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中期経営計画 注力施策特集 ~副社長インタビュー~

SDGsへのさらなる貢献を目指し、鍵となるDXの推進を強化
企業としての使命と責任を果たす

事業を通じて社会に貢献することを目指す当社グループでは、SDGsへの貢献をあらゆる活動の指標にしています。カーボンニュートラルへの挑戦や人に頼らない生産システムの構築など、時代が求める改革を先駆的に成し遂げ、これからの社会に最適な価値を創出していくためには、AIやIoTをはじめとするDXの推進が欠かせません。DXの推進とSDGsについての当社グループの取り組みを紹介します。

稲垣副社長

代表取締役 副社長執行役員
サステナビリティ推進委員会 副委員長
SDGs推進委員会 委員長

稲垣 昌幸

DXの推進で、社会課題の解決に向けた価値創出に弾みをつける

データ駆動型の研究開発(MI「マテリアルズ・インフォマティクス」)へ

DXの推進による最も大きな変革は、データ駆動型の研究開発へと転換を図ったことです。貴重な情報が社内に散逸することを防ぐとともに、製品開発に最大限に活用できるデータ基盤の構築に着手しました。研究者が手元のタブレットから入力した実験結果のデータを、即時に全社でシェアすることが可能になりました。2023年度中に正式運用を開始する予定です。

さらに、高度なデータ解析を容易に実行できるウェブアプリケーション群を全研究所に配布し、研究・開発の支援ツールとして利用されています。

また併せて、材料データの検索などで行う機械学習といった高度な分析を一般の研究者が自身で行えるよう、社内データ活用ツールを整備しました。社会ニーズは加速度的に進化しており、従来の常識に反するような判断が求められることもあります。その際、判断の根拠となるのが「データ」です。データ基盤の重要性を社内に浸透させるとともに、活用のすそ野を広げるMI人材の育成を進めています。

すでに多くの成果をあげており、高放熱特性を持つ原料や、しなやかで高い強度と信頼性を併せ持つ半導体封止材料の処方など、従来の実験結果を上回る高機能材料の開発につながっています。開発現場では、既存製品の特性値を変えることなく、材料の置き換えやプロセス条件の最適化により、大幅なコスト削減を達成した事例もあります。各研究所では、MIを用いた実験回数の削減にも取り組んでいます。実験条件の予測モデルをスクリーニングに活用することで約4倍の能率向上を達成したケースがあるなど、大きな手応えを感じています。

予測不能な現代に求められているのは課題解決能力の高い製品の迅速な開発です。従来の試行錯誤型の開発スタイルを改め、社内外の膨大なデータに基づく科学的なアプローチに変えることで、スピードが決め手となる材料開発を劇的に進化させることは間違いありません。データ起点の研究開発で、次世代素材に求められる高機能と環境対応の両立や、それらの製品化段階における実験効率アップを図り、市場シェアの早期獲得につなげてまいります。

モノづくりの未来像へ確かな道筋、スマート・ファクトリーを本格化

モノづくりでは、人に頼らない生産システムの構築を目指し、①データ収集/蓄積、②見える化、③オートパイロット制御の3つを柱にDXの推進を図ってきました。現在、国内5事業所、海外5拠点に導入し、計画は順調に進んでいます。

生産ラインでは、温度、圧力、流量や振動などの値を各種センサーを用いてデジタルデータ化。このデータを蓄積し、アプリケーションツールで見える化を実現しています。異常検知などを知らせる自動監視とオートパイロット制御と連動させ、品番ごとに品質管理を行っています。人に頼らないスマート・ファクトリーのさらなる進化を目指しています。

製造業では、少子化による採用人数の減少、熟練作業者の退職による技能の損失などが、先送りできない課題となっています。気候変動による自然災害の発生などをはじめ、不測の事態への備えも必要です。海外拠点を網羅した生産情報の一元化などによる、世界規模のモノづくり体制で社会活動を支えていきたいと考えています。

また、ロボティクス技術を積極的に活用し、横持ち移動など付加価値を生まない作業を自動化していく考えです。準備段階を終え、今期中の導入を見込んでいます。今後は、M&Aなどにより子会社化した海外の生産拠点にも順次展開していく方針です。異なる文化や価値観への配慮を忘れず、適切に導入をしていきます。

DX
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業務全般をIT化。プロセスを刷新し効率化と働き方改革を両立

