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スペシャルトーク

ロングライフの建材で社会に新たな価値を生み出す

建材メーカーとして社会の変化に対応しながら、常にあるべき姿と今後の方向性を考え、業界を牽引し続ける住友ベークライト。
日建設計の領域横断部署 NIKKEN ACTIVITY DESIGN lab (NAD) と座談会を行い、環境・社会貢献の観点から何ができるのか、そのヒントを探りました。

インタビュー

─ NADが設立された経緯をお聞かせください。

安田 日建設計は建築の設計監理や都市デザインおよび、建築と都市のライフサイクル全般にわたる調査や企画、コンサルティングを行う設計事務所ですが、クライアントの要望を聞く中で、“そもそも何をつくるのか” というところから考えなければならない場面も増えてきました。 その背景には、時代がどんどん不確実になってきて、人の動きや社会を根本から見つめ直す必要性が出てきたことがあります。そして、空間における人々のアクティビティのおおもとに着目して、社会や空間にイノベーションをもたらす様々なデザインを行うチームを設立しました。NADは、日建設計における領域横断部署という位置づけで専門の異なるメンバーで構成され、ときには社外のパートナーとも連携することが特色のひとつ。そうした中で、坂本は主に形や表現のデザインを担い、私はシナリオやストーリーを構築するということを同時並行で進めながら、新たな価値を提供する活動をしています。
NIKKEN ACTIVITY DESIGN lab(NAD)Strategist 安田 啓紀 氏 人が大切に使いたくなる。そんなサスティナブルな建築空間づくりに欠かせない視点は、ユーザー目線になること、既成概念を打ち破ること、そして、ものにまつわる物語があることも大事ですね。

大切なのは“長く使いたくなる”ものづくり

─ 本日取り上げる大きなテーマは、“社会を豊かにするサスティナブルな建築” ということですが、
NADではどのようにお考えですか。

安田 人が大切に長く使いたくなる。そういった建築デザインがサスティナブルにつながるのだと思いますが、それをどうやって作るのか。人が能動的に大事に使いたくなるようなアクティビティデザインを考えていく必要があります。
坂本 それを考える上で重要なことのひとつは、ユーザー目線になること。使う人の立場になることで、問題が見えてくるケースがけっこうあります。建材以外の例になりますが、家電製品を探しに電気店に行くと商品がずらりと並び、各々にスペック表がついています。企業側にしてみれば十分な情報を盛り込んだつもりのそのスペック表は専門用語が多く、ユーザーは理解できずに選べないということが起こる。そのようなズレを見直していくことが重要です。
安田 技術がいくら優れていても、使われなければ意味がありません。その観点で考えるとユーザー目線も大切ですし、例えば建材をまったく新しい場面で役立てるといったイノベーションを起こすために、既成概念を打ち破っていくことも大事ですね。
亀井 メーカー側としては、例えば住友ベークライトが扱っているデコラ(メラミン樹脂化粧板)について、新製品を出したときは技術の高さを強調しがちになってしまいます。もっとユーザーの目線に立ち、その製品を使う人たちの声をよく聞いて、ものづくりをしていかなければと日々思っています。
吉原 日本の社会は、機能、品質、デザインなど “三拍子揃った” という言い方が好きですね。私どもも製品はオールマイティでなければと考えがちですが、そもそもお客様は何を一番に求めているのか。それを基本機能とし、強みとした製品開発を進めることが重要で、その強みがお客様に伝われば、愛着を持って長く使っていただけるのだろうと思います。
坂本 確かに、日本の技術でいうと三拍子どころか七拍子ぐらい揃っていて、偏差値80ぐらいの製品がひしめきあってる。ただ、そのために “このメーカーのこれでなければ” ということが減ってきているように感じます。高スペックな製品を揃えることは品質保持につながり、悪いことではないのですが、その一方で三振もするけどホームランも打つような飛び抜けた価値を持つものもあるといいなと感じます。
吉原 ラインナップのあり方を見直すべきなのでしょう。七拍子揃ったものをラインナップするのではなく、基本機能の強みをそれぞれ明確にした製品づくりを行っていく。すると、強みを持ったもの同士を組み合わせることができ、設計をする醍醐味が生まれてお客様のうれしさやユーザーが製品に愛着を持って使う喜びにもつながると思います。
平山 私は店舗の内装材の営業を担当しているのですが、現場においても製品の強みと弱みの部分を的確に伝えることを大事にしています。また、店舗の設計をする方から求められる回答だけでなく、その方が思いついていないような、お店に来るお客様が “あったらいいな” と思うようなところを製品にして提案することにも力を入れるようにしています。
安田 作り手に思いがあって、それが使い手に伝わるというのは大事ですね。今、平山さんがおっしゃった、製品のユーザーである設計者や設計者が手掛けたお店に来るお客様との対話は非常に重要なポイントで、そこからものにまつわるストーリーが生まれてくると思います。例えば、デコラという製品が、こういうところに必要なんだという物語ができてくると、その物語によってものが光り、お客様のものを見る目も変わってくる。そういうことが重要です。コストのみの競争に陥りがちな中で、どんな価値を提供していけるのか、それが今求められていると思います。

