4月のP-プラス青果物 特別編【スペシャルインタビュー】 | 住友ベークライト株式会社

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特別編【スペシャルインタビュー】

P-プラスは今年で発売30年目を迎えます。

発売当初から、P-プラスは鮮度保持フィルムを商品として提供するだけでなく、このフィルムを使っていただくことで生じるメリットや、現在あるデメリットの克服という“うれしさ”を様々な形で提案・提供してまいりました。今回は営業を代表してフィルム・シート営業本部P-プラス・食品包装営業部より、P-プラスグループマネージャーの峰島と研究部門の評価CSセンター長の溝添が、P-プラスのこれまでの歩みと今後について語り合った対談記事を掲載いたします。


P-プラスは日本での発売から30年を迎えるそうですね。

溝添

はい、P-プラスは当時、ヨーロッパで先行していた「MA(Modified Atmosphere)包装」という鮮度保持技術を日本にいち早く取り入れて応用開発した製品です。P-プラスは袋内の酸素量を調整し、青果の呼吸数を抑制することで栄養源の消費を抑え鮮度を保つフィルムとして誕生しました。以来、当社独自に改良を加えながら、実証データを蓄積。今では、あらゆる青果物の性質はもちろん、流通過程や店舗の保存方法、陳列状態に最適なかたちにカスタマイズできるノウハウを有するに至っています。

  • 溝添 孝陽
    FS営業本部 P-プラス・食品包装営業部 評価CSセンター長

どのような機能を持ったフィルムが開発されてきたのでしょうか。

  • 峰島 海
    FS営業本部 P-プラス・食品包装営業部 P-プラスグループマネージャー

峰島

例えば、「結露防止フィルム」は、青果物から発生した水分を袋外に排出するもので、袋内部につく水滴を減らす効果があります。また、袋内の湿度が低下する事でカビの増殖を抑制するという二次効果もあります。

他にも機能性を有する製品があります。こちらの「防カビフィルム」はフィルム自体に機能を持たせ、カビの増殖を抑えます。

溝添

抗菌フィルムや防カビフィルムと呼ばれるものは世の中にたくさんあります。お弁当の上に乗せるような接触タイプのフィルムが思い浮かぶかと思います。それらは食品に接触している部分で効果を発揮します。

当社の「防カビフィルム」は“揮発型”と呼ばれるタイプのもので、フィルムに包まれた空間の中ではカビの増殖を抑制する成分が充満。接触していない部分であっても、カビが生えにくい状態にしています。主に農産地において、青果物を長く貯蔵するような場合や海外へ輸入する青果にご利用いただいています。

現在は、従来の穴加工を施した「MA包装フィルム」と、新たにラインナップに加わった「結露防止フィルム」「防カビフィルム」という3つの製品を掛け合わせながら、お客様のニーズに応えることが可能となっています。

また、同じ青果物でも冷蔵庫に保管しているものと、店頭の平台の上で販売するものでは温度管理が変わってきますし、もちろん流通過程や店内の温度もまちまちです。お客様によっては、産地でいったん貯蔵してから出荷するケースもあります。それぞれに違うケースやニーズに応えるために、穴の開け方を変えたり、フィルムを選択、カスタマイズして提案するのが、P-プラスシステムです。


単にフィルムのを販売するだけでなく「システム」を提案していくということですか?

峰島

はい。すなわちモノを売ることに限らず、その周辺のコトを提案していく感覚です。単純に、鮮度保持フィルムを売っているのではなく、日本の農業全体を当社なりにサポートしたいと考えています。例えば、袋の中に収まっている青果物の魅力を引き立たせるためにデザイン性にも考慮。スーパーの売場を刷新する際には、当社のデザイナーが先方のバイヤーさんの意向を汲みながら、売場デザインをお手伝いしました。

また、生産者と市場、小売店といったあらゆるチャネルとのコミュニケーションの中で、関係者の皆さんにとっての新たなビジネスチャンスを創出することもあります。例えば、関西エリアのスーパーが、東北の枝豆を欲しいといっても、それまでは地域的な問題からなかなか産地開発ができない状況にありました。こういった場合は、私たちの産地ネットワークを活用してマッチングを実現してきました。産地、スーパーはもちろん、その輸送には時間がかかるためP-プラスをご採用いただくことで、三者の間にWin-Win-Winのメリットが生じます。

こういったネットワークと知見を共有することは、日頃からお世話になっている農業関係者様にとって価値あるモノになるのではないかと考え、1月末に初めての試みとして、東京で、P-プラスご採用いただいているお客様を対象としたプライベートセミナーを開催いたしました。これは当社がお客様の困っていることを解決できるパートナーであることを“見て・知って・理解いただく”ための企画です。

