Sumitomo Bakelite
Co., Ltd.
RECRUITMENT WEBSITE

世界の自動車部品の樹脂化ニーズを受け止め、
金属部品を熱硬化性樹脂コンポジット製へと変えていく

Projectstory 01|ステアリングマイクロカテーテル
開発ストーリー

Projectstory02 自動車用フェノール樹脂
コンポジット開発ストーリー

Introduction

住友ベークライトにおいて、自動車用途に向けてフェノール樹脂製品を供給してきた歴史は長い。これまでにクラッチ用部品やブレーキパッド、タイヤ等に樹脂(レジン)として提供し、エンジン周辺部品、電装部品、ディスクブレーキ部品等には、ガラス繊維などで強化したフェノール樹脂コンポジットを供給してきた実績を持つ。
年間9000万台以上の自動車を作り出す自動車業界。その巨大な部品・材料市場は、住友ベークライトにとって重要な注力分野であることに間違いはない。Chapter03以降で紹介するシャシー系部品メーカーの基幹部品樹脂化プロジェクトは、住友ベークライトが自動車の樹脂化の流れにどのように関わっているか、その背景や事業展開の一つの例を示している。

自動車用フェノール樹脂コンポジットについて

従来、自動車を構成するボディはもちろん、パーツも多くが鋼材だった。耐熱性や耐久性に優れ、比較的安価であり、加工も容易であるからだ。一方で、鉄の比重は大きく、軽量化による走行性能や燃費性能の向上を目指す完成車メーカーや部品メーカーは、代替材料を常に模索している。具体的な例としては、高級な車種を中心にボディに軽量なアルミニウム合金や、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)が採用されはじめている。
住友ベークライトの耐熱性、難燃性に優れるフェノール樹脂コンポジット(複合材料)については、1990年代あたりから採用が増加し、エンジンの補機類やディスクブレーキの一部、エンジン冷却用ポンプなど様々な構成部品へのコンポジット化が進行。現在ではプーリー(発電機等へのベルト動力伝達部品)などを始め、高温での強度が必要な機械部品に用いられる。今後は、重量のあるエンジンの構成部品や大型の金属部品の樹脂化が期待されている。

Project Members

小泉 浩二 材料開発 1997年入社
理工学研究科 機械工学専攻修了
中村 伸明 営業・マーケティング 1997年キャリア入社
経済学部 経営学科卒
Chapter 01 05

エンジンの樹脂化
道は自ら切り拓く

先ごろ、住友ベークライトが自動二輪のエンジン部品の樹脂化実証試験に成功したとの記事が新聞に掲載された。これは自動二輪メーカーに正式採用されたという話ではなく、あくまでも住友ベークライトが独自に研究開発目的で生産中のエンジンのアルミハウジングを樹脂部品に作り替えて試験したものだ。狙いは、本物のエンジンに、フェノール樹脂コンポジット製の部品を使い、オリジナルのアルミ製と同等のエンジン性能と、樹脂特有のメリットを生かし、保温性と遮音性の向上を世の中に示すこと。このプロジェクトを通じて、樹脂でエンジンがつくれないと考える開発者たちに、もはや樹脂化も不可能ではないことを証明し、世界中のエンジン開発者たちとコミュニケーションできるようになった。

中村「二輪車のエンジン部品を樹脂化する試作実験では、実際に元のアルミ合金製のシリンダーブロックのハウジングと比べて、フェノール樹脂を炭素繊維で強化したタイプでは質量を28%減らすことができ、より製造コストを低く抑えられるガラス繊維で強化したタイプでは16%の質量削減を実現しています。我々としては、台上試験での耐久性能の確認を含め、狙い通りの結果となりました。お客様がやらない時は、自ら示していこう、という想いですね。」

