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2011年4月のP-プラス青果物
佐賀県産【デコポン】

ご紹介

頭のでっぱり部分がなんとも“かわいい”晩柑類「デコポン」。春先の東京地区で、今年、ちょっと話題になっているのが、佐賀県産の個パックされた「デコポン」です。「フレッシュ 閉じ込めました」の印刷文字も、裸陳列が多い小売店の柑橘類売場のなかでもよく目立ちます。晩柑類の最後を飾るアイテムとして、小売店でも自然と販売に力がはいっているよう。温度も徐々に上がるこの時期、柑橘類は腐敗、萎れ、ス入り、皮の褐変などでロスが発生しやすく、店頭販売では注意が必要なのですが、この“フレッシュ”パックの佐賀産なら大丈夫、という信頼感があります。包材として使用されているのがMAフィルム(P-プラス)であることを、小売店側でもよく知っているからです。小売店が自信をもって売れるものは、消費者だって安心して買える商品です。

この話題のデコポンの産地、佐賀県農業協同組合からは、年内、11月になると酸が低いハウス物が他産地に先駆けて出荷されてきますが、JA佐賀大和では、糖、酸とも高いコクのある露地物は年明けに生産農家から集荷され、出荷場で秀品の2L以上のものが厳選。さらに“フレッシュ”パックに入れられて4月までの長期間、販売に供されています。産地側からすれば、長期販売のために後半には発生しがちな傷みや腐敗のリスクを最小限に抑え、消費者に納得して買ってもらおうという、工夫と思い入れから実現した販売方法です。もちろんデコポンでは初めての商品形態。消費地の卸売市場や小売店で大歓迎だったことはいうまでもありません。

デコポンの“本名”品種を「不知火(しらぬい)」といいますが、生まれは長崎県の農林水産省果樹試験場口之津支場で、清見(きよみ)タンゴールと中野3号ポンカンを交配して誕生したものでした。多くの同様の交配種があるなか、この品種は、果形は頭の部分にデコが現われやすく不揃いになりやすい、果皮は見た目が粗く成熟するとややしなびるなど、外見上の弱点が目立ち、試験場では将来性なし、と判断され品種登録もされなかったのですが、その後、熊本県果実連に見出され、同県の不知火町で栽培に着手されました。そのため、その品種名を「不知火」として日の目をみることになった奇遇の品種です。

佐賀県でも、時をおかず将来性を見込んで栽培の取り組みが始まり、いまでは熊本、愛媛に続くデコポンの主要産地にまで成長しています。しかし間もなく問題が起こります。同県では、出荷販売では「不知火」の名称を使っていましたが、先行した熊本県ではから出荷するときは「デコポン」、愛媛県の場合は「ヒメポン」、広島県では「キヨポン」と、ネーミングがそれぞれ違うために、消費地に混乱が起きたのです。
そこで、1991年より不知火の中で糖度13度以上のものを選択して「デコポン」の名称で商品化を先行させていた熊本県が、「デコポン」「DEKOPON」として商標登録したのを契機に、不知火産地が合同して同じ基準を採用。3月1日を「デコポンの日」として制定するなどの産地間連携が成立しています。

ネーミングや品質基準を統一するなどの産地の協働が進んだ「デコポン」ですが、卸売市場や小売店への販促や、消費者へのアピールなどは、それぞれの産地の腕の見せどころ。柑橘類では20年に一度といわれるほどの有望品種なのですから、各産地が切磋琢磨しそれぞれ消費拡大の努力をすることで、“デコポン・マーケット”をさらに広げています。もちろん、このP-プラス“フレッシュ”パックで勝負に出ている佐賀県産は、シーズン終盤で「他産地より頭ひとつリードか」という声が、消費地から聞こえてきます。