業務改革ではRPA(Robotic Process Autometion: ロボットにより業務に自動化を図ること)を、DXの推進の主要手段と位置付け、部門ごとに開発人材の育成を図りながら効果拡大を目指してきました。2022年12月末時点で、ロボットは260体、年間削減工数は12,000時間を超える成果をあげています。また、ペーパーレス化に加え、前期よりAI-OCRの全社導入を開始しました。RPAと連携した業務の自動化を進めた結果、2022年12月末時点で年間2,000時間の削減効果が出ています。

デジタル化がもたらす効果は、単に工数削減や効率化だけにとどまりません。ミスが許されない業務での過度な緊張からの解放によるストレス軽減など、働き方改革を促す好循環をつくりだしていると実感しています。

また、特別な知識やプログラミングを必要とせず、アプリケーションが開発できるノーコードツールを、現在、全社に展開しています。システム部門に依頼することなく、各部門での簡易なシステム構築を可能にするものです。DX人材を発掘、育成する有効な手段としても注目しており、活用の拡大を図っています。

さらに並行して、自らが業務改革の主体者としての意識を持つことを促す取り組みを行っています。ワーキンググループを設置し、部門ごとに目指す姿を策定し、プロセスを見直すことで、そこから浮かびあがったテーマをもとに、効率化したい業務をどのデジタル技術に置き換えることが最適か自分たちで検討するというものです。業務効率化に対し会社が設定した目標の遂行と同時に、従業員が自らの意思で改善に取り組む姿勢こそが重要だと考えています。

  • AI-OCR:AI技術を取り入れた光学式文字認識機能

モノづくりのマインドを継承したデータサイエンティストの育成に全力

データ起点の製品開発を目指し、研究所に限定せず社内の広範な部署へのデータサイエンティストの配置を計画しています。一年におよぶ社内教育を、通算で3期、累計50名超の従業員を対象に実施しました。2023年度中にデータサイエンティスト社内認定制度を設置し、2025年度末には技術系従業員の2割を認定者とすることを目標にしています。

データ駆動型社会のめざましい進展に対応するには、優れたMI人材の確保が急務といえます。当社グループは、「プラスチックのパイオニア」として事業を開始して以来、先進的な技術で業界をリードし続けてきました。住友ベークライトならではのこうしたモノづくりへの誇りと、高度なスキルを兼ね備えた人材を社内で育成することを目的に、若手を中心としたプロジェクトを結成しました。企画から、レベル別に実施される教育プログラムにかかわるすべての運営をメンバーが行っています。若きデータサイエンティストの活躍は、将来にわたる発展の源泉になると期待を寄せています。豊かな経験に根差したベテランの知恵が脇を固める盤石な体制で、抜群のシェアを誇るグローバル市場での存在感をさらに高めてまいります。

強みを生かしたSDGsへの貢献で、企業価値を向上

SDGsへの貢献で、グローバル企業の責任と使命を果たす

当社グループでは、SDGsへの取り組みを2018年にスタートして以来、体制強化に努めてきました。活動のさらなる進展を図り、2023年4月にサステナビリティ推進部を発足し、これまで以上にSDGsへの貢献に尽力していく決意です。

SDGsの17の目標と169の具体的なターゲットの中で、当初は、事業領域の強みが生かせる6つの目標を重点領域目標として定めていましたが、「13.気候変動に具体的な対策を」を新たに加えた「6+1」に照準を合わせて事業活動を展開しています。カーボンニュートラルを含め、気候変動への対策にはイノベーションが不可欠です。製品開発を通じて貢献できる機会は今後も増大すると考えています。複雑に多様化する社会の要請に即時に対応できる機能を備えた、製品ラインナップの一層の拡充を図ってまいります。

当社グループでは、「SDGs貢献製品・貢献技術・貢献活動」の認定を進めています。2022年度は、新たに29製品、1技術が認定され、累計で148製品、2技術、2活動となりました。「SDGs貢献製品」については、売上収益比率を2023年度で50%以上、2030年度には70%以上とすることを長期目標として掲げています。2022年度の実績は、54.5%となり、2023年度までの目標を前倒しで達成することができました。

SDGs貢献製品の開発・認定は、今後の事業展開の上でも重要な意味を持つものです。ターゲットが適切に選択されていること、優位性を説明する根拠が、実データや公開情報に基づいて客観的な数値で示されていることが判定基準になります。要件を満たした製品だけが、社内の各委員会の承認を経て認定されるしくみになっています。2022年度に認定された製品の中には、石油由来樹脂に遜色のない高強度・高耐熱のバイオマス由来のリグニンを活用した変性フェノール樹脂や、トウモロコシの芯などから抽出した成分を原料とするフラン樹脂などのバイオベース材料が含まいます。