P-プラス導入のメリットをご紹介すること同時に、本セミナーを生産地、市場、量販の川上~川下までのお客様の出会いの場としてご活用いただけるようお客様同士の架け橋となるべく営業部一丸となって取り組みました。当日は「P-プラスのような武器があることで、拡販につながっている」という声も聞かれ、大変ありがたく感じました。

SDGsにも積極的に取り組んでいますね。

溝添

はい、住友ベークライトグループ全体でSDGsに沿った経営計画をたてて積極的に取り組んでいます。特に事業と関連の深い5つの目標と、プラスチックを製造するメーカーである以上、避けては通れない海洋プラスチック問題に焦点をあてています。プラスチックは最近、環境的にネガティブにとらえられる傾向があります。しかし、プラスチックだから実現できることがあることを伝えるという使命もあります。例えば、自動車の今まで金属が使われていた部品を樹脂化することで車の軽量化の一助となり、ひいては低燃費実現、資源利用の効率化に貢献しています。

また、私たちP-プラス・食品包装営業部では「食品ロスの削減」というSDGsの複数の目標にかかわる問題に対して重点的に取り組んでいます。現代が抱える問題解決にはプラスチックでなければできないこともたくさんあると思っています。P-プラスも、P-プラスにしかできないことがもちろんあると思っています。

SDGsの多様な目標の中には今ある産業のイノベーションや、新たなビジネスの創出といった課題もあります。私たちの営業部でも、マーケット全体を広く見据えたことで、産地と市場と量販を繋げた新たなニーズが見え、一気通貫でメリットを提供することができました。これは新たなビジネスの創出につながります。またP-プラスを使用していただくことで、鮮度保持期間が長く成れば、結果、食品ロスの削減にも繋がり、その取り組みに新たな価値が生まれます。P-プラスもプラスチックではありますが、野菜の鮮度を維持するという機能面以外でも社会貢献していることを、しっかりお伝えしたいですね。

峰島

スーパーでは、売り場の方が人手不足によって、細かな鮮度管理をするのが難しいという声も聞かれます。先日のセミナーでも、人手不足を資材でカバーしているというお客様からのお話がありました。こういった悩みを持つお客様にP-プラスを使っていただけば、人手不足という悩みを解消する一助になるだけでなく、そこから派生する食品ロスの低減に繋がるとも思っています。私たちは、このように時代にマッチした価値を創造していくために、P-プラスの使い方を発信していく必要があるのではないかと考えています。

溝添

機能以外の部分でも環境対応を進めています。プラスチックの量を減らすために薄肉化をはかったり、リサイクルや紙との複合化、生分解や植物由来といった5つのテーマで開発を進めています。紙化に関しては、プラスチックと紙を複合。フィルムを薄くして紙と複合化しています。環境配慮型プラスチック材料は紙が51%以上になれば一般ごみとして処分できます。またフィルム自体も生分解や植物由来の物質を混ぜることによって、燃やしたときに発生するCO2を削減することができます。

とにかく、今ある有益な機能を無くして環境問題に対応しても意味がありません。機能を保持しながらも環境に対応していく、その両立が重要です。

現在、開発中のフィルムをご紹介ください。

溝添

細菌の増殖を抑制する「抗菌フィルム」を開発しています。主な用途としてカット野菜を想定。カット野菜は加工品なので、袋内部で細菌がどんどん増殖していくのですが、それを抑制することで、厳しく設定される賞味期限を伸ばすことができます。これはいわゆる店舗での棚もちを良くします。また、食品包装一般に使用できる「バリアスキンパック」は主に肉類の保存に使用されるものです。精肉であれば、一般のトレーが賞味期限1~2日であることに比べ、2週間ほど鮮度を保つことができます。欧米諸外国ではすでに活用されていますが、特にアメリカは、広い国土ゆえに輸送時間が長く、鮮度劣化リスクが大きいことから、収穫直後から販売店の売り場までコールドチェーンがいち早く確立されており歴史も長い、鮮度保持の先進国です。

峰島 今後は、これらの豊富なラインナップを提案しながら、野菜が長持ちする、環境にやさしいだけでなく、“おいしさ”を追求し、『おいしさの見える化』を図りたいと考えています。これまでの産地と小売、ひいては食卓においしい青果を届けるための“橋渡し役”に加えて、“食”という産業のメインストリームで、皆様に新しい価値を提供していければと思います。