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トップインタビュー

トップインタビュー「SDGsを軸とする中長期的取り組みが、持続可能な循環型社会の構築をリードする」

SDGsを軸とする中長期的取り組みが、持続可能な循環型社会の構築をリードする

インタビュー

ニッチ&トップシェアを達成するためのOne Sumibe活動とSDGs

中井 代表取締役社長に就任されてから約1年が経ちました。社長1年目はいかがでしたか?

藤原 率直に申し上げればたいへん忙しい1年でした。2018年度は、2016年度から取り組んできた中期経営計画の最終年でもありました。最後の1年を社長として務めました。残念ながら最終年度は売上・利益ともに未達という結果でしたが、振り返ってみますと、できたこと、できなかったことがそれぞれはっきりと見えてきます。

中井 では、2016年度-2018年度中期経営計画の結果について詳しくお聞かせください。

藤原 当初より3つの戦略を掲げていました。一つめは既存事業の再生と事業転換。国内外の人員適正化や拠点・営業体制等の最適化、さらに汎用デコラ(高圧メラミン化粧板、不燃メラミン化粧板)や片面積層板等の不・低採算事業の縮小・撤退を実施することで、今後の持続的成長に向けた収益基盤を強化できたので、一つめは達成できたと考えています。きちんと利益を出せる企業になったということです。2つめは成長分野の収益力強化と規模拡大。昨年秋頃までは順調だったのですが、昨今の市況悪化により残念ながら最終的な数字は物足りないものになってしまいました。しかし、今後有望な「高集積デバイス」「自動車・航空機」「ヘルスケア」の3つの創生領域を拡大するなど着実な成果はあげられました。3つめが新製品の早期立ち上げと創生。これは十分な成果を出せませんでした。中期経営計画未達の主要因です。

中井 2019年度からは新たな中期経営計画が始まりますが、前計画で達成できなかった要因を踏まえて考えられたということでしょうか。

藤原 その通りです。認識した課題を踏まえて、積極的に課題解決に取り組み目標達成につなげていきます。

中井 新中期経営目標の概要と注力するポイントは、どのようなものでしょうか。

藤原 住友ベークライトは機能性化学品の企業です。何十万トンもの製品を一度につくるのではなく、一つひとつのプラスチックに新しい技術で最適な機能を与えていくのが私たちの仕事です。ですから、勝負するべき市場は非常に狭い。そこでトップのシェアを取っていくことを目指します。「ニッチ&トップシェア」と私は以前から申し上げているのですが、それを達成するためのアプローチとして新中期経営目標に取り入れたのがSDGsです。地球規模での持続的成長を目指すSDGsは、社会が求める究極の潜在ニーズであるとともに、住友ベークライトの社是とも一致するものです。この点からも、私たちが取り組まない理由はありません。2019年度以降はSDGsを常に見据えた新製品開発と営業活動をしていきます。
中井 社是に通じるということは、これまでの事業の方向性が変わるわけではないのですね。SDGsは世界中で浸透し始めている目標ですから、御社のようなグローバルに事業を展開する企業にとっては、国・地域を超えて従業員の皆さんのモチベーションを一体とするためにも非常に有効だと思います。

藤原 前中期経営計画から引き継ぐ部分もあります。CS最優先の理念です。住友ベークライトが持つさまざまな事業を横串にしてチームを組んで、お客さまへのご提案を実施する等、全社横断的な価値提供を行う「One Sumibe」活動を行っており、お客さまと一体となった新素材の開発や技術革新をスピーディーに展開していくことを目指しています。日本から始めた活動ですが、ようやく海外拠点の経営陣にも浸透してきましたので、これからはグローバルで展開していきます。

中井 新中期経営目標について教えてください。

藤原 売上収益2,500億円、事業利益250億円です。新中期経営目標は将来的に売上収益3,000億円、事業利益300億円となることを見据えた数値で、中期的には売上収益2,500億円、事業利益250億円を目指し取り組んでおります。この目標を達成するためには事業規模の拡大が必要不可欠なので、競争優位性のある新製品の開発・早期戦力化、既存製品の収益力強化と領域拡大、そして成長領域における積極的な戦略投資を進めていきます。従来通りの売上の5%シーリングの研究開発費に加え、年間100億円程度の設備投資を維持します。さらに、重点領域の早期事業化に向けた戦略投資枠として3年間で400〜500億円を充てる予定です。

