2023/1 【CARTALK】注目を集める住友ベークライトの産業機能性材料群(後編) | 住友ベークライト株式会社

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注目を集める住友ベークライトの産業機能性材料群(後編)

注目を集める住友ベークライトの産業機能性材料群(後編)

ご紹介

ご紹介(産機材)

本格的に、電気自動車の時代を迎えつつある中、住友ベークライトの産業機能性材料が注目を集めています。
今回は、産業機能性材料研究所 研究部、および産業機能性材料営業本部 機能性材料営業部のキーマンにインタビューの後編をお届けします。
産業機能性材料の自動車への適用の現状とこれからの展望について、先日開催されたCEATEC2022での様子も交えてご紹介します。


産業機能性材料の自動車業界への適用

―― 前編で紹介した製品の自動車への適用の現状と今後目指すところについてお聞かせください。


❚ サンロイドエコシート®ポリカ

阿部 世の中の動向として、電気自動車の市場拡大が進んでいる中、数だけではなく質の向上も強く求められています。
具体的な課題として「1回の充電で長く走らせたい」「ガソリンは給油が5分で済むが、電気では充電に1時間かかる時間を短縮していきたい」などがあげられます。
そうした声に対応するための技術として高電圧化が求められています。その高電圧化対応のひとつのキーワードとして、“耐トラッキング性”があります。今こそ、当社が有する耐トラッキング性600V以上(CTI ランク0)という最高ランクの製品が世の中のニーズに合致するものと確信しております。

サンロイドエコシート®ポリカ

産業機能性材料営業本部 機能性材料営業部 左:森田、右:森田

産業機能性材料営業本部 機能性材料営業部
左:阿部正和、右:森田和成


 
森田 絶縁用ノンハロ難燃ポリカーボネートフィルムについては、当社は他社に先駆けて上市しました。後発で、他社も同様の“ノンハロ・難燃”という製品を上市しています。当社はその中で、耐トラッキング性600V以上(CTI ランク0)というグレードを実現。日本の家電メーカーを中心に安全性をアピールしましたが、開発当時はまだその要求がありませんでした。
そして近年、自動車業界でのOEM、Tier1で“ノンハロ・難燃”だけでなく“耐トラッキング”に注目が集まるようになりました。インバーター・コンバーターなどの小型化、薄型化により、絶縁材の使用が増え、高電圧化による急速充電などの性能アップが進むにつれ、従来の設計だと、様々な弊害が生じるようになります。そこに当社製品を使用すれば、その弊害を取り除くことができるという認識が広がってきています。電気自動車の開発はさらに進んでおり、高電圧化、小型化という過程で必ず必要になる材料として引き続き当社製品の優位性をPRしているところです。

―― 住友ベークライトには“高機能のものを作り続けていけば将来的にはどこかの業界で花開く”という考え方があり、現在の市場が求めるものだけを作っているわけではないということですね。

森田 そうです。業界に先駆けて上市したこの絶縁用ノンハロ難燃ポリカーボネートフィルムがまさにそうでした。当初は何年もの間、まったく見向きもされませんでしたが、その後、環境の変化と共に多くの需要が生まれました。
耐トラッキング性を有した製品についても同様です。電気自動車業界では、大電流化や小型化の流れは止まることはなく、現在の400Vから更に高電圧の開発が進んでおり、パワーモジュールもシリコンからSIC、GaNと益々、半導体パワーモジュールも進化して、スイッチングの速度もさらに上がっていきます。
そこで予測される、電圧が安定しないという課題が発生した時に、この“耐トラッキング性”という機能が求められると確信しており、お客様への提案を始めています。

森田

❚ 特定波長制御技術(超多層)



産業機能性材料研究所 研究部
高橋 克彰

兼原 特定波長制御技術は、LiDARなどADASが最近、車に活用され始めているため、必要な波長のノイズを少なく受信する部材への展開も考えられます。

高橋 特定波長制御技術を用いた超多層選択波長反射シートに関して、自動車向けとして考えているのは、センサーカバーやエンブレムのカバーへの適用です。金属を使わずに光を反射コントロールできることが強みなので、ナノメータオーダーの厚み制御、ポリカーボネート樹脂をベースに設計することで耐熱性や耐候性、低歪みを実現します。また金属を使わないということで、電磁波の透過性があります。
既存のエンブレムでは特殊な金属を使用し、ミリ波を透過するような金属の蒸着を行っているものがあります。当社の特定波長制御技術を活用すれば、特殊な材料を使用せずに簡便なプロセスで金属調ではあるものの電磁波を透過できる材料と期待を持って開発を進めてきました。
このようなアイディアは、市場のニーズから生まれたものではなく、研究からの用途提案です。我々の“面白いね”という感覚的なところから生まれたものですが、波長をプロセスで変更できるところが強みで、お客様の求める色目や波長域をコントロールできます。次の段階としてはお客様ニーズに合わせた提案を行っていく予定です。

