出が不可欠です。稲垣副社長は「ホームランを打てるような技術を育てたい」と話していましたが、それを狙って実現するには有望な種を継続的に仕込んでいく必要があります。そのために私たちも、基礎開発のポートフォリオを変化させ、全社の方向性に合致したテーマに注力していきます。環境対応の点では、モビリティ分野で使われ、廃棄時は分解しやすい「易解体性」のポリマーを開発中です。また、植物由来原料によるプラスチック開発も合弁会社と共同で進めています。
森:
情報通信材料研究所では、封止材、接着剤、ウェハー保護材、基板材料という4製品を柱に据えてきました。しかし、素材の多様化が進む半導体業界において、日々、新しい技術が生まれており、その流れを新たなビジネスにつなげていくことが必要です。そこで現在は、新商品開発プログラムや社内外の協業といったアプローチを強化しています。中でも注力しているのは、液状封止材です。これまでは固形封止材が主流でしたが、液状化でより狭小なスペースへの充填が可能になる付加価値の高い製品です。環境を意識した取り組みでは、これまでマイナス20度で保管していた材料を常温保存できるようにすることで、CO2排出とエネルギー消費の削減を目指しています。ライフサイクルアセスメント(LCA)認定制度への、研究所メンバーや工場関係者の取得意欲も高く、研究開発を後押ししています。
大西:
多くの事業を持つ当社グループでは、LCA認定者やSDGs認定製品の拡大は必須だと考えています。研究開発本部では、有望な研究テーマの全社プロジェクト化も進めており、今年度は水素製造機能膜量産準備プロジェクトチームを4月に発足させました。迅速な事業化を実現できるように支援するとともに、今後も環境対応力の向上を図っていく考えです。