SDGsに即した製品開発

中井 SDGs には17の目標が掲げられており、現在の地球上の課題を非常に幅広く捉えています。SDGsを見据えた新製品開発というのは、具体的にはどのようなものになるのでしょうか。

藤原 着実な貢献を目指すからには、1年ごとに成果を数値で評価していかなければなりません。そうなると、17の目標のすべてに取り組むのは困難です。そこで私たちは、特に貢献すべき目標を抽出して関連する製品の紐付けを実施しました。事業とかかわりの深い5つの目標と、プラスチックを扱う企業として無視できない「14:海の豊かさを守ろう」です※2。紐づけた製品の売上があがれば、それだけSDGsに貢献していることになります。SDGsの目標年である2030年には、全社の売上の50%以上をSDGsに貢献できる製品にしていきたいと思っています。

中井 数値目標を掲げるというのは、素晴らしい姿勢ですね。明確でわかりやすい。社外の方からだけでなく、実際に取り組む従業員にとってもわかりやすいのは良いことです。目標がはっきりして成果が見えやすいと、努力のしがいもあるし、チームでのイメージ共有も容易にできるからです。一人の消費者としては、御社の製品はたいへん広範囲に私たちの暮らしとかかわっているので、普段の生活の中で接するものが積極的にSDGsに貢献しているのだと思うと、とてもうれしく誇らしい気分になります。
藤原 いくつか製品をご紹介しましょう。まずは自動車関連製品。金属部品をプラスチック部品に置き換えて重量を減らし、消費エネルギーや地球温暖化の要因の一つとされるCO2の排出量を削減します。近年ではエンジンや駆動用モーターなどの大型部品の金属・樹脂複合化の研究・開発が盛んで、私たちもドイツのフラウンホーファー研究機構など社外の組織と共同で実用化に取り組んでいます。これはSDGsの「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献します。次にヘルスケア分野では、低侵襲治療用の器具を製造しています。患者さまの体にやさしい低侵襲治療の発展に伴い、ガイドワイヤーなしで先端を動かせるステアリングマイクロカテーテルや、世界最小径0.43mmの脳用カテーテルを上市しました。また、より安全・安心な新製品開発を追求するべく、医療機器メーカーである川澄化学工業株式会社との資本業務提携も2019年3月より行っています。先ほどの自動車部品と同じく、低侵襲治療用の医療機器の開発もSDGsの9にかかわりますし、さらに「3:すべての人に健康と福祉を」に貢献できる可能性も十分にあります。
中井 ヘルスケア分野の発展に、御社が持つプラスチックの技術や製品が生かされているというのは、新鮮な驚きです。私も医療系NPOの理事を務めているので、がん患者の方々などのお話を聞く機会は多いのですが、どうしても高度な医療や複雑な医療機器は理解が難しくて、抵抗を感じる方もいます。そんなときに、実際に医療機器に触れてその凄さを体験すると、途端に親しみがわいて治療に前向きになれたりします。ぜひ、御社の製品の素晴らしさも、積極的に一般の方々へ伝えていただけたらと思います。

藤原 生活に密着した製品としては、ほかに食品包装用フィルムがあります。青果物やカット野菜の鮮度を保持する「P-プラス®」は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで広く導入いただいています。店舗の方々やご家庭で喜ばれるだけでなく、鮮度を保持できる期間が延びることでフードロスを削減したり、輸出できる範囲が広がったりと、多方面でメリットがあります。さらに結露防止や防カビ、青果物以外の麺類などの食品への用途拡大も進めており、今後の発展が楽しみな製品です。廃棄物・フードロスの削減は、SDGsでは「12:つくる責任 つかう責任」にあたります。
中井 本当にさまざまな分野で御社のプラスチックは活躍しているのですね。プラスチックというと、今でもレジ袋やストローといった単純なものを連想する方は多いと思いますが、全く違う。さまざまな機能があって、医療や食品、エネルギーなど多くの分野を発展させていくのに欠かせないものだということが、よくわかりました。
  • ※2 SDGsの14には、持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するというターゲットが組み込まれています。

人の力がイノベーションの源

  • 代表取締役社長 藤原一彦
    1980年 住友ベークライト入社。
    2003年バイオ製品開発プロジェクトチームリーダー、2007年S-バイオ開発部長、2009年6月S-バイオ事業部長 執行役員、2013年常務執行役員、2014年取締役常務執行役員、2018年代表取締役社長執行役員に就任。

