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トップインタビュー

トップインタビュー「社会の変化にともなう新たな課題に挑み、進化する」

代表取締役社長 林 茂

1970年住友ベークライト入社。1991年成形材料営業本部硬化性材料部長、1992年宇都宮工場業務部長、1995年大阪支店成形材料部長、1997年成形材料営業本部長、1999年機能性成形材料営業本部長、2000年取締役、2008年副社長就任を経て、2010年に社長就任。2006年からはCS推進委員会委員長。

アナウンサー 渡辺 真理氏

1990年TBS入社。『筑紫哲也ニュース23』などに出演。 1998年フリーに。『ニュースステーション』『BS歴史館』ほか、多数の番組に出演。

インタビュー

プラスチックのパイオニアとして、社会を支え続けた100年

渡辺 一人の生活者として、プラスチックに触れない日はないのではないかと感じます。プラスチックのパイオニアとしての、成り立ちと発展のプロセスをお聞かせください。
産業革命以降、最も進歩した素材はプラスチックだと言っても過言ではないと思います。世界最古のプラスチックはフェノール樹脂ですが、1907年にベークランド博士がアメリカで開発したことからスタートしました。その商標名が「ベークライト」で、当社名の由来になっています。現在では、飛行機や自動車、家電製品、半導体、日用雑貨品まで、何らかの形でプラスチックの素材が使われています。産業の歴史は、自然由来の鉄やアルミニウム、麻、絹などを、プラスチックに置き換えてきた歴史と言えるのではないでしょうか。

世界経済のインフラを支える素材産業の矜持

渡辺 2016年度は中期経営計画の初年度でしたが、事業環境はどのような状況だったのでしょうか。
当社グループは近年、国内における少子高齢化、産業の空洞化などの課題に直面し、事業プロセスの改善や海外企業のM&Aなど、リスクに対応するための事業の再構築を進めてきました。2016年度は、売上は2,000億円には一歩届きませんでしたが、営業利益は155億円と計画当初のマイルストーンを達成し、筋肉質な会社になることができました。その上で我々は、プラスチックのパイオニアとして築き上げた技術を生かし、より高い付加価値を生み出しながら、社会の課題解決に貢献していく事業構造を構築するために、さらなる「進化」が必要だと考えています。
渡辺 御社のアイデンティティは、経営を充実させていくという責任を果たすと同時に、ステークホルダーの皆さまに対してよいものを届け、社会の役に立つことにあるということでしょうか。
その通りです。私たちの仕事が社会の役に立ち、利益を上げていくために最も大切なのは、お客さまにどのような価値を提供していくかということです。私たち素材メーカーは、完成品メーカーから見れば、一次・二次調達先の先にある三次調達先であることがほとんどです。つまり、一次・二次の調達先に対して価値を提供し、よい部品を作るお手伝いをすることが私たちのミッションなのです。ですから、一次・二次調達先から出てくるテーマやニーズをきちんと取り込み、信頼関係を結び、パートナーとして開発を手助けできる仕事が本懐なのです。

渡辺 私たち生活者にとって、直接目に見えない部分を担っている企業の重要性は計り知れないものがあります。例えば報道でも、そのニュースが正しいかどうかをチームで検証し、精査したうえで放送しますが、放送に至るまでの見えない部分が何よりも大切だということは、視聴者の皆さまが最もよくご存じです。御社の場合、プラスチックを通して生活を支えているという意味で、社会のインフラと言えるのではないでしょうか。
インフラという意味で私たちの製品が貢献しているものに、半導体があります。今、飛行機から自動車、家電、携帯電話に至るまで、ほぼすべての生活インフラに半導体が使用されています。その品質実現に不可欠な、半導体を保護するエポキシ樹脂封止材料で、当社は世界で高シェアを占めています。
渡辺 私たちの生活に不可欠で、見えないところで社会を支えているという矜持(きょうじ)こそ、御社の財産なのですね。今後、成長が見込まれる分野について教えていただけますか。
中期経営計画で、4つの分野にリソースを集中していくことを決定しました。一つ目は、車両部品関連で、当社の一番得意な分野です。自動車の軽量化を実現するために、金属の代替として樹脂化が進んでいることが成長の原動力になっています。自動運転の発達や、環境規制を前提とした中国のエコカー(電気自動車(EV)等)の普及促進に向けた補助金政策などを受け、車両の電装化はますます加速していきます。市場として極めて有望であり、これまで培った技術と知見がダイレクトに生かせると考えています。
渡辺 確かに、自動運転は既に実験段階で、EVも市場に出ています。環境的な側面から各国でCO2対策が進む中、この分野は一気に加速する可能性がありますね。
今後は、合理化と軽薄短小、ものづくりの高スピード化が求められます。現在、日本、中国、シンガポールに当社のラボセンターがあるのですが、お客さまにお越しいただき、オープンラボ形式でともに開発を進められる体制を構築しています。二輪では既に実行済みで、今後は四輪にも展開していきます。また、欧米でもオープンラボを設置し、世界中のメーカーとともに、当社のツールや樹脂を使った新製品開発に取り組める環境を整備していきます。
渡辺 世界中のパートナーと協業できる環境は素晴らしいですね。ますます、私たちにとっても有益な製品が実現されるのではないかとワクワクします。

