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2012年3月のP-プラス青果物
JA島原雲仙【葉付きデコポン】

ご紹介

今年も3月下旬ともなると、長崎県の島原から最後の中晩柑「葉付きデコポン」が出荷されてきます。高級果物専門店やデパートの売場には、葉付きのまま鮮度保持フィルム(P-プラス)で一個、一個丁寧に包装され、デコポン型をした黒地のラベルには「Fresh & Beauty Fruits DEKOPON」の文字と「MADE IN NAGASAKI」と産地表示が付記されています。一見して高級感あふれるアイテムに仕上がっていますが、デコポン型をしたラベル上部の出っ張り部分に、赤い○極の不思議なマークが添えられているのに気づきます。これこそが、「食味を極める」「品質を極めた」の意味を込めた、JA島原雲仙産柑橘類のセレクション・アイテム(特選品)の印なのです。

JA島原雲仙は、冬場を中心とした洋菜類の産地として全国的に有名なのですが、一方、柑橘類の産地としては、一般に栽培されている温州ミカンのほかは、あまり特徴ある品目も少ないマイナーな存在でした。そこに転機が訪れます。ハウスミカンで1000t程度の生産規模でしたが、近年の、重油の国際価格高騰をきっかけに、食味・品質で勝負できる特徴ある柑橘産地づくりを目指して、ハウスミカンを一部残しながらも、デコポン、セトカ、天草という中晩柑への大転換を図ったのです。その作戦がみごとに当たります。

これまで、5月からハウス・極早生・早生・普通と続く温州ミカンの出荷販売体制に、中晩柑類を導入することで、それに続く11月から4月までの柑橘類販売が可能になり、柑橘類の周年化に成功したこと。まずそれが第1点です。年間を通じて同じ産地の柑橘類を販売できる卸売市場のセリ人からも、島原ファンになっているリピーターのお客さんに喜んでもらえる果物小売筋からも、大きく評価されたのです。

しかも数量で勝負する大型産地に対して、JA島原雲仙は中小産地の強みを最大限に生かして、食味・品質に徹底的にこだわる作戦に出ました。JAの指導のもと、約20名の柑橘生産者の結束は固く、全員の賛同を得ながら足並みを揃えた商品化戦略が展開されます。糖度・食味検査に加え、柑橘類独特の貯蔵技術、酸切れ技術を駆使して、外観はもちろん内容・品質に優れたものを厳選。それに○極のブランド・マークを付けました。これが、卸売市場や果実専門店の大きな評価と支持につながったこと。それが第2点目です。

その高品質商品化の技術や工夫を見てみましょう。年内から年明けに収穫して出荷される加温タイプの作型のものは、酸切れの度合いを慎重にチェックしながら即売されます。仮に酸切れが遅れている場合は、コンテナ用のP-プラス保存袋に収納して外観の鮮度を保持しながら酸切れを待ちます。また、無加温タイプのものは2月上旬まで樹熟させ、同様にP-プラス保存袋で貯蔵しながら酸抜けをモニターし、出荷基準に到達したものから販売用の個包装用P-プラスに詰めなおして出荷されます。貯蔵用と出荷・販売用のP-プラス包装を使い分けるという手間ひまは、ひたすら高品質商材を目指してのこと。全国的にも珍しいケースです。

さらに、3月から4月の最終時期に仕向けられるデコポンは、最終販売に耐えられるだけの内容・品質を持ったデコポン生産している生産農家のものだけを厳選し、シーズン最後まで○極のブランド・マークに恥じない商品を供給しているのです。それが3点目のポイント。産地としての、徹底した商品化技術と心意気だといえましょう。