中井 SDGsでは、製品や社外に関することだけでなく、社内の従業員に対する取り組みも重視されています。女性の活躍推進や働きがいの確保、品質向上、コンプライアンス推進などについて、お考えを聞かせてください。

藤原 それらは取り組まなければ企業の価値がなくなるほどに、重要な要素であると認識しています。コンプライアンスや品質については、近年、表示偽装や虚偽申告の発覚に関する報道が相次ぎました。事業活動を進めるにあたって、コンプライアンスを順守することは大前提です。それが見えなくなる背景の一つに、長年続いてきた慣習というものがあると思います。悪いことだとわかっていても「昔からやっていますから」と流してしまう。これは本当に怖い。だからこそ、人材育成や定期的な巡回、管理監督者の目で現場をきちんと見て管理する制度を整え、運用しています。まして、住友ベークライトは「CS最優先」を掲げています。目先の利益・対応を優先するあまり品質やコンプライアンスを疎かにして、お客さまと市場の信頼を失うような行為は、決して許されません。
中井 人材育成や女性活躍推進についてはいかがでしょうか。

藤原 SBスクール、SBPS(住友ベークライト生産方式)活動が人材育成の柱です。業務に必要な知識を得ることにとどまらず、社員一人ひとりの人間力を高める教育を重視しています。事業を発展させSDGsに貢献していくために、私は今年、イノベーションという言葉を従業員の皆さんに伝えています。一口にイノベーションといっても、デジタルイノベーションをはじめいろいろな意味がありますが、重要なのはどんなイノベーションも起こすのは人であるという点です。人の力なのです。新しい技術や大きな開発プロジェクトがイノベーションなのではなく、それをポジティブにアグレッシブに実行していく人こそがイノベーションの源。優秀な人材にどんどん活躍していってもらわなければなりませんので、もちろん、そこに性差などありません。最近では研究開発や製造、営業の現場で活躍する女性従業員も増えました。彼女らがさらに能力を発揮するための制度や職場環境の整備は力を惜しまず進めています。

中井 ここまでお話をうかがって、住友ベークライトとプラスチックの未来がとても楽しみになりました。私たちの社会は日々変わっていきます。環境もそうです。そんな変化の激しい時代において、社会・環境をより良くする製品を創り出していくのは、とても難しいことです。何を取り、何を捨てるのか。その判断にSDGsを取り入れていく、社是という受け継いできた理念を土台にしつつも新しい価値観・目標を見据えていく姿勢に、企業としての夢と温かさがあると思いました。身近な製品がさらに便利で豊かな暮らしを実現してくれるという期待を込めて、これからも御社を応援させていただきたいと思います。

藤原 ありがとうございます。昨年、私は社長就任時に住友ベークライトのありたい姿として、『プラスチックの可能性を広げ、お客様(ステークホルダー)の価値創造を通じて、「未来に夢を提供する会社」を目指す』ことを掲げました。当社の価値創造の源泉は、長年培った機能性プラスチックに関する基盤技術です。これを強みとして、SDGsの具現化、すなわち社是の実現を、One Sumibe活動や人材育成、積極的な社外との連携・協業を通じて成し遂げていきます。グローバルに事業を展開する企業グループとして、経済的価値のみならず持続可能な社会実現への貢献が求められていること、それに応えることが企業価値の向上につながるのだということを、明確に自覚して、事業を展開してまいります。今後も自主的に環境安全対策の実施や改善を図っていく「レスポンシブル・ケア世界憲章」を支持し、実行していきます。

  • アナウンサー 中井美穂 氏
    1987年日本大学芸術学部を卒業後、フジテレビに入社。アナウンサーとして活躍し、「プロ野球ニュース」「平成教育委員会」など多くの番組に出演し人気を集める。1995年フジテレビ退社。1997年から「世界陸上」(TBS) のメインキャスターを務めるほか、「タカラヅカ・カフェブレイク」(TOKYO MXテレビ)、「スジナシBLITZシアター」(TBS)などにレギュラー出演。その他、読売新聞連載・伝統芸「中井美穂の見染めました」、映画・演劇のコラム、イベントの司会、クラシックコンサートのナビゲーター、朗読など幅広く活躍している。また、CNJ(NPO法人キャンサーネットジャパン)に賛同し、ブルーリボンキャラバンなどのがん啓発のイベント・学会の司会などの活動もしている。2013年より読売演劇大賞選考委員を務めている。

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