❚ 低反射ポリカーボネートシート

草野 低反射ポリカーボネートシートについては、現在、量産体制を構築している段階です。表面を微細加工し、モスアイ構造形成することで、反射を抑制するという性能で、新しい用途に適用できないかと考えていました。その一環として、車載用として用途開発をしている段階です。

兼原 現在は反射が少なく、透過率が向上する特性と耐候性を活かしてセンサーカバーとしてはもちろん、ディスプレイ周りでの反射抑制などを考えております。

森田 反射が少ないことは、液晶ディスプレイでは、太陽光等の外からの光は乱反射が少なく、液晶からの光は、ロスなく外側へ伝わり、液晶がクリアに見えるということを意味します。現状使われている他社製品は表面の触れる箇所に使えないという制約があり、製品の内側の手が触れない部分にのみ使用されています。これに対し当社の製品は触れても微細形状が保たれる材質のため表面にも使えます。車の中に液晶画面が増えてきており、電気自動車などのディスプレイ周りでの用途が広がってくると考えると、まさに自動車の進化に対する希望は膨らむばかりです。

兼原 お客様の声も反映させながら製品化していく必要があるので、この技術をベースに営業と連携をとって、つなげていければと思います。



産業機能性材料研究所 研究部
草野大樹

産業機能性材料研究所 研究部
兼原克樹

CEATECに出展した手応え

―― 今回CEATECに出展されたということですが、どのような反響がありましたか。


阿部 特定波長制御技術(超多層)では、波長をコントロールすることで、樹脂での金属調を実現し、「LiDAR周りの開発に適用できるか見てみたい」という声も寄せられました。これらの声を含め、我々の提案は、方向性として間違いないと確信しました。
低反射ポリカーボネートシート(モスアイ)については、サンプルを展示し、実際に見ていただいて、反射が少ないことと、他社と異なり、触れても微細形状が保たれることに対して一定の評価をいただけました。その一方で、一度、このモスアイ構造の中に油や汚れがついて入ってしまうと取りづらいというモスアイの共通の課題について懸念の声がありました。その課題に対応できたら、さらに良い製品に進化するのではないかと感じています。

森田 手応えは感じました。コロナの影響でアテンドも人数を絞って参加しましたが、それでは全然人手が足りなく、応援でスタッフを追加しました。出展期間の4日間を想定して準備したカタログが、初日で足りなくなることが明らかになり追加発注したほどです。

阿部 用意したカタログも、すべてはけました。最後は少し、出し惜しみをしながら調整してお渡ししました。

今後の展望

―― 今後の展望をお聞かせください。

阿部 先ほど、製品の小型化という話がありましたが、住友ベークライト全体で樹脂が金属に代替していくことで自動車全体の軽量化に貢献しうる製品が多数あるので、これまで以上に市場を広げていける可能性を秘めていると感じています。今まで以上に全社一丸となってお客様をマーケティングしていき、しっかりと市場の動向を捉えながら対応していきたいと思っています。また、私はこのメルマガを発行している自動車UC広報チームに最近参加したのですが、その中で自分が考えていたよりも市場は広いと感じました。今までは自分の部署の製品の絶縁シート等を電源やセンサー周りでどのように使ってもらうかということしか考えられていませんでしたが、会社として自動車全体に対してアプローチできるのだと実感しているところです。

森田 ここ数年、事業部間を横串でつなぐOne Sumibe活動を通して他部門の製品を学ぶ機会も増えましたが、私と阿部の所属する、機能性材料営業部が扱う製品は当社の他事業部と業界がとても近いと実感しております。回路材料や半導体関連材料、その周辺で使用される絶縁材など、それらの商品を幅広く知っているとお客様との会話が弾んだりしますし、事業部を超えてお互いの商品を紹介し合ったりもできますので、違った観点でのアクションが可能となります。自動車という市場を切口として集まる全社横断型のUCに参加していますと、横の繋がりも段々と増えていきます。全社、他部門協力し、全社製品での対応を進めていきます。
 

―― 自動車業界に力を入れて、ビジネスの新しい可能性や柱を育てよう思いがあるのでしょうか。

森田 そうですね。他の事業部に比べて私たちの部門では汎用製品の扱いが多く、代理店を通じ価格などの条件から選定されることが多いのですが、自動車業界は、そうではなく、まさにメーカーの仕事として、材料の開発も営業も、当社の特徴を活かして展開できる市場であると希望を持っています。
自動車業界は、まさに「100年に一度」と言われる転換期を迎えています。電気自動車、自動運転が普及すれば、様々な材料が必要になります。自動車メーカー側も材料メーカーも開発できる要素がたくさんあると思います。そこを一つの柱にしていくべく中期計画を立てている段階です。

インタビュー:伊藤秋廣(エーアイプロダクション)