取締役 常務執行役員  平井 俊也

財務経理役員メッセージ

MESSAGE FROM
FINANCE AND ACCOUNTING OFFICER

製品ポートフォリオの変革と
資本の最適化を推進し、
持続的な企業価値の向上へ

取締役 常務執行役員平井 俊也

2024年度の業績の振り返り

2024年度は当社グループにとって長年の目標であった売上収益3,000億円、事業利益300億円を達成し、過去最高の業績を収めました。半導体関連材料は、中国国内の旺盛な需要に牽引され、堅調に推移しました。クオリティオブライフ関連製品では、電子部品・半導体用フィルムの中国・ASEAN地域への拡販が進むなど、全体的に好調な伸びを示しました。
一方、高機能プラスチックはアジアでは堅調でしたが、欧米の自動車用途の低迷など、厳しい事業環境でした。特に北米のフェノール関連事業は、競争環境の激化もあり減損損失を計上しました。この影響で、営業利益と当期利益は前年度比でマイナスとなりました。しかしながら、生産拠点の統合や最新鋭設備の稼働、不採算製品の整理、新製品の実績化など、収益性向上のための構造改革を着実に進めた一年でもありました。

2024年度実績

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2023年度実績 2024年度実績 増 減
売上収益 2,873億円 3,043億円 6.1%
事業利益 275億円 308億円 12.3%
営業利益 272億円 248億円 -8.9%
親会社の所有者に
帰属する当期利益
218億円 193億円 -11.7%
ROE 7.8% 6.5%

2025年度の財務目標

2024年度は200億円の自己株式取得を実施したものの、当期利益が減少したため、ROEは6.5%に低下しました。2025年度は円高の進行や相互関税による自動車市況の停滞など、不透明な状況もありますが、好調が続く中国半導体市場や製品ポートフォリオの見直しにより、売上収益3,100億円、事業利益325億円、営業利益310億円、当期利益235億円と、対前年度増収増益、過去最高益更新を目指します。ROEもそれに伴い8%に改善する見込みで、本中期経営計画最終年度である2026年度の9%、そして2030年度の目標値である10%達成に向け、事業成長と資本の最適化を進めてまいります。
株主還元については、本中期経営計画期間中に300億円を計画しており、配当性向40%を目安に、安定的、継続的な配当をしていく方針です。

売上収益・事業利益の推移

売上収益・事業利益の推移

ROEの推移

ROEの推移

キャッシュ・アロケーションの実績と見通し

本中期経営計画で掲げた設備投資500億円、成長投資200億円は、計画どおり順調に進捗しています。成長投資では、データドリブン経営の実現に向け、全社基幹システムの統合を進めています。また、研究開発においては、BMI(Brain Machine Interface)事業化プロジェクトチームや水素製造機能膜量産準備プロジェクトチームなど、将来を見据えた新規プロジェクトの活動にも力を入れています。
戦略的投資では、ベンチャーキャピタルへの投資や東北大学との共創研究所の設立など外部との協業にも積極的に取り組んでいます。M&Aに関しては、注力分野である半導体関連やヘルスケアを中心にさまざまな案件を検討しています。これまでと異なる発想やDNAを持つ企業との融合は、当社グループにとって大きなチャンスになるはずです。今後も事業ポートフォリオ変革に資する案件の探索を続けていきます。

「資本コスト」を踏まえて経営資源を配分(2024-26年度)

キャッシュアロケーション 用途別資金使途見込み
設備投資500億円 既存事業の収益力強化(中期戦略①)・顧客への安定供給に資する設備投資をタイムリーに実行
成長投資200億円 新商品/新ソリューション創出(中期戦略②)に向けた研究開発、DX、GX対応を推進
戦略的投資500億円 有望案件発掘に向けた知の探索、オープンイノベーション推進、および事業ポートフォリオ改革に資する戦略的M&Aを実行
株主還元300億円 〈株主還元方針〉
“安定的かつ継続的に利益を還元する”
配当性向:40%程度を目指す(従来目安30%以上から変更