小泉「エンジンは大きな部品であり、軽量化効果が高いので、自動車エンジンの樹脂化の流れは、今後ますます進むと考えています。エンジンはクルマの中でも熱負荷が高い部品なので、高温下でも剛性の高い熱硬化性のコンポジットを持つ当社は積極的に取り組んでいます。エンジン周りの金属部品の樹脂化はやり尽くされてきているので、今後はエンジン本体まで樹脂化領域を広げていきたいと考えています。」

Chapter 02 05

欧州拠点と緻密に連携
双方の強みを、互いの市場開発に生かす

自動車業界は一般に知られる完成車メーカーを頂点に、そこにパワーユニット、トランスミッション、ブレーキシステム、内装など複数部品をモジュール/システムとして納めるティア1(※)、さらにそのティア1に部品を供給するティア2、さらにその下にティア3・・・と、ピラミッド状に調達先が広がっている。材料を供給する住友ベークライトは、ティア3もしくはティア4に位置するが、フェノール樹脂コンポジットというクルマの構成部品の中では可能性を持った歴史のある材料の供給メーカーであるだけに、ティア1やさらに完成車メーカーにとっての開発パートナーのような存在になってきていると中村と小泉は口を揃える。
※完成品のサプライチェーンにおける階層。数が小さいほど最終品に近い

小泉「自動車を構成する部品や主要ユニットの材料を金属からフェノール樹脂コンポジットに置き換えて車重を軽量化することは、燃費性能ばかりか加速や減速といった走行性能の向上を見込むこともできます。ですから、様々な部材の樹脂化は自動車の商品力を左右すると言えます。そのため、市場競争力の高い自動車の開発を目指す完成車メーカーやティア1は軽量化を強く希望し、金属代替材料を積極的に提案する我々に対して樹脂化設計(技術)のパートナーとして見てくれている、または一目置いてくれていると思います。」

中村「自動車の樹脂化で先行しているのは、ドイツを中心とした欧州の自動車産業です。日本の完成車メーカーやティア1は、向こうの動きを注視しています。そうした欧州のティア1にフェノール樹脂コンポジットを供給しているのは、住友ベークライトのベルギー拠点です。」

小泉「ベルギーの研究開発部門と、日本の研究開発センターは普段から連絡を取り合い、密な技術交流を行って知見を共有しています。我々は欧州の最新動向を吸収する一方、材料開発では支援し、彼らの用途開発をサポートしています。」

Chapter 03 05

軽量化に加え、クルマの運動性能向上にも貢献する
シャシー系部品の樹脂化

今や自動車部品の樹脂化の流れは加速する一方であり、今まで金属からの代替は難しいと思われていた燃焼室に隣接する部位や、高い応力が発生する部品でも、設計・解析技術の進化や材質改善でフェノール樹脂コンポジットの使用が可能になってきた。定期的に自動車業界向けの展示会でプレゼンテーションを行っている中村の元には、完成車メーカーやティア1の開発担当者からの相談が増え続けている。そこから新たな開発案件が発生することも珍しくない。次のシャシー系部品(足回りに関わる制動・操舵系部品等)メーカーの案件も先方から持ちかけられてのスタートだった。

中村「シャシー系部品メーカーのA社から、主要な運動部品を樹脂化したいという相談がありました。現在までに焼結金属でつくっていた部品を樹脂化して、大幅な軽量化を進めたいという意向でした。競合の海外のシャシー系部品メーカーが同じ部品の樹脂化に向かっていることを知り、住友ベークライトが現地のティア1にフェノール樹脂コンポジットを供給している経緯から、同様の材料供給と技術サポートを得たいということでした。」

小泉「例えば、回転部品など、走行に重要な役割をする部品の軽量化は、燃費向上以外にもメリットがあります。構成部品を樹脂で軽量化することでイナーシャ(回転体の慣性モーメント)が低減されて、応答性が格段に良くなり、クルマの運動性能を向上させます。こうした“味付け”の部分は、メーカー各社の考え方の違いや自動車の使用環境(気候・制限速度・道路環境・地形等)によって正解が異なる部分であり、我々はそれをお客様から教えていただき、理解した上で提案を行うように心がけています。」

