文字サイズ

三協立山【植物工場の野菜】

ご紹介

今月ご紹介するのは、三協立山株式会社が植物工場で生産する野菜です。

富山県高岡市に本社を構える同社は商業・住宅用建材やアルミやマグネシウム合金などの製品を手がける企業。そんな同社が「ものづくりのノウハウ 」を活かして地域の農業に貢献したいという思いで取り組む植物工場「ツインリーフ・ファクトリー」。現在はレタスなどの葉物野菜を中心に、同社のシンボルマーク『ツインリーフ』をブランド名として中京圏を中心に販売しています。

植物工場の野菜は、栽培環境から“長持ちして当たり前”というイメージの強いなか、鮮度を保持し、その信頼性を担保する為にP-プラスを採用していただいています。



地場農業に貢献したいという思いからはじめた植物工場

富山県を中心に建材、アルミ素材、商業施設向け製品など、幅広い用途で使用される建材や金属加工品を製造・販売する三協立山株式会社。同社の高岡工場内で、植物工場事業化プロジェクトが立ち上がった経緯について、同社技術統括室の大川幸夫部長はこのように語ります。

「当社の地場である富山は全国有数の稲作地帯である一方、野菜の生産が極めて少ない県。つい最近まで、野菜の生産額が47都道府県中47位という状況にありました」

世の中で米離れが進行しつつあるという産業構造の変化を危惧。何らかの貢献ができないものかと考えていたといいます。

元々、当社では植物工場で使用するラック類の製造販売を行っていました。農業技術の革新を推し進めることで、地域農業の構造改革の一助になれればという思いと、ラックのみならず、栽培ノウハウを含めたより良い栽培設備を提供できないものかという構想を合わせて、植物工場プロジェクトを立案。事業化に向けた検証をスタートさせました」

もちろん、野菜作りのノウハウを持ち合わせていなかったため、当初は失敗続きだったといいます。ところが一般的な農業とは違って天候に左右されることがないため、トライアンドエラーを繰り返しながら検証を重ねることで安定的な生産が可能に。現在では、葉物野菜を中心に1日100Kgまでの生産対応が可能になり同社のシンボルマーク『ツインリーフ』をブランド名として中京圏を中心に販売しています。

栽培品目はフリルアイス・ハンサムグリーン・ロメインレタス・サンチュ・サニーレタスと多様。当初は社内食堂などに提供しノウハウを蓄積してきたが、栽培可能品種もレタス類やサンチュなどを始め、ほうれんそう、ハーブなど20種類まで増えました。「お客様のオーダーにお応えする受注生産方式にて生産を行っているため、現在はフリルレタスとオークリーフレタスといった2種類のリーフレタスを栽培。過去にはスイスチャードやわさび菜を生産した実績もあります」

工場で野菜を生産することで生じるメリットはいくつもあるといいます。例えば、生産品種の切り替えがスムーズに行えるので、お客様の要望に合わせて、すぐに生産体制を整えることが可能なのだとか。

「さらに、野菜の食味をコントロールすることが可能です。フリルレタスの場合、従来品に比べてパリパリした食感が際だっていますし、紫外線のない環境で育てるため、苦みやえぐみがない優しい味わいになります。そのため野菜嫌いのお子さまも喜んで食べられるというお声をたくさんいただいている状況です」

また、同社の植物工場では温度や湿度を保ちながらLED照明のメリットを活かして光の波長と明るさを調整しながら野菜の好みに合った最適な色を照射することで露地野菜に比べ、栽培期間が約半分に短縮しています。


P-プラス使用で飛躍的に鮮度保持期間が延長

元々、植物工場で生産する野菜は雑菌数が非常に少なく、畑作に比べて1万分の1程度なのだといいます。同社ではITメーカーと共同開発したシステムで植物工場内を常時監視し食品工場と同等の徹底した衛生管理を行っています。

「腐敗菌が繁殖しない環境で育成している野菜なので傷みは少ないのですが、それでも、出荷してしばらくしたら消耗してくる。しかも、植物工場の野菜は市場から見て、“長持ちして当たり前”というイメージがあるので、ちょっとした劣化がクレーム対象となってしまいます」

収穫した野菜を個別包装し、工場内にある冷蔵庫にて予冷。それを名古屋の市場まで配送し、スーパーの店舗に並べ、そこに2~3日置かれてしまうと、収穫から一週間程度は経過してしまうこともあるのだといます。

「その時点においても、収穫した時と同程度の鮮度を保っていないと、工場で生産した野菜としての商品価値が下がってしまう。お客様からも品質についての指摘を受けることになります」

当初は一般的なの防曇フィルムを使用。鮮度を保持できるのは4日間が限界だったといいます。

「困り果てていたときに、元々建材分野でのお付き合いがあった住友ベークライトから、P-プラスをご紹介いただきました。ただ、当時はレタスの特性に合致した商材は持っておらず、ほうれん草用のものをベースにしながらレタスの呼吸量や保存・輸送の環境に合わせて開発を進めてくださるというお話をいただきました。何度も試作品を作っていただき、我々の工場で何度か試験を繰り返しました」

同社の協力のもと、実証実験を繰り返しながら完成したレタス仕様のP-プラスは、非常に満足のいくものとなっていたといいます。

「従来の防曇フィルムでは4日目になると劣化していたのですが、P-プラスに封入し、ちゃんと冷蔵ケースに納めておけば、2週間くらいは鮮度を保っていた。とても素晴らしいと思いました。私たちの要望に適合するものを、粘り強く開発いただいた結果、非常に良いものができたと思っています」

植物工場の設備や技術を世の中に広めていく

P-プラスの鮮度保持力が野菜の力を補完していると感じている大川部長。お客様の反響も大きかったのだとか。

「おかげで、お客様からお叱りを受けることも少なくなりました(笑)。スーパーさん側としてもP-プラスに入っていれば大丈夫という認識が定着してきたのだと思います。その信頼は私たちにとって価値あるものだと感じています」

今後は、野菜の生産販売だけでなく、植物工場の設備や技術を含めて世の中に広めていきたいと考えているという同社。大川部長は「植物工場の野菜がお客様の手元に届ける際に、P-プラスを使用することがスタンダードになるよう、情報発信をしていきたいと思います」と言います。

就農人口の減少が社会問題となりつつある中、同社の取り組みが全国に広がることは、私たちにとって大切な食未来への布石になるに違いありません。

「P-プラスは、もはや我々が世の中に発信していきたいと考えている、新しい農業を実現する栽培ノウハウの一部であると捉えています。住友ベークライトとは、これからも一緒に協力しあいながら事業を進めていければと思っています」

P-プラスの鮮度保持能力が植物工場の野菜の信頼性を高め、地域農業の構造改革の一助になれば幸いです。

お客様の情報

三協立山株式会社 植物工場事業化プロジェクト

    〒933-0838
    富山県高岡市北島851
    TEL: 0766-20-3160

当社の植物工場は富山県高岡市の工場内の遊休施設に設置された水耕栽培型の植物工場です。地域の農業の活性化支援のために取り組みを開始し現在は、レタスなどの葉物野菜を1日100kg出荷が可能です。出荷量が天候に左右されず、品質も安定しているため、雪の多い富山の新たなビジネスモデルとして貢献できればと願っています。