株主・投資家との対話

株主・投資家との対話を重視し、積極的なコミュニケーションを通じて、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指しています。IR面談件数は年々増加しており、2024年度は年間300件を超え、そのうち10%以上で取締役が対応しました。コミュニケーション機会の創出にも力を入れており、2024年5月には、主要なセルサイドアナリスト、バイサイド機関投資家を対象とした中期経営計画説明スモールミーティング、12月には主要なセルサイドアナリスト向けのスモールミーティングを開催しました。
さらに、2025年からは、株主の皆さまの声を長期的な視点での会社運営により反映させるため、新たにSR(Shareholder Relations)活動を開始しました。今後も、事業説明会などを通じて、皆さまとの対話機会を拡大していきます。
株主・投資家の皆さまからいただいた貴重なご意見は、取締役会で共有し、持続的な成長に向けた施策に活かしてまいります。

キャッシュフローの状況

キャッシュフローの状況

株価の推移

株価の推移

EPSの推移

EPSの推移

PBRの推移

PBRの推移

株主還元の強化

当社グループは、企業価値の持続的な向上と株主への利益還元を重要視しています。2024年度はキャッシュ状況を踏まえ200億円の自己株式取得を実施し、バランスシートの適正化と株主還元の拡充を図りました。当期利益が前年度比マイナスとなりましたが、創立70周年記念配当5円を含む年間20円の増配を実施した結果、配当性向は46%となりました。2025年度は年間10円の増配を予定しており、配当性向は目安としている40%に近い39%となる見込みです。
さらに、これまで実質的に累進配当を行ってきた当社グループの安定的かつ継続的に利益を還元するという方針を明確にするために、当期利益に左右されない株主資本配当率(DOE)などの導入も検討していきたいと考えています。今後も、資金需要のバランス、投資の実行状況、今後の計画などを総合的に勘案し、機動的な判断に基づいた安定的な株主還元を継続してまいります。

配当金、配当性向(連結)

配当金、配当性向(連結)

※1: 2024年4月1日を効力発生日として、普通株式1株につき2株の割合で株式分割を行っております。上記の配当金(円/株)は、2020年度の期初に当該株式分割が行われたと仮定し、算出しています。

※2: 創立70周年(2025年3月1日)記念配当5円を含む。

投下資本効率の向上策

「SB-ROIC」の活用

当社グループは、事業単位での投下資本効率性を可視化するため、独自の指標「SB-ROIC」を2020年度より導入しています。一般的なROICは、「税引後営業利益÷投下資本(借入金+株主資本)」で算出されますが、借入金や株主資本を各事業単位に分解することは難しいため、事業単位別での算出は困難でした。一方で、「SB-ROIC」は、分子を「事業利益」とし、分母の投下事業資本も事業運営に使用される投資額である「売掛債権+棚卸資産+固定資産+保有株式-仕入債務」とすることで、事業単位で投下資本効率を評価できるようにしました。「SB-ROIC」ツリーを用いることで、事業別・会社別単位での収益性と投資効率の評価・管理が可能となり、グループ全体で資本コストへの意識を高めていきます。

SB-ROIC向上のための取り組み

今後の取り組み

「SB-ROIC」の運用開始から4年が経過し、各事業の投下資本効率性の実態把握と分析が完了しました。2025年度は、資本コストを一層意識した経営を実現するため、事業別に「SB-ROIC」の目標を設定し、その達成に向けた管理の取り組みを本格化しています。事業部門では、事業利益達成の取り組みに加え、債権債務・棚卸資産の管理強化、固定資産の活用に取り組みます。また、コーポレート部門では、全社資産のスリム化、従業員の意識向上、指標精度の向上に取り組みます。
これらの施策を通して、全社の投下資本効率性を高め、投資効率性の高い事業への資源配分を最適化することで、「SB-ROIC」、ひいては財務目標として掲げる「ROE」のさらなる向上につなげてまいります。

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