Chapter 04 05

樹脂のエキスパートとして、
部品ユニットの設計初期から開発に参画

今まで金属を使用してつくられていた部品を樹脂化するのは簡単なことではない。材料としての特性が大きく変わり、形状や肉厚などにおいて同じで良いとは限らないからだ。また、成形方法も材料の取り扱いも異なることから、新たに準備したり設計をやり直したりしなければならない点も数多くある。だからこそ、樹脂化を進めるクライアント企業は、住友ベークライトの樹脂化技術と実績に期待を寄せる。

中村「我々はA社の案件に、材料の選定や構造設計の段階から加わりました。ひと口にフェノール樹脂コンポジットと言っても、配合や生産方法次第で材料特性が大きく変わってくるからです。また、どういう性能を部品に持たせたいか、という希望ひとつで選択の幅も広がります。この点において当社の欧米拠点の市場での経験も参考にします。あらゆるリソースを活用し、最適なコンポジット設計に生かしています。」

小泉「開発当初の設計は、金属材料をベースとした設計であり、樹脂で進めるにあたり制約があり、構想段階で多くのディスカッションがなされました。もちろん、お客様の金属設計の考え方と我々の樹脂設計の知見がぶつかることもありました。しかし、私たちには、強度や性質の異なるコンポジット材をベースにした設計には、まだまだやるべきことが多いと分かっていました。そこで、採用に必要な評価事項や設計変更などを臆せず提案していきました。」

Chapter 05 05

粘り強いディスカッションを通じ、量産化に目処
視線は次世代自動車へ

ディスカッションを経て、設計した樹脂化部品をA社とともに試作を進め、順調に評価を実施していったが、耐久テストで新たな不具合が見つかり、また次の壁が立ちはだかった。そこでA社と原因究明や解決策など、同じテーブルで議論を重ね、小泉たちの提案も取り入れて再設計し、評価すべき内容を慎重に確認し、試作品を再評価した。結果は良好だった。その頃には、A社は開発パートナーとして小泉たちを信頼するようになっていた。こうして製品開発は開発目標に向かって進み始め、自動車用部品に必要な信頼のおける品質で量産を行える目処が立った。
このA社の案件のゴールが見え始めた今、二人は次世代自動車の新たな用途でフェノール樹脂コンポジットの採用を実現すべく、次のクライアントとプロジェクトを進めている。

小泉「電気自動車は、今後ますます軽量化を進め、走行距離を伸ばしていくことが期待されています。モーターやインバーターなど、重要かつ重量のある主要部品の樹脂化は、今後の最重要検討課題となっています。我々が現状で提供できる樹脂にはまだまだ多くの可能性が秘められている一方、改良の余地や克服すべき課題もたくさんあります。現状製品の発展・改良だけではなく、次世代のフェノール樹脂コンポジットの開発にも取り組みたいですね。その成果が、未来を走る自動車に使用されることを考えると、今から楽しみです。」

中村「世界的潮流である自動車部品の樹脂化は、住友ベークライトにとってグローバル事業の柱のひとつです。実際に、世界中の完成車メーカーやティア1の開発拠点が相手なので、国や地域に関わらず、どこへでも出向きます。大変ですが、とても刺激的です。私は文系出身で材料や自動車部品については未経験でしたが、会社が「やりたい」という気持ちを尊重してくれました。以前に同規模の会社で働いたこともありますが、ここは社員の想いを大切にしてくれる会社だと思います。強い気持ちがあれば、文系の学生でも自動車部品の開発に関わることができますよ。」

小泉「私は機械工学の出身です。化学や有機材料の学科専攻はもちろん、機械や電気などいろいろな理系分野の出身者が活躍できます。未来のクルマづくりに関わりたいと強く想う方であれば、誰にでも活躍のチャンスがあると思います。また、社員のそうした想いを尊重してくれるのが、住友ベークライトという会社だと考えています。」