また、全従業員を対象としたe-ラーニングの実施や、社内の随所にSDGsのアイコンを掲出するなど、意識の醸成にも努めています。自身の仕事や行動が、どの目標に該当するのかを常にあてはめて考えることで、主体者としての自覚を育てる啓蒙活動に力を入れていく考えです。

さらに、SDGsへの取り組みの一環として特に重視しているのがガバナンスの強化です。事業をグローバルに展開する企業として、児童労働や強制労働などの不当な手段で得られた原材料は使用しないなど、社会的責任に基づく調達を実施しています。世界の共通の願いであるSDGsと心を一つに、企業としての使命と責任を果たしてまいります。

●代表的なSDGs貢献製品

モーター磁石固定用封止材、リグニン変性フェノール樹脂、バイオマス樹脂を用いた医薬品包装用シート、ダックビル胆管ステント

環境対応の明確な数値化で、社会にポジティブ・インパクトを

現在、取り組みを進めている「環境ビジョン2050(ネットゼロ)」では、2030目標「CO2排出量46%以上削減(2013年度比)」、2050目標「カーボンニュートラルに挑戦」を設定しています。太陽光発電パネルの導入や、再生可能エネルギー由来の電力の採用拡大により、CO2排出量の削減に努めています。2022年度は、国内で64.7%、海外も含めると39.3%のCO2削減(国内・海外ともに2013年度比)を実現し、国内では目標を前倒しで達成することができました。

また、当社グループでは、2035年までの全社環境開発ロードマップを策定し、①資源、②創エネルギー/省エネルギー、③長寿命、④3R、⑤環境対策の5分野での活動を推進しています。①資源は、バイオマス原料をはじめとする非石油由来樹脂の開発や、石化資源に依存しない主力製品のラインナップに努めています。②創エネルギー/省エネルギーは、軽量化、熱マネジメント材料などの技術革新を進めています。③長寿命は、耐久性や信頼性の向上で、製品のロングライフ化を図っています。④3R(リサイクル、リデュース、リユース)は、資源循環社会に貢献できる技術の早期確立を目指しています。⑤環境対策は、CO2の物質変換や排出削減、主力製品の環境負荷物質のフリー化などに総力をあげています。

環境という視点で見ると、プラスチックにネガティブなイメージを抱く人も少なくありません。こうした状況からの脱却を図り、社会でポジティブな存在感を発揮していくには、具体的で明快な「数値」により環境性能を示していくことが重要だと考えています。LCA(ライフサイクルアセスメント)についても、2024年度中に全製品に適用していく予定です。

安全で安心、快適な暮らしを支える価値の追求や、独自のリサイクル技術を駆使した3R展開などを通じて、社会に欠かせないプラスチックの価値を正しく理解してもらえるよう、さらに努力を重ねていきたいと思います。

SDGs貢献製品・貢献技術・貢献活動認定の流れ・実績・目標

住友ベークライトは2018年度より、製品・技術・活動のうち、SDGsに貢献するものをSDGs貢献製品・貢献技術・貢献活動として認定しています。

【認定対象】

下記の(1)~(8)の認定対象を一つ以上満たすものを対象とする。

当社重点領域のSDGs目標
(1) 目標3:健康と福祉の促進に資するもの
(2) 目標7:エネルギー効率の改善、新エネルギー(蓄エネルギー含む)の実現に資するもの
(3) 目標8:働きがいと経済成長に資するもの
(4) 目標9:環境に配慮した技術の拡大、産業と技術革新の基盤に資するもの
(5) 目標12:廃棄物(食料を含む)、有害物質の削減や環境負荷低減に資するもの、リサイクル、省資源化の実現に資するもの
(6) 目標13:気候変動への対策、気候災害・自然災害への応能力の強化に資するもの
(7) 目標14:海洋・海洋資源の保全・利用、海洋汚染の防止・削減に資するもの
重点領域以外のSDGs目標
(8) 上記の目標3、7、8、9、12、13、14以外のSDGs17目標のうち、一つ以上の目標達成への貢献に資するもの

【2022年度実績】

売上収益 1,552億円
売上収益比率 54.5

【目標】

2030年度売上収益比率 70%以上

【認定の流れ】

審査項目と判定基準

  • 貢献についての具体的な説明:実データもしくは公開情報に基づき客観的に数値により示されていること
  • 貢献するSDGs目標:適切に選択されていること

製品によって生じるネガティブ・インパクトも議論の上、認定しています。

認定の流れ
SDGs貢献製品・貢献技術の売上収益(連結)

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