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社外取締役
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社外取締役インタビュー

社外取締役から見た経営の変化

ご専門分野を生かして、この一年間、住友ベークライトの経営にどのようにかかわってこられましたか。また、経営の変化などでお気づきになられたことはありますか。

阿部 私は長年にわたって大学で研究教育にたずさわり、政府委員として科学技術政策に助言するなどの活動をしてきました。こうした経験を生かし、住友ベークライトのお役に立てるよう引き続き尽力していきたいと思っています。
ウクライナ情勢をはじめとする緊迫した国際情勢の変化により、日本の製造業はさまざまな影響を受けました。住友ベークライトも例外ではありません。今後も難しいリスクが発生すると思いますが、柔軟に対応していくことを期待します。

松田 私自身のこれまでの事業会社での経験などを生かし、中長期的なテーマについて深掘りの議論ができるよう努めてきました。たとえば、半導体関連材料部門の中国への大型投資案件では、中長期的な市場動向、地政学的なリスク、アフターコロナなどを見据えた戦略的な観点から、執行側と徹底した議論を行い、数年先の住友ベークライトの全体的な生産能力までを見極めた上で、投資の判断を行いました。目先の需要だけでなく、中長期的な視野に立って検討を重ねていくことは、経営において非常に重要です。経営の進め方に大きな変化を感じた一年でした。

永島 取締役会で発言を求められる機会も増え、開かれた雰囲気になってきていると感じています。私自身も、疑問に感じた点は忖度なしに率直にうかがうように心がけ、一つひとつ丁寧に対応していただいています。取締役会後に開催される役員連絡会では、執行役員から、それぞれ担当業務に関する工夫を凝らしたプレゼンテーションが行われており、興味深くうかがっています。執行役員の方々の中から、将来の社長や取締役が選出される可能性もありますので、指名・報酬委員会の委員として、皆さまの才能や見識に触れる良い機会と捉えています。特に今年は、女性の執行役員が新たに二名誕生し、住友ベークライトのダイバーシティの取り組みが進んでいることを実感しました。

「機能を与える」ことでプラスチックの可能性を広げる

住友ベークライトは、中期経営計画においてSDGsへの貢献を掲げ、車の燃費の向上やフードロスの改善、環境負荷の少ない製品の開発など、プラスチックに機能を与え、社会的価値を追求した事業の取り組みを行っています。このような取り組みをさらに加速する上で、強化すべきことは何だと思われますか。

松田 プラスチックと環境は、矛と盾のような関係だといえるかもしれません。それでも、プラスチックが世の中からなくなることはないと確信しています。この矛盾を解決する方法を、住友ベークライトは「プラスチックに機能を与える」という極めてわかりやすい言葉で表現しました。取引先や従業員は、この言葉の意味をよく理解していると思います。一方、顧客や株主・投資家、地域住民に対しては、そのメリットを、もっと目線を下げて、わかりやすくアピールしていく必要があると考えています。プラスチック業界をリードする企業として、こうした観点からも業界を牽引していってもらいたいです。

阿部 海洋プラスチックの問題に象徴されるように、プラスチックごみを減らすために、プラスチックそのものの生産を削減していくことは必要だと思います。しかし、ハイテク用のプラスチックは、日本の産業の競争力にかかわる最先端の部分であり、住友ベークライトの得意な分野でもあります。今、住友ベークライトがチャレンジを進めているバイオ原料の積極利用などを、ステークホルダー全体にうまく伝えられるようにもっとアピールするべきだということには同意見です。

永島 住友ベークライトのSDGsへの取り組みは、他社に比べて進んでいるという実感を強く持っています。取締役会でも真剣に議論が重ねられています。統合報告書にしても有価証券報告書にしても、非常に完成度の高い情報開示に努めていますが、社会全体に対するアナウンスという点では、確かにわかりにくいところがあるかもしれませんね。

松田 サステナビリティやSDGsが、プラスチックに機能を与えるということにどのように関係するのか。説明するのは難しいですよね。例えば、住友ベークライトの鮮度保持フィルム「P-プラス®」は、まさにプラスチックに機能を付加させたものです。食品の鮮度を長く維持することで食品ロスの削減につなげることができます。このように、一般のステークホルダーにもわかりやすい効果を持った身近な製品から、広告活動を展開していくことも必要なのではないでしょうか。

阿部 日本では大企業を中心に、環境問題への取り組みに熱心です。特に、住友ベークライトは環境問題に多面的かつ熱心に取り組んできました。諸外国の環境政策には温度差がありますが、住友ベークライトのプラスチックは植物由来の原料にシフトするなど、環境との共存を図る研究を重ねています。住友ベークライトには、海外に多数のお客さまがいますが、各国の政策はさらに複雑化することが懸念されますので、今まで以上に情報収集に努め、世界の多様性に弾力的に対応していくことが求められると考えています。

永島 石油系物質を主原料とするプラスチック製品には、環境面でのマイナスイメージがありますが、プラスチックの可能性を広げ、価値ある製品を生み出していくことで、環境問題と向き合いながら、社会に貢献することは可能であると考えています。今できることに着実に取り組み、SDGsの観点から研究開発を進めていくことで、社会に貢献できる製品を生み出していけると思います。SDGsの考え方を社内の隅々まで浸透させ、従業員一人ひとりの意識を変え、貢献意欲を高めていくことで今後の活動が加速していくと思います。

ビジョンの主役である次世代のためにできること

住友ベークライトは、「未来に夢を提供する会社」をビジョンに掲げています。その実現のために何が必要だと思いますか、またそのために、社外取締役としてどのように貢献していきたいとお考えでしょうか。

永島 住友ベークライトのセグメントは、半導体関連材料、高機能プラスチック、クオリティオブライフ関連製品の3つであり、一見まったく異なる分野の製品を扱っているように思えますが、製品の特徴や性質、顧客などで類似する部分もあります。
「One Sumibe活動」は、セグメントの垣根を越えて、住友ベークライトの広範な製品をお客さまに知っていただく非常に良い取り組みだと思います。この活動をグローバルに推進し、中期計画の主要施策である「新しいビジネスモデルへの挑戦」につなげていくことがビジョンの実現に必要になると考えており、社外取締役として積極的に評価・応援していきたいと思います。

阿部 「未来に夢を提供する会社」というビジョンは、閉塞感の強い日本社会、特に若者にとって魅力的かつ大切であり、その意義は大きいと感じています。また、このビジョンが社内に浸透し、従業員も夢を提供しているという実感がもてるようになることを期待しています。未来を担う若者や子どもたちに、住友ベークライトという会社を知ってもらい、このビジョンが認知されれば、日本の明るい未来にもつながりますので、社外取締役としても住友ベークライトの活動を後押ししていきたいと考えています。

松田 ビジョンの実現に向けて、「次世代」というテーマで取り組むことが大切だと思います。さらに高齢化が進み、未来を担う子どもたちに企業としてどんな夢を与えることができるのか。静岡工場では小学生向けのイベントを展開していますが、さらに奨学財団の創設や業界を超えた「化学教室」のようなプロジェクトなど、子どもたちの豊かな感性を触発し育むことができれば、世界に羽ばたくモノづくりのリーダーが誕生するかもしれません。
製品化のプロセスがわかりにくい化学業界だからこそ、歴史を持つ住友ベークライトの存在感を発揮した次世代への取り組みに期待しています。

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