二つ目の注力分野は航空機部品関連ですが、この分野でも軽量化は永遠の課題です。自動車部品で培った技術が生かせる分野でもあると考えています。2014年にアメリカ・ボーイング社の一次調達先であるヴォーペル社を買収し、本格的に参入を開始しました。ヴォーペルの成形・塗装・組み立てといったプロセスに、三次調達先である当社の素材による付加価値を加えて、インテグレーティッドサプライヤーとして飛行機メーカーに提供していくというモデルを目指しています。三つ目の分野は高集積デバイス関連です。先ほども申し上げましたとおり、次世代パワーデバイス、次世代メモリー、高速通信デバイスなど、これからの新しいインフラを支える半導体分野で、当社が培った高い技術を生かし、さらなる高付加価値を提供していくことで、社会の進化に貢献していきます。
渡辺 御社のすべての技術が、未来の私たちの生活につながっているのですね。そういう意味では、四つ目の注力分野であるヘルスケア関連は、さらに身近で気になります。
当社はメディカル関連事業に約50年携わってきましたが、成長が鈍化していました。医療機器には、生命に影響を及ぼすレベルを示すクラス1から4までの段階があり、私たちは影響度の低いクラス1・2の領域で製品を展開してきました。しかしそれらは技術障壁が高くないため、汎用化してしまったのです。そこで、クラス3・4への展開を目指し、十数年前から研究開発に取り組んできました。その中で、ステアリングマイクロカテーテルという製品が、日本で薬事承認を受け2016年にアメリカで、FDA(アメリカ食品医薬品局)の許認可を取得し、ビジネスとして本格的に動き始めました。従来は直進させるだけだったカテーテルの先端を、ガイドワイヤーなしに手元のハンドル操作で自由に動かせるようにした画期的な製品です。医師がレントゲン画像を見ながら、曲がった血管の箇所もハンドルで調整してスムーズに挿入できます。当初は肝臓がんの治療用に開発しましたが、現在では内臓動脈瘤や腹部大動脈瘤、子宮筋腫などにも利用が期待されています。今後はさらに、脳腫瘍や脳梗塞まで治療できるようなカテーテルを実現したいと思っています。
渡辺 神の手と呼ばれるような医師の先生方がどんなに素晴らしい技術を持っていらしても、機器がなければ治療が行えないという意味では、この製品は医療関係の方々はもちろん、何より患者様にとって格段の進歩・負担軽減につながりますね。
開発にあたっては、当社も、日本や世界で有数の先生方に協力をいただいています。患者様の負担を少しでも軽くできるように、血管内治療の可能性を広げていきたいと考えています。

フードロスの削減と農業ビジネスに貢献する

渡辺 生活者の立場で、御社の食品包装関連の製品も気になっています。
青果物の鮮度保持フィルム「P-プラス®」ですね。
渡辺 既に多くのコンビニエンスストアやスーパーマーケットのカット野菜で、導入されているそうですね。
「P-プラス®」を使うと、野菜の日持ちがよくなるので、大幅にロスが減ります。経済的な効果も大きいですし、フードロス削減という観点からも社会的な貢献度は高いと思います。鮮度が長持ちするので、日本の素晴らしい農産物を海外へ輸出するのにも使われるようになり、大きな反響をいただいています。
渡辺 食の問題はこれからより大きな課題となる中で、廃棄を削減できることはとても重要ですね。日本の農業のクオリティーは非常に高く、海外からのニーズもある反面、流通のハードルが高いと聞きます。そうした課題にも貢献していくことができる将来性の高い技術だと感じます。

ステークホルダーとともに、よりよい社会づくりを目指す

渡辺 工場を有するメーカーとして、環境問題や地域コミュニティとの関係性についてはどうお考えでしょうか。
私たちは、原材料やエネルギーなど自然の恵みを事業に使わせていただきながら、廃棄物や化学物質の排出、排水などで直接・間接的に自然に影響を与えています。事業由来の環境負荷削減はもちろん、地球環境保全への取り組みは最低限の責務です。そのため私たちは、取り組みの一つとして、静岡工場に「憩いの杜」というビオトープを作り、生物多様性の保全に貢献しています。県の絶滅危惧種指定のメダカや、カワセミなど、昔から彼の地に生息していた動植物が暮らす環境を保全しています。ビオトープは市民にも開放し、憩いの場や学びの場として活用していただいています。
渡辺 さまざまな取り組みをお伺いしていると、社員の活躍が成長に不可欠なものと実感します。ここ数年、日本では女性活躍推進をはじめとするダイバーシティの重要性が注目されていますが、御社ではどのような取り組みをなさっていますか。
国籍や性別によらず活躍できる職場づくりと人材育成は当然のことです。しかし事業の特性などもあり、女性の活躍推進はまだまだ課題があると認識しています。管理職に占める女性の人数が少ない、総合職における女性の平均勤続年数が短いといった課題が明らかになっています。そこで、それらの課題を解決すべく、行動計画を策定しました。2016年4月からの4年間で、女性管理職の人数を2014年度比で2倍にする目標を設定し、制度の周知徹底、職場風土の変革、キャリア意識の醸成、女性社員採用数の向上などにも取り組んでいきます。
渡辺 最後に、御社がこれからどのように歩んでいらっしゃるのか、また今後に期待なさることなど教えていただけますか。
創業から100年を超えてきたということが、さまざまな市場変化や環境変化を乗り越えてきたということです。近年、グローバル化や産業構造・社会・環境の変化により、厳しい場面に直面しながらも、培った技術とステークホルダーのご支援により、今、当社は「進化」に向けたステージ立っています。「進化」を実現するためには、「CS最優先」を基本方針とし、お客さまとの信頼関係を築きながら、ともに社会的課題を共有し解決する新しい製品を創出 地球や社会、人々の暮らしにも貢献していきます。
また、当社は現在世界15の国と地域において事業を展開しており、各国の法令順守や文化への理解に努め、コーポレート・ガバナンスの充実・強化を図り、化学企業としての環境安全への配慮など社会的責任を果たすことが重要だと考えております。今後も自主的に環境安全対策の実施や改善を図っていく「レスポンシブル・ケア世界憲章」を支持し、実行していきます。

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