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トップインタビュー

トップインタビュー「社会の変化・課題をビジネスチャンスと捉え、持続的な成長と社会貢献につなげる
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社会の変化・課題をビジネスチャンスと捉え、持続的な成長と社会貢献につなげる

インタビュー

機能性化学品のニッチ&トップシェアを目指す

八塩 今や、プラスチックは空気や水と並ぶほどに、なくてはならないものになっています。そんなプラスチックのパイオニアである御社の歴史とは、どのようなものなのでしょうか。

藤原 プラスチックというものは、誕生からまだそれほど年数が経っておらず、ほんの111年です。最古のプラスチックは1907年にベルギー系の米国人、ベークランド博士が開発したフェノール樹脂で、その商標名である「ベークライト」が当社名の由来となっています。フェノール樹脂を最初に製造・販売した会社を起源としていること、さらにプラスチックのより高度な機能を創造しグローバルに社会の発展や人々の暮らしに貢献してきたという自負を込めて、パイオニアと名乗らせていただいています。

八塩 そのような歴史ある会社のトップに、今年から就任されたわけですね。おめでとうございます。ぜひ、抱負などをお聞かせください。

藤原 経営の舵取りはたいへんな重責ではありますが、これからも持続的成長に向けて邁進していきたいと考えています。営業出身の前社長のもとでは、CS最優先を掲げ既存領域での事業拡大とさまざまな事業構造の改革を進めてきました。これにより収益基盤の強化が図られ、利益の出せる会社になることができました。今後、さらに持続的に成長させていくために私がすべきことは、まず現行の基本方針と基本戦略の踏襲です。その中で、新製品の創生や事業化が重要かつ不可欠な課題となります。私は技術出身です。技術屋として、出口、つまり事業化まで見据えた研究開発を、スピード感を持って行える体制をつくり、成長軌道の礎にすることが、私の使命だと考えています。これらを確実に推し進められれば、機能性化学品の「ニッチ&トップシェア」を実現し、グローバルに存在感のある会社になれると確信しています。

八塩 開発のための開発、技術のための技術ではないということですね。出口を見据えて研究開発が行えると、社員のモチベーションも違ってくると思います。

藤原 そうですね。これを開発したら、こんなふうに世の中に貢献できるというモチベーションの持ち方をしてほしいです。

全社体制でお客さまの潜在ニーズを発掘し、より強固な信頼関係を構築する

八塩 続いて、2016年から2018年までの中期経営計画についておうかがいします。進捗状況はいかがでしょうか。

藤原 中期経営計画では、基礎となるプラスチックの保有技術を生かし、より高付加価値な事業の構築を目指すことを基本方針として、CS最優先のもと、重点顧客の深耕と社内外 との連携、協業を積極的に行っています。基本戦略は3つで、1つめは新製品の早期立ち上げと創生、2つめは成長分野の収益力強化、3つめが既存事業の再生です。最終年度である2018年度に営業利益で200億円をあげるのが目標ですが、2017年度までに、売上については若干目標を下回っているものの、営業利益としては目標を上回る成績をあげることができました。2018年度においても、目標を達成できる見込みです。

八塩 たいへん順調に推移されているのですね。では、さらなる成長に向けた取り組みなどはあるのでしょうか。

藤原 2017年10月より、CS最優先の事業活動をさらに進化させ、新たに「One Sumibe 活動」を開始しました。この活動は、「製品ごと」「事業ごと」の枠を超えて、全社横断 的な価値提供を行うものです。従来は縦割りで業務が進むことがほとんどでしたが、そこに横串を刺すグループをつくり、全社の製品をお客さまにご紹介できる体制をつくったのです。トップから担当者までが一体となってお客さまとの関係強化・信頼関係構築を進め、お客さまの潜在ニーズの発掘を通じて事業の拡大を目指す全社活動です。

八塩 扱っている製品が多岐にわたり、さらに事業拠点も国内・海外にたくさん設けている御社の場合、横串を刺すというのはとても難しいことなのではと推察します。だからこその「One Sumibe 活動」ということでしょうか。

