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2014年10月のP-プラス青果物
タカラバイオ【ハタケシメジ】

タカラバイオ【ハタケシメジ】

10月といえば、一日一日秋が深まっていく時期。朝夕冷え込む日も多くなって、暖かく食卓を囲む鍋物のシーズン到来です。鍋物といえばハクサイ、ネギと並んでどうしても外せないのがキノコ類。いまほとんどのキノコ類が工場生産され、周年にわたり出荷されていますが、市場入荷のピークは、なんといっても10月から冬にかけての“鍋物シーズン”です。

近年、キノコ類はかつてのシイタケの地位は相対的に下がり、エノキタケやブナシメジ、そしてエリンギ、マイタケなどの次世代キノコ類が急増してきました。そして、さらに各メーカー、産地は次の商品開発に余念がなく、新世代キノコ類ともいえるバラエティー豊かな商品が相次いで登場しています。

そんな新世代キノコ類のなかで、群を抜いて話題になっているのが、「大粒丹波しめじ」の商品名で流通・販売しているハタケシメジでしょう。ハタケシメジの生産・流通はすでに10年前からスタートしていますが、当初は卸売市場でも小売店でも、“太くて長いシメジ”といった程度の評価しかなかったのですが、実際に購入した消費者から、「しゃきしゃきとした独特の食感」「苦味が少なく旨味がある」と支持されるようになり、スーパーの販売担当者からは「リピート購入が目立って増えている」という評価がされるようになっています。

このハタケシメジは、1970年にブナシメジの人工栽培に世界で初めて成功したタカラバイオ㈱によって開発された菌種で、2003年から子会社の瑞穂農林㈱が、栗やマツタケ、黒豆などの産地として有名な京都府・丹波地方で生産を開始しました。当初は食にこだわる関西市場を中心に「大粒丹波しめじ」として流通していましたが、このハタケシメジの他にない優れた特性を真っ先に評価したのが、料理屋などの業務用需要者だったといいます。

こうした評価を背景に、ここ数年は関東市場から全国にその販売を拡大していますが、広域流通するようになると大きな問題は、ハタケシメジの独特の食感や旨味を収穫時のままに消費者に届ける手段です。卸売市場への出荷からベンダーによる納入という長い物流ルートを改善して、市場業者に帳合をとってもらいながらも、流通は需要者へ低温で直送するといった工夫もしてきました。しかし、とりわけ高温時には、到着時から傷みが発生して小売店からのクレームも多発したといいます。

包装形態などを含めて、様々な試行錯誤の結果、今年の4月からは、多くのキノコ類で鮮度・食味保持効果が実証されているMA包装(P-プラス)を採用することにしたのも、常に新しい差別性を追求してキノコ菌種開発に邁進してきたタカラバイオ精神の一環だったのでしょう。

タカラバイオは、自社のホームページで『新品種の育種や栽培方法の開発、大量生産技術を確立していくとともに、「キノコ」が持つ生理活性作用を高度なバイオ技術によって読み解くという研究にも取り組んでおり、より健やかで豊かな食文化の創造を目指していきます。』と宣言しています。その具体的な成果が、日本初のブナシメジ、ハタケシメジであり、さらに1999年には、マツタケと同じ菌根菌であるため人工栽培が困難とされていたホンシメジの栽培にも成功しています。このホンシメジは2004年から「大黒本しめじ」の商品名で生産を開始しており、「香り松茸、味しめじ」といわれる通りに、その美味しさは京都の老舗割烹店から折紙付き…といいます。

食料需給表によると、日本の消費者は他の野菜類の消費を減らす中、キノコ類だけは摂取量を増やしています。健康・美容やダイエットに効果的といった側面だけでなく、バラエティー豊かな商品提案や食べて美味しく機能性も備えた食品として、消費者からの支持が増えているからでしょう。そんな意味からも、タカラバイオが開発したハタケシメジは、従来の品種にない特性を備えた新世代キノコ類の代表格として、これからキノコ商戦を牽引するだけの実力を備えている、というのが流通業界の共通した認識です。