3次元培養用プレート「PrimeSurface®」
PrimeSurface®プレート96Uで作製されたヒト大脳皮質スフェロイドによる
神経刺激作用評価

【データご提供】一般財団法人電力中央研究所 サステナブルシステム研究本部 生物・環境化学研究部門 電磁界ユニット 齋藤 淳史 主任研究員
詳細はこちらでの論文ご参照ください:Stimulus effects of extremely low-frequency electric field exposure on calcium oscillations in a human cortical spheroid. Saito A, Shiina T, Sekiba Y
Bioelectromagnetics. 2025;46:e22521. © 2024 The Author(s). This is an open access article under the terms of the Creative Commons Attribution License
(Figures are cited from the original paper, with the figure numbers changed)

電磁界に対する生体作用を細胞レベルで正確に評価する上では、ヒトの臓器と近い生体試料を実験に用いることが重要となります。しかし、従来の研究では、ヒトの脳・中枢神経系に由来する培養神経ネットワークを電磁界へのばく露実験に用いた研究は行われていませんでした。本研究では、ヒトiPSC由来神経細胞から構成され、かつ3次元状の神経ネットワーク構造をもつヒト大脳皮質スフェロイド (hCS) を電磁界ばく露実験に適用し、電磁界に関する国際的なばく露ガイドラインの根拠である神経刺激作用を評価できるか調べました。
PrimeSurface®を用いて作製したhCSは、生体内に近い3次元状の神経ネットワーク構造を再現できるため、電磁界に対する神経刺激応答を生体内に近い環境で評価できると考えられます。
本アプリケーションノートでは、PrimeSurface®を用いたhCSの作製方法を紹介し、電磁界の神経刺激作用研究における新しいin vitro評価モデルとしての有用性を示しています。

ヒト大脳皮質スフェロイド (hCS) の作製

hiPSC由来神経前駆細胞 (ReproNeuro; ReproCell) を使用し、下記条件でPrimeSurface®プレート96Uに播種しました。
播種密度: 3x104 cells/well
分化用培地: ReproNeuro MQ培地 (3日目、7日目、14日目に培地交換)
長期培養用培地: Neurobasal Plus培地 (Thermo Fisher Scientific) ベース (21日以降)
hCSはPrimeSurface®プレート96Uでの数か月間の培養を経て作製されました。

hCSを用いた機能および神経刺激作用の評価

多点電極アレイ (MEA) システムを用いたhCSの機能評価:
アルファメッドサイエンティフィック株式会社のMEAシステム (MED64) を使用し、同一のhCSから計測される細胞外電位の経時的変化を指標に、hCSの成熟に伴う機能変化を数ヶ月にわたり評価しました。

Caイメージングによる電磁界ばく露による神経刺激作用評価:
超低周波電界 (ELF-EF) ばく露中の神経ネットワーク活動の変化を蛍光顕微鏡を用いたCaイメージングにより評価しました。電磁界ばく露実験では、均一な大きさのサンプルを使用するため、hCSの直径を0.9-1.1mmの範囲にしました。また、Caイメージングを行うために、蛍光指示薬であるFluo-8 AM (AAT BioQuest) を使用しました。

PrimeSurface®を用いることで均一な大きさのスフェロイドを
効率よく作製することができる

結果

  • hCS周辺の細胞外電位を経時的に評価した結果、培養2ヶ月程度で安定したバースト状の神経ネットワーク活動を検出できることがわかりました (図1)。
  • Caイメージングにより、細胞外電位と一致したパターンの神経ネットワーク活動を光学検出することができました (図2)。
  • ELF-EFばく露中は神経ネットワーク活動の発生パターンが非ばく露 (Control) と比較して明確に変化しました (図3)。

同結果より、hCSを用いた場合でもELF-EFへのばく露による神経刺激作用を検出できることがわかりました。

図1 図1
図2 図2
図3 図3
PrimeSurface®を用いて作製された3次元状のヒト大脳皮質スフェロイドは
より生体に近い環境を考慮した電磁界による神経刺激作用の評価にも有用である