  • 代表取締役社長 藤原一彦
    1980年 住友ベークライト入社。
    2003年 バイオ製品開発プロジェクトチームリーダー、2007年 S-バイオ開発部長、2009年 S-バイオ事業部長 執行役員、2013年 常務執行役員、2014年 取締役、2018年に社長就任。


藤原 例えば、半導体材料の営業がお客さまを訪問した際に、当社を代表する一つの窓口として、単に担当する半導体材料だけでなく、当社のさまざまな製品・ソリューションを念頭において、お客さまの個別の事業・部署にとどまらず会社全体のニーズを引き出します。さらに、それに対して当社の組織全体で応えていきます。
「One Sumibe 活動」は今後、グローバルに展開していく予定です。おっしゃるとおり、当社グループには多くの海外拠点があります。グローバルに事業を展開しているのは強みですが、これをさらに強力な武器にするためには、世界中の従業員が一つの目標に向かって心を一つにし、まっすぐに進んでいけることが重要なのです。「One Sumibe 活動」はそのための鍵でもあります。

八塩 プラスチックのことなら、何でも住友ベークライトに相談すればいいというワンストップソリューションの提供ですね。特に成長が期待されている事業分野は、どのあたりだとお考えでしょうか。

藤原 現在当社では、自動車・航空機、半導体を中心とした高集積デバイス、ヘルスケアの3分野を成長が見込める領域として設定しています。この3分野それぞれに、社会の変化や課題が関係しています。高集積デバイスはIoT(モノのインターネット)の発展に欠かせません。単なるデバイス用材料にとどまらず、車載向けECU一括封止等の部品材料としても小型・軽量化や信頼性向上に貢献しています。また、2014年の買収によって本格参入した航空機部材においても、燃費効率向上やコスト低減などのニーズに対し、ハニカムパネルや座席用部材(低発煙塩ビ部材)などの実用化を進めています。自動車であれば地球温暖化対策としてのCO2排出規制です。このような課題を、当社はビジネスチャンスと捉えています。事業活動を通じて社会やお客さまのニーズを先取りし応えていくことが、持続的な成長と社会貢献へとつながっていくのだと思います。
八塩 自動車というと、電気自動車や水素自動車など環境に配慮したものが次々に登場しています。どの自動車でも、従来のガソリン車などのように、御社が製造する部品が使わ れているのでしょうか。

藤原 従来必要だった部品が必要なくなるというケースは、もちろんあります。ただ、間違いなく共通のニーズとしてあるのが軽量化で、電気自動車や水素自動車でも非常に重視されています。軽量化(CO2削減)のために、私たちは金属をプラスチックに置き換える金属代替や、金属とプラスチックの複合化の研究開発を進めてきました。

八塩 代替や複合化で自動車が軽量化されると、より環境に配慮した自動車ができるということですね。

藤原 既にブレーキピストンなどの機構部品では実用化されています。最近注目されているのはエンジンの樹脂化で、当社では世界有数の研究機関であるドイツのフラウンホーファー研究機構と共同研究を行っています。実証実験にも成功し、これはいけるなというところまできました。

  • フリーアナウンサー 八塩圭子 氏
    1993年、上智大学法学部卒業後テレビ東京に入社。経済部で記者を務めた後、アナウンス室勤務。2003年にフリーアナウンサーとして活動を開始。2002年より法政ビジネススクールでマーケティングを専攻し2004年に修了(NBA経営学博士)、2006年~2009年、関西学院大学商学部准教授。2009年~2016年、学習院大学経済学部経営学科特別客員教授。現在は東洋学園大学現代経営学部准教授として教鞭を執る。

八塩 私も自動車に乗るのは好きですが、多くの消費者は排ガスのことは知っていても、それを減らすための対策や、部品の軽量化が大きな意味を持つことまでは、なかなか知 らないと思います。具体的にうかがってみると、驚きますね。ヘルスケアの分野についてはどうですか。こちらも私たちの暮らしに、非常に深くかかわる分野です。
藤原 当社のメディカル関連事業には40年余りの歴史があります。今後は、患者さまの体をメスで大きく開かずに手術や治療が行えて入院日数減につながる低侵襲治療が増えると予測しており、低侵襲治療に使われるデバイスの開発に力を入れています。先端が自由に動くステアリングマイクロカテーテルや、内視鏡治療器具のSBナイフなど、品揃えを強化し適用範囲拡大を図っています。
そのほかに、皆さまの暮らしにかかわりの深い製品としてはフィルムシート製品があります。鮮度保持フィルム『P-プラス®』は、中に入れた野菜や果物などの植物を新鮮な状態に保つことができます。
八塩 『P-プラス®』は、コンビニエンスストアやスーパーマーケットで販売されているカット野菜の包装にも使われているそうですね。確かに、以前のカット野菜はすぐ悪くなり、包装を開けた時にとても臭い匂いがするイメージがありましたが、最近ではそのようなことは滅多にありません。それが包装のプラスチックのおかげとは、知りませんでした。普通の野菜も袋に入れたまま冷蔵庫で保管すれば長持ちするということですから、これはたいへん心強い主婦の味方です。

藤原 日持ちがよくなると、海外への輸出も可能になります。また、食品廃棄物、いわゆるフードロスを減らすという面でも、社会に貢献できます。

世界的な課題の解決に貢献する活動を グローバルに進める

八塩 フードロスは世界的に注目されている課題ですね。世界的な課題としては、国連が提唱する「持続可能な開発目標(SDGs)」も注目されています。SDGsに対して、御社はど のような取り組みをされていますか。

藤原 CSR活動や事業にSDGsを全面的に取り込み、解決に貢献する活動を進めています。レスポンシブル・ケア委員会を中心に活動しており、2019年から始まる次の新中期経 営計画にもSDGsの開発目標をひも付けていく予定です。大事なことは、活動を一部のものにせず、全社へ広げることです。社内ではイントラネットを用いた情報発信や勉強会などを開始していますが、今後、グループ全体へワールドワイドに活動を広げていきたいと考えています。

八塩 SDGsにも通じますが、ダイバーシティや女性活用の促進も、企業に対して社会からの要求が強い事項です。これらについてはいかがでしょうか。

藤原 極めて重要な事項です。AI(人工知能)やロボットにできない仕事をするのが人間です。企業の成功に必要なのは「人、モノ、カネ」と言われています。私は人が一番大事だと思います。人間力という言葉が好きでよく使うのですが、人間力は、やる気、能力、人格・人柄の掛け算です。それを高めていくためには、やはり教育が不可欠です。2007年に設立したSBスクールでは延べ22万人が受講しており、入社3年目以降の若手社員を約2年間海外へ派遣してグローバル感覚を養う取り組みも行っています。人材育成とともに進めているのが、ダイバーシティ推進です。特に積極的に取り組むべきと捉えているのが女性の活躍推進で、女性の社員採用に力を入れています。

八塩 そうなのですね。理系技術職だと女性は少ないという印象を持っていました。

藤原 以前は確かに少数でした。しかし実際のところ、優秀な理数系の女性はたくさんいらっしゃいます。事務職であれ研究職であれ、性別は関係ありません。ただ、やはり長期間活躍してもらい管理職にもなっていただこうとすると、出産や育児といったワーク・ライフ・バランスに配慮した支援が必要になります。当社では、既に制度を整え積極的に支援を行っているので、働きやすい環境はかなり整ってきたと自負しています。

八塩 いろいろとお話をおうかがいしてきて、プラスチックの機能の多さにはたいへん驚きました。また、プラスチックのさまざまな機能で医療や食品や環境保全などたくさんの分野が支えられていること、その貢献の大きさにも感銘を受けました。最後に、今後どのように会社の舵取りを行っていくのかを、お話しください。

藤原 一つは、グローバルな会社でありたいと考えています。そのために、世界各地の社会動向や社会課題をいち早くキャッチして、能動的に働きかけていく。最初に申し上げたように、収益力の地盤はできました。次は、会社をさらに成長させていく段階です。けれど、その成長とは利益の追求だけではありません。社会貢献や環境への配慮なども責務として重要度が増すということです。これは当社にとって新しいことではありません。社是である「我が社は、信用を重んじ確実を旨とし、事業を通じて社会の進運及び民生の向上に貢献することを期する。」をこれまでと同様に実行していけば、自ずとお客さまをはじめステークホルダーの皆さまの価値向上、さらには社会貢献につながるものと考えます。

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