枠を超えた連携により新たな価値を創出

─ 建材メーカーとして住友ベークライトでは、環境サスティナビリティの観点で、どのような機能を追求しているのでしょうか。

吉原 それは、“長寿命化” ということです。例えば、デコラは養豚小屋で使っても清潔感を保てるほど機能性に優れ、電車の車両の内装材に使用されるほど衝撃吸収性が高く、食品の雑菌に対しても消毒性がある製品です。このデコラには60年の歴史があるのですが、そもそもは長寿命を意識して作られたもの。木の代用品というより、もののない時代にどうしたら家具などが容易に作れ、しかも長持ちさせられるかという発想で開発されました。つまり、ロングライフを目指したのです。今の時代もまた、社会の要請でもある環境対応の視点からロングライフを追求しています。時代や目的が変わっても、設計思想のひとつ、長寿命化は通底しているのです。さらに、当社ではリサイクルにも取り組んでいます。まずは、燃やして熱エネルギーを利用するサーマルリサイクル。一方、デコラは焼却後の粉末が自動車の部品へと再生され、その部品が役目を終えて回収されれば、原料に戻るマテリアルリサイクルへとつながります。使用率は落ちますが究極のリサイクルが可能です。また、非可食植物からフェノール樹脂を生産することにも取り組んでおり、永遠に近いところまで持続していけるケミカルリサイクル技術も開発中です。もともとの長寿命化プラス、リサイクルによる長寿命化で、社会に貢献していきたいと考えています。
住友ベークライト 常務執行役員 プレート/デコラ/シート防水事業担当 吉原 達生 日本では手軽とか簡単とか標榜する商品が多く、安易にスクラップアンドビルドする傾向にあります。その中で、弊社のロングライフの製品が社会全体を長寿命化させるために役立てばと思っています。

坂本 今のリサイクルのお話もひとつの物語ですね。それを聞くことは、設計者にとってアイデアの源泉になるだけでなく、例えばトイレを作るといった場合にそのようなストーリーが建材を選ぶときの判断材料となります。
製品のライフサイクルの中で、長寿命ということはもちろん、その後はまったく違う使われ方をするという可能性がこのデコラ1枚に秘められている。単に “数ミリ薄くなった” といったスペック情報からは聞こえてこない、深いメッセージを感じます。
安田 建材を建材としてリユースするのではなく、違う用途に変換していく。こうしたリサイクルで、次はどこにどのように使うのかを考えていくのは非常にイノベーティブな課題ですね。
住友ベークライトPDW事業推進部 亀井 光 お客様とお話するときに自社製品のことだけを語りがちですが、たとえばデコラが使われる空間やそこに張られる壁紙など、他分野の知識も持ち、様々な提案ができるようになれればと思います。

亀井 メーカーもハードの性能によるロングライフを追求するだけでなく、自分たちが気づいていない価値や使い方のアイデアなどソフトの部分を追求する必要性を感じます。ただ、イノベーションを起こすには1メーカーだけでは限界があります。これからは、各分野の専門家が集まって空間全体を考えていくような取り組みが必要になってくると思います。
坂本 サスティナブルな建築空間を実現するために連携は大事ですね。具体的な試みとして考えられるのは、何かテーマを中心に置いて、設計者やメーカーなど関連する人々が一堂に会し、話し合う場を作るということ。例えば、“ユーザーにも環境にもやさしい多目的トイレとは何だろう” ということをテーマにしたとき、光、音、空気、におい、空間など、それぞれの領域の人々が集まって考えることで、思いもよらないような新しい発想が生まれることが期待できます。
安田 立場や専門性の違いを活かせるとおもしろいものが生まれるでしょうね。違うところを見ている人々がボールを遠くに投げ合いながら、セッションのような形で話し合っていくイメージでしょうか。話し合いの中で目線が次々に変わり、初めは見えなかったものが見えてくるはずです。

─ 最後に、2020年に開催される東京五輪に向けて今後の抱負をお聞かせください。

亀井 大きなことを実現するには1社の力では難しいと日々感じています。そんなときに、NADをはじめ様々なエキスパートの方々と一緒に活動していくことにトライしていきたいですね。
坂本 2020年の東京五輪で、世界に日本のものづくりを発信できることが理想です。企業同士が同じ目標に向かって協業することで、強いものづくりはもちろん、日本の連携はすごいと思ってもらえるといいですね。目先の利益ではなく、各人がその立場にいるからこそ目指すものがあるべきです。
平山 東京五輪はとても大事なイベントだと思いますが、開催地としてどうあるべきかということにまだ考えが及んでいません。理想の五輪についてみなさんとお話しながら、自分がやるべきことを考えていきたいです。
安田 私は2020年の先を見て、本当に豊かな暮らしができる都市のあり方を考え、実現していきたいですね。例えば、みんなが自分の家だけでなく、暮らしている街も大好きになれば、もっとよくしていこうと思うような好循環が起き、街がどんどん魅力的になっていきます。ではパブリックスペースをどう変えていくのか。長く使ってもらうには、好きになってもらうにはどうすればいいか。長寿命にまつわる物語や人とのつながりといった今日のお話が参考になりそうです。
吉原 1992年のバルセロナ五輪ではスラム街に選手村を作ったことで、五輪後は高級住宅地に生まれ変わったそうです。五輪はまさに歴史の転換点。開催期間は約2カ月間ですが、社会インフラが整うことは五輪の最大のメリットです。2020年の五輪に向けて、NADには新たな都市計画を実現していただきたいし、住友ベークライトもデコラのようなロングライフの製品で少しでも貢献し、みなさんとこれまでにない価値を作っていければうれしいですね。
住友ベークライト デコラ事業部 平山 紗矢香 店舗の設計の方に「ターゲットとしている働く女性の目線で意見をお願いします」とよく言われるので、お客様目線でお店をどうよくできるのかを見て、仕事へとつなげていくことを課題としています。

住友ベークライトの施工事例

富岩水上ラインの「fugan」新艇(富山県)
使用製品:デコラヴィータ
用途:椅子

世界貿易センタービル(東京都港区)
使用製品:デコライノベア
用途:エレベータの内装改修

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