文字サイズ

プラスチックと共生する未来をつくる、住友ベークライトのSDGs推進

住友ベークライトは2018年にSDGs推進準備プロジェクトチームを、2019年にサステナブル推進委員会を発足し、SDGsに本格的に取り組む体制を整えました。

今後、さらに有効な取り組みを推進していくために、SDGs推進をリードする取締役専務執行役員の稲垣をはじめとするSDGs推進委員会メンバーが、SDGs研究の第一人者である慶應義塾大学の蟹江憲史教授をお迎えし座談会を行いました。

持続可能な未来へつながる、プラスチックとの共生

稲垣 住友ベークライトは、2019年度をスタートとする中期経営目標にSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)を組み入れています。SDGsが示す目標は、世界の目指すべき姿であり、いわば世界中の人々が行き着く道標です。変化が激しく不確定な要素が多 い現代社会において、どのような製品が世の中に受け入れられるのかを予測するのは非常に難しいことですが、SDGsはその拠り所の一つになると考えています。
蟹江 グローバルに事業を展開している企業では、特に有効な考え方だと思います。実際、発展途上国で国家全体の開発計画をSDGsに沿って組み直すという動きも起きており、SDGsに沿った製品を取り扱っていれば、そのようなマー ケットにも参入しやすいでしょう。それと、プラスチックという素材はSDGsの観点から見ても非常に重要です。SDGsの13や14、気候変動への影響の面からもプラスチックは避けて通れないものですから、プラスチックを扱う企業のSDGsへの取り組みには、私もたいへん注目しています。

稲垣 最近の脱プラスチックの流れにおいては、プラスチックを悪とする意見も見受けられますが、決してそうではありません。2020年、世界中で最大の困難となっている新型コロナウイルスへの感染防止対策を見てもわかる通り、プラスチックは現代社会に必要な存在です。だから私たちプラスチックメーカーは、地球環境と共生できるプラスチックのあり方を考えていかねばなりません。たとえば、今までの半分の厚さで今まで通りの性能を発揮できるプラスチックフィルム。これなら廃棄物の量を半分に減らせます。あるいは、 非可食バイオマス由来のプラスチックや生分解性プラスチックなど、廃棄しても環境負荷がかからないもの。または、リサイクルしやすい構造のプラスチックを増やすなど、すでにさまざまな手段や方向性を検討しています。
蟹江 憲史氏

蟹江 憲史氏

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 教授。政策・メディア博士。慶應義塾大学SFC研究所xSDGs・ラボ代表。日本政府SDGs円卓会議構成員など多くの政府委員を務める。専門は国際関係論、地球システム・ガバナンス。SDGs策定過程から国連におけるSDGs設定に参画。SDGs研究の第一人者であり、研究と実践の両立を図っている。編著書に「未来を変える目標 SDGsアイデアブック」(紀伊國屋書店出版)、「SDGs(持続可能な開発目標)」(中公新書)ほか多数。

蟹江 よい面をさらに生かすために、課題を真正面から捉え解決法を見つけていく。それこそまさにSDGsの考え方です。SDGsには17の目標がありますが、それら全部を同時に実現しようとすると、ぶつかり合ってうまくいかないものもあります。しかし、そこでなぜうまくいかないのかを考えれば、今度は何が障害になっているのかが明確になる。その障害を取り除くことで、より持続可能な社会へと近づいていく。この過程に大きなイノベーションの兆しがあると期待しています。

SDGsの実現を目指して、変わり始めた世界

稲垣 昌幸

稲垣 昌幸

SDGs推進委員会 委員長
取締役 副社長執行役員

稲垣 2015年9月に国連サミットでSDGsが採択されてから、約5年が経過しました。私はこの5年はいわば準備期間であったと捉えています。次の2020年からの5年間は、実際の活動が評価される期間。そして最後の2025年から2030年が、目標に着地するための期間です。住友ベークライトでは、サステナブル推進委員会を発足させ、具体的な活動を推進していく体制を整えましたが、世界各国の企業はどのような状況なのでしょうか。

蟹江 地域別に見ると、先進的なのはやはり欧州です。米国や発展途上国にも、個々の企業では非常に進んでいるところもありますが、全体では遅れ気味と言えます。日本の場合、SDGsの認知度はとても高いですね。特に上場企業の方々が高く、最近は一般消費者や学生にもよく知られています。ただ、では実際にSDGsの達成のために何をしているのかという具体的な活動の面になると、日本よりも欧州の方が一歩進んでいます。
達成のために実際に何をすればよいのか、というのは 私たちも日々悩んでいるところです。SDGsは目標を決めていますが、そこへ至るためにどうやって進んでいくべきかは定めていません。明らかに国、地域の行政を対象としている項目もあり、企業の活動に落とし込む難しさを感じています。 特に私たちは材料メーカーですから、製品と社会のつながりを考える時にはお客さまの企業やサプライチェーンをつないで、全体で見ていかねばなりません。自社だけで完結できない難しさはありますが、少しずつ着実に進めています。

相庭 私たちのお客さまである自動車や食品の企業なども、意識や判断基準が変わってきているのを感じます。新しく開発した製品をご紹介した時などに、それを生産する際のCO2排出量は従来よりも減らせたのか、また環境負荷の高い化学物質を使用していないかといった確認をされるのが、もう当たり前のことになりつつあります。

蟹江 一つの製品がどうやってできあがったのか、どうやって捨てられていくのか、あるいはどうやって地球環境へ戻していくのか。その行く末までのストーリーを含めて消費者に製品を提示するということですね。製品を見る視点が今までとは変わってきている。そのような視点は、SDGsに取り組んでいく中で最も変わるべきところだと思います。

5+1の重点領域に取り組みつつ、17の目標を見据える

稲垣 SDGsには17の目標がありますが、住友ベークラ イトでは事業領域から当社の強みと⽴ち位置、市場の要求を分析し、3、7、8、9、12を重点的に取り組む領域として定めています。医療分野の製品や⾷品パッケージなどが3や9に関連し、⾃動⾞の環境対応等に関連する製品は 7にも貢献します。8、12はモノづくりを⾏う企業として、また多くの従業員が働く企業として重要です。14については、海洋プラスチック・マイクロプラスチックの問題を含むため重点領域としました。

蟹江 重点が明確だと、取り組みやすいですね。いきなり17の目標に取り組めと言われても、戸惑う方が多いでしょう。実際に取り組みを行っていくと、5+1以外のものも実は密接に関連し合っていることがわかってくると思いますが、まずは、わかりやすく、やりやすいところから始めるのがよいと思います。エネルギーに取り組む中で水の問題にかかわったり、働き方の改善を通してジェンダーの問題に触れたりして、最終的には17すべてへの貢献につながっていくはずです。

稲垣 5+1を明確にしたのは、経営陣からのメッセージ でもあります。住友ベークライトでは「高集積デバイス」「自動車・航空機」「ヘルスケア」の3つを創生領域として定めておりまして、これと5+1が重なったところに経営リソースを注いでいくぞという、社内外への意思表示でもあるのです。
当社のSDGs重点領域目標

沖 博美

沖 博美

SDGs推進委員会メンバー
研究開発本部 R&D 企画推進部長

創生領域とSDGs重点領域に沿った研究開発は、 2018年より社員からアイデアを募集して取り組んでいます。 社員は所属に関係なく提案でき、内容がよければプロジェク ト化したり、社外研究機関等との共同研究に発展させたりもします。まず25件を選び、昨年1年間で調査を進めまして、 今は8件に絞り込んで実際に研究開発をスタートしました。 また、SDGsに貢献する製品を「SDGs貢献製品」として認定する制度も行っています。

蟹江 それはよいですね。社員の皆さんのやる気も向上しそ うです。活動を促進する仕組みをつくり運用していくというの は、本気でSDGsに取り組んでいなければできないことです。

相庭 社員のやる気の向上はもちろん重要なのですが、その前に、SDGsへの理解度向上、周知徹底を図ることも、 私たちの重要な課題であると考えています。先ほど蟹江先生より、日本ではSDGsの認知度が高いというお話がありましたが、私はSDGs推進委員会の活動を通して、そこには大きな年代差や個人差があると実感しています。SDGsに沿って日々の業務に取り組むためには、特定の部署や立場に限らず、社員一人ひとりが正しい理解をもつことが不可欠です。社内報やe-ラーニングを用いた社内浸透はこれまでも行ってきましたが、引き続きさまざまな施策を実行して、きちんと社員全員のベクトルを合わせていきたいです。
蟹江 社内浸透だけにとどまらず、皆さんにはぜひ、サプライチェーン全体の底上げにも挑戦していただきたいですね。住友ベークライトはそれだけのパワーがある企業だと感じています。

グローバルな課題を身近に感じることで、SDGs推進の重要性が高まる

稲垣 SDGsの推進にあたって、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大はどのような影響をもたらすのか。事態が収束していない現時点では、まだ答えは見えていませんが、解決すべき課題の優先順位が変わっていく可能性があると危惧しています。
相庭 博

相庭

SDGs推進委員会メンバー
生産技術本部 環境・安全推進部長

相庭 人々の価値観ががらりと変わる変化点が、今なのではないかと思います。その変化の中でSDGsの重要性はむしろ高まっていくのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

蟹江 新型コロナウイルスの感染拡大は、いかにこれまでの世界が持続可能ではなかったのかを明らかにしました。同時に、グローバルな課題が実は身近なところから起こっているのだということを、身をもって感じるきっかけにもなったと思います。一人ひとりがしっかりと注意して行動することが、パンデミックの防止につながる。それは気候変動や人権問題においても、同じことです。それを経験でわかったというのは、今後のSDGs 推進に大きく影響すると思います。

SDGsは世界中の人々の目標であり、同時に住友ベークライトの目標でもあり、私たち個人の目標でもあると、改めて認識しました。グローバルを見据えながら個人にも目を向け、社員たちの意見や発想をきちんと捉え、伸ばしていくことが、住友ベークライトの成長にもつながります。これからはそのような視点で研究開発を進めていきたいです。
蟹江 ポジティブな姿勢で、若い人たちの柔らかい発想を生かしながら未来を開くイノベーションを起こしていただくことを、期待しています。

稲垣 SDGsの目標年である2030年よりもさらに先の未来をつくるために、ということですね。持続可能な発展というテーマは形を変えて永続的に続いていくものです。今すべきことは、未来のターゲットをつくることだと私は考えています。社会の変化は激しく、思い描く未来予想図が当たるかはわかりませんが、理想をつくってそれを次の世代へと継続していくことが、持続可能な発展につながるのだと思います。
本日は貴重な議論の機会をいただき、ありがとうございました。

サステナビリティに関するお問い合わせ